第二十四話 光
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
本作は無断転載をテーマとしていますが、無断転載を擁護・許可するものではありません。
作者も異世界を含めて無断転載を行ったことはありません。
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
工兵隊の残党が遺跡を爆破し、今は膨大な砂煙が俺たちの方へ押し寄せていた。
「逃げろ——!」
騎士団も、群衆も、蜘蛛の子を散らすように走り出した。
だが、ヴィトだけは担架を降りようとしていた。
「何してるんですか!早く離れますよ!」
担架を抱えていた騎士団の男がヴィトを怒鳴った。
「約束............したんだ。今度は、俺が...........守らないと.........。」
ヴィトはそう言うと体をよじった。
「バカ言わないでください!行きますよ!」
騎士団は担架を担いで遺跡を離れて行く。
俺もアランも、それに続いて走り出そうとした。
——その瞬間だった。
遺跡が緑色の強烈な光を放って、残った残骸を吹き飛ばしたのだ。
俺もアランも、爆風に当てられてその場で転んでいた。
ヴィトも担架から転がり落ちていた。
俺たちは一様に遺跡の方を振り返った。
遺跡があった場所は、国中に張られていた結界をも砕いて、今は天に向かって緑色の光の柱を屹立させていた。
「リミッターが.........外れたんだ。トンネルを構成していた魔力が発散している.......。」
ヴィトが呻くように言った。
「このままでは、トンネルは消えてしまう........。でも、今なら——。」
ヴィトはそう言うと、地面に左手を置いた。
何かの詠唱を始める。
倒れこんだ俺の足元に、遺跡の光と同じ緑色の魔法陣が現れた。
——転移魔法。
だめだ、待ってくれ!
俺はまだヴィトに伝えていないことがある。
無断転載をして、すまなかった。
遺跡を守ることができなくて、すまなかった。
満足のいく作品を読ませることができなくて、すまなかった。
違う。
そうじゃない。
俺が今、ヴィトに伝えたいことは——。
自称ネット小説家の俺には、今の気持ちを表現する言葉を見出すことができない。
だから、この一言にすべての想いを託した。
「ありがとう。」
俺の作品を読んでくれて、ありがとう。
真剣にアドバイスをくれて、ありがとう。
最後まで俺を同じ作家として見てくれて、ありがとう。
ヴィトは俺の側に這うようにして近づくと、左手を差し出してきた。
俺はその手を握り返した。
「ありがとう。俺の物語を完結させてくれて。」
ヴィトは俺の目を見てそういった。
「あと、お前の作品。初めて会った時よりは格段に良くなってたぞ。続きを読めないのが残念だがな。」
やめてくれ。
それは、俺も同じなんだ。
”野ざらしの猫車”先生の作品を、ヴィトの紡ぐ物語を、俺だってまだまだ読んでいたいんだ。
だから、俺はヴィトに問うた。
「............ヴィトは、転移魔法の研究、諦めないんだろう?」
「ああ、当たり前だ。俺はお前の世界を諦めない。だから、お前も物語を書くのを諦めるな!」
ヴィトはそういうと、左手の力を抜いてきた。
俺も、ヴィトの手を離す。
緑色の光が、白い光になり、目の前のヴィトの顔を見えなくしていった。
「またな。」
光に視界を塞がれた中で、俺の耳はヴィトの声を確かに捉えていた。
◇
気が付くと、俺は芝生の上に立っていた。
俺のアパートの一階の庭だ。
だけど、ここに入った時は朝だったはずだが、今俺の頭上には星空が広がっていた。
「帰って..........きたのか?」
俺は夢からさめたような感覚を味わっていた。
だけど、俺の手には先ほどまで握っていたヴィトの手の感触が残っていた。
そして、ヴィトが手を離した直後、俺のポケットに何かを突っ込んだ気がしたことを思い出した。
俺はポケットに手を突っ込む。
そこには一枚の紙がくしゃくしゃになって押し込まれていた。
第二十五話(最終話)は2026年11月3日11時40分公開予定です。
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