第二十二話 皮肉
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
本作は無断転載をテーマとしていますが、無断転載を擁護・許可するものではありません。
作者も異世界を含めて無断転載を行ったことはありません。
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
遺跡の広間に続々と足音が迫ってくる。
そしてついに数十人にも及ぶ人間が広間に姿を現した。
「待ちかねたよ。さあ、この忌々しい遺跡を——」
ガーランドはそこで言葉を切った。
現れたのはガーランドが手配した別動隊ではなく、いや正確にはその人たちもいるのだが、民衆や騎士や役人たちだった。中には軍人と思われる人もいた。
彼らは総じて殺気を放っており、それは俺とヴィトではなく、ガーランドに向けられていた。
「なんだ、お前たちは?どうしてここに来た!?」
ガーランドは訳も分からないという様子で群衆と向き合っていた。
「あんたの負けだ。ガーランド。」
俺はわざと群衆に聞こえるようにその名を大声で口にした。
「おい、やっぱりあいつがガーランドか!」
「俺たちを見下しやがって..........!」
「おい、見ろよ。だれか斬りつけられているぜ!」
群衆が一斉にざわめく。
彼らの手には、魔導書籍が握られていた。
◇
ガーランドと会う一日前。
俺はガーランドの座る椅子の下に執筆用の魔道具を仕込んだ。
思考を読み取る水晶玉をどうカモフラージュするか考えたが、背もたれに埋めるとマッサージ器具のようにしっくりとおさまった。
試しに椅子に座って、ヴィトと会話してみたら、多少の雑念は混ざったものの、話した内容がしっかり書き起こされていた。
そしてガーランドとの会談後、俺はトイレに行くと言って事務所に戻ると、椅子から魔道具を回収した。
書き起こされたテキストを見ると、ばっちりガーランドが話した内容が記録されていた。
しかも都合がいいことに、”影の防人”について尋ねた際に、具体的な名前や表の顔を思い浮かべてくれたらしく何人かは特定できるレベルでその情報が記されていた。
俺たちを殺すつもりだったことも分かればよかったのだが、どうやらあの嗜虐性は彼の内奥深くに存在する別人格のようなものだったのかもしれない。
ともかく俺はそれに多少の修正と脚色を加えると、小説家ギルドに魔転送した。
かつて、俺のアカウントはまだ公表されていない侯爵不審死事件について正確に書いた本を掲載していた。
読者の中には小説としての面白さだけではなく、暴露本として評価していた人も多く、久々の”新作”の投稿に皆がアクセスしてくれた。
——まあ、俺お得意の”無断転載”だ。
”影の防人”の存在は瞬く間に明るみに出て、王都は異世界の実在と転移魔法の話題で持ち切りとなった。
”影の防人”として名指しされた人は、「ガーランドに売られた」と思ったらしく、今は群衆に加わっていた。
ちなみにヴィトは遺跡の正確な位置を元から把握していた。
だから俺の「小説」に、”遺跡”の位置についても記載しておいた。
つまり、ヴィトが山中を余計にさまよったのは、真相を知った群衆が集まるまでの時間稼ぎだったというわけだ。
『腹具合は大丈夫なのか?』
『ああ、スッキリしたよ。』
これが、作戦成功の符丁だとはガーランドも気づかなかったようだ。
ガーランドが魔導書籍で俺の行動を知るリスクもあったが、”影の防人”の存在を世に知らしめれば勝機はあることから、俺たちはその可能性に賭けたのだ。
◇
「みなさん。落ち着いてください!何があったのかはわかりませんが、私はそこに倒れている青年を襲った魔物を追い払ったもので........。」
ガーランドが紳士の皮をかぶりなおして言った。
「信じられるか!」
「お前、俺たちのことを『レベルが低い』とかぬかしやがっただろ!」
俺の掲載した内容には何の証拠もない。
だけど、群衆はそれに対して怒りの声をあげている。
——まあ、これも俺の世界の”民主主義”の危うい側面なのだが。
民主主義を”危険思想”と断じたガーランドが、民主主義の危うさに追い詰められている姿はある意味皮肉であった。
「皆さん!道を開けなさい!」
遺跡の下の方から声が上がる。
有無を言わさぬ、空に突き抜けるようなその声に、群衆は冷や水を掛けられたかのように押し黙った。
遺跡の下では白銀の鎧を身に着けた騎士団が集結していた。
「国王陛下の意に背き、民を欺いてきた”影の防人”!お前たちを拘束する!」
第二十三話は2026年11月1日21時10分公開予定です。
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