第二十三話 決着
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
本作は無断転載をテーマとしていますが、無断転載を擁護・許可するものではありません。
作者も異世界を含めて無断転載を行ったことはありません。
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
群衆に割って入った騎士団はガーランドおよび群衆に紛れた”影の防人”を拘束した。
ガーランドは数十人の怒りの視線に囲まれながら、連行されていた。
俺の真横を通り過ぎるとき、ガーランドは俺の耳元にささやいた。
「これが、この国のレベルだ。君はこの感情的な民に自由を与えることが正解だと思うのかね?」
俺は何も答えなかった。
ガーランドはため息を一つつくと、
「後悔するぞ.........。」
そう告げてゆっくりと遺跡から退場していった。
◇
それにしても、俺が魔導書籍に暴露本のごとくガーランドの言葉と”影の防人”の情報を載せたことで、怒りの群衆が押し寄せてきたのは、まだ分かる。
ただ、なんの証拠もない現段階で騎士団が動いてくれたのはどういうわけか。
しかも、侯爵邸の火災時の出来事からすると、騎士団にも”影の防人”に与する人間がいたと思われるのに。
心当たりは、一つしかない。
俺はアランの方を振り返った。
アランは何食わぬ顔で、群衆の整理を行う騎士団たちを見つめている。
ふと、騎士団の中の、それも指揮官クラスと思われる人間がアランに対して会釈したのが目に入った。
鎧には、王室直轄の部隊を示す紋様が刻まれていた。
アランは金ではなく、”人”のつながりの中でその影響力を行使しているのだ。
アランがこちらの視線に気づいたのか、顔を向けてきた。
そして、いたずらを成功させた少年のような笑顔を見せて、親指を立てて見せた。
俺も親指を立てて、アランに負けないくらい少年に戻ったような笑顔を向けた。
◇
ヴィトは騎士団の救護班により、応急処置を受けていた。
傷は大きいが深くはなく、適切な治療を受ければ障害も残らないだろう、ということだった。
俺は救護班の言葉に胸をなでおろすとヴィトに近づいて行った。
ヴィトは痛みで衰弱しており、応急処置で投与された痛み止めの影響もあるのか、いつもの精悍さを失くしていた。
「悪い.......。お前を元の世界に帰すのは、また後日にしてくれ。」
ヴィトの言葉に俺はうなずいた。
「”影の防人”が行った一連の政策は捜査が進み次第、順次解除される。結界も禁書も解除されるし、転移魔法も自由に研究できるようになるはずだ。」
いつのまに現れたのか、背後にいたマークが声を掛けてきた。
ということは、ヴィトはこれからも俺の世界とこの世界を自由に行き来できる。
ヴィトの作品をこれからも読むことができるし、ヴィトに俺の作品を読んでもらうこともできる。
俺はその事実に自然と笑顔がこぼれた。
その様子を担架に横たわりながら見ていたヴィトは、いつも通り、やれやれといった様子で笑顔を見せた。
「森の中ではガーランドが引き連れた工兵隊の掃討が行われている。すでに大部分は拘束したが、移動時は注意してくれ。」
マークはそう言うと、騎士団の方に戻っていった。
◇
「お前........。この本、さっき読み終わったぞ...........。」
ヴィトが左手に本を持ち、俺に声を掛けてきた。
「本当ですか!じゃあ次の本を——。」
「おい。ケガ人にまだ休むなってか?」
ヴィトはそう言ったが、俺は構わず担架に本を置いた。
このタイミングで本を読み終わったと伝えてきたのが、死亡フラグのように思えたからだ。
「療養中に読ませてもらう。片手じゃ読み進めるのも難しいだろうがな。」
俺は少し申し訳ない気分になったが、ヴィトの顔は迷惑ではなく、純粋に次の本を楽しみにしてくれているように見えた。
俺の気のせいでなければ、だけど。
「おい、お前!そこで何をしている!」
突然、背後で大きな声がした。
振り返ると遺跡の陰から一人の男が飛び出してきた。
それを追って、騎士団の数人が駆け出していく。
騎士団が男を捕えた瞬間、森の静寂を引き裂く轟音が辺り一帯に響き渡った。
森の鳥たちが驚いて一斉に飛び立つ。
俺は遺跡の方を見て、絶句した。
中心部で爆発が起こった遺跡は、波をかぶった砂浜の城のごとく、その姿を崩壊させつつあったのだ。
第二十四話は2026年11月2日21時10分公開予定です。
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