第二十話 遺跡
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
本作は無断転載をテーマとしていますが、無断転載を擁護・許可するものではありません。
作者も異世界を含めて無断転載を行ったことはありません。
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
今から二千年前。
この世界と異世界(つまり俺の世界)をつなぐトンネルが築かれた。
それは、強大な魔力を用いて開通された転移魔法の産物だった。
その後、人々はその本線であるトンネルに、支線をつくることで異世界との交流を実現していた。
だが、いまやこの国に張られた結界によって、新たな支線を作ることは不可能となっていた。
ガーランドのいう”遺跡”とは、本線であるトンネルを構成する結節点にあたるものだ。
どうやら”影の防人”は俺を現世へと帰した後、トンネルの本線を遮断するつもりらしい。
ヴィトは明らかに躊躇していた。
だが、支線を作れなくなった今、俺を現世に帰すには本線の結節点である”遺跡”に行く以外方法がない。
「わかりました。ただ、”遺跡”はここからでも二日はかかります。荷物の用意をする時間をください。」
ヴィトはそう言うと立ち上がろうとした。
「だめだ。これから出発する。表に馬車を用意してある。行き先は君が指示したまえ。」
ガーランドは時間を与えてはくれなかった。
事務所の外には、馬車が数台停まっていた。
最初から、ヴィトに”遺跡”へ案内させることが目的だったというわけか。
ガーランドに続いて、俺たちはアランの事務所を出た。
ガーランドが用意した馬車に乗せられそうになった時に俺は言った。
「悪い。ちょっと緊張で腹壊したみたいだから、便所行ってくる。」
俺はアランから事務所のカギを受け取ると、事務所の方へ戻っていった。
◇
二時間後。
ガーランドの馬車は、ヴィトが指示したポイントに向けて疾走していた。
「腹具合は大丈夫なのか?」
ヴィトが俺に聞いてきた。
「ああ。スッキリしたよ。」
ヴィトはそうか、というふうにうなずくと読んでいた本に視線を戻した。
——俺がこの前渡した本だ。
「あの.......。気持ち悪くはなりませんか?」
馬車は激しく揺れている。
俺なら、ここで読書をすれば間違いなく吐くだろう。
「俺なら大丈夫だ。あと、本のことになると敬語になるのやめろ。そっちの方が気持ち悪い。」
ヴィトはそう言うと、ぽつりと続けた。
「それに.......。お前に感想を伝える時間はあまり残されていないようだしな。」
俺は心のどこかで気づいていたけど、目をそらしていた事実を突きつけられた。
ガーランドのいう通りに事が運べば、あと数日もしないうちに、俺はヴィトと離れることとなる。
そして、おそらくもう二度と会うことはないだろう。
唐突に訪れた別れの気配に、俺は予想以上の喪失感を感じていた。
◇
二日後、俺たちはヴィトの指定したポイントである森の入口に着いた。
「ここからは歩きだ。だが、俺も正確な場所まで突き止めているわけじゃない。二日は山中で過ごすことになるかもしれないから覚悟してくれ。」
俺たちは山道に足を踏み入れた。
そして、ヴィトの言った通り俺たちは山中をさまようこととなった。
山に入って丸二日が経過しようとしていた。
「いい加減にしたまえ。時間稼ぎのつもりか!?」
ガーランドがたまりかねたように言った。
「だから言っただろう?俺も正確な場所まで把握していないって。」
ヴィトは努めて冷静な声で返した。
山中でのサバイバルで感情的になるのは致命的だ。
ガーランドもそこは理解しているらしく、渋々引き下がった。
「おい、見えてきたぞ。あれが”遺跡”だ。」
ヴィトが指さす先に、石造りの古びた建物が木々の隙間から視界に入ってきた。
第二十一話は2026年10月31日21時10分公開予定です。
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