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第十八話 会談

 こんにちは。作者の「野生の書生」です。


 本作は無断転載をテーマとしていますが、無断転載を擁護・許可するものではありません。

 作者も異世界を含めて無断転載を行ったことはありません。


 この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。

 アルフレッド侯爵のノートを読んで三日後。


 俺とヴィトとアランは、事務所で”来客”を待ち続けていた。


 事務所のドアがノックされる。


 「どうぞ。」


 アランが声を掛けると、ドアが開き護衛二人に連れられて、中年の男が入ってきた。

 紳士的な雰囲気とは裏腹に、その目は鋭く光り、どこか鷲を思わせる獰猛さを伺わせていた。


 男はガーランドと名乗った。

 ガーランドは俺たちが勧めた椅子にゆっくりと腰かけた。

 護衛二人はその背後に立っていた。


 俺たちもガーランドの向かいに座る。

 しばしの沈黙が場に訪れた。


 「まずはヴィト君。この度の誤認逮捕の件、改めてお詫び申し上げる。」

 

 ガーランドはそう言うと、座ったまま頭を下げた。


 「君たちは転移魔法を熱心に追求してきた。その熱意には敬意を表するよ。」

 

 ガーランドは顔をあげて続けた。



 「あの.............。あなたはいったいどういう立場の方なのですか?」

 

 話を遮るのは無礼かとも思ったが、俺はこのガーランドのことを何も知らない。

 まずは自己紹介からしてもらいたい、と思ったのだ。


 「——これは失礼。私は”陰の防人”と呼ばれる組織の一員だ。」


 ガーランドは初めてきく組織の名前を口にしていた。


    ◇


 影の防人。

 ガーランド曰く、転移魔法をはじめ、この世界と異世界をつなぐ試みを監視する政府組織だそうだ。

 ただしあくまで非公式の存在だという。

 構成員のほとんどが、別の表の顔を持ち生活をしている。


 「あなた方はなぜ、そんなに異世界の存在を警戒するのですか?」


 千年前はお互い普通に交流していた。

 不都合なこともあったのかもしれないが、なぜこんな一方的に縁を切ろうとする?


 ガーランドはしばらく沈黙した。

 俺とヴィトを値踏みするように眺めると、護衛の方を振り向いた。


 「その答えはこれだよ。」


 護衛が持っていた鞄をガーランドに渡すと、ガーランドは鞄から中身を取り出した。

 それは異世界語でかかれた数冊の本だった。


 見たところ、様々な人物の伝記。


 クロムウェル

 ロベスピエール

 レーニン


 ——全員、国王を打倒した革命家だ。


 「これは百年程前に、異世界から持ち込まれた書物を翻訳したものだ。君の世界では”絶対王政”と呼ばれていたころの歴史の話だ。」


 ガーランドは書物を見つめる俺たちに視線を向けながら言っていた。


 「われわれ”影の防人”の先代も驚いたそうだ。異世界では”王”という存在に疑問を持ち、民衆が武器をとり、王をギロチンに処す歴史が展開されている。しかも、君の世界で文明が発展している大国は、ほとんどが”議会”と”民主主義”を掲げて、今や王の存在を求めないそうではないか。」

 

 ガーランドは信じられないものを見る目で俺の方を見ていた。


 「この世界は、当時もっとも文明が進んでいたヨーロッパと呼ばれる地方から文化を取り入れてきた。だが、その地方は次々と王を処刑もしくは退位させていった。我々は”危険思想”に染まった地方に通じるトンネルを封鎖していったのだ。」


 ガーランドが”民主主義”を危険思想と表現したことで、俺は確信した。

 この世界は、”影の防人”は、革命を恐れている。


 「だが、文明が進んだ国の中にも依然として王を頂点に据える国も存在した。それが、日本という国だ。彼の国は、”ミカド”もしくは”テンノー”と呼ばれる王を敬愛し続けていた。」


 俺はまた一つ点と点がつながった。

 日本人が多く異世界に転移・転生する理由。

 ヴィトがいうように、それは世界をつなぐトンネルの、日本に通じる出入り口が最近まで残っていたからだ。


 「彼の国も戦争に敗れたのを機に、とうとう王を”象徴”と位置付けてしまったがね。いずれにしても、われわれはもはや異世界とかかわりを持つべきではない。だから転移魔法をタブーとしたのだ。」


 俺とヴィトは顔を見合わせた。

 これで、答えが出た。

 この世界が転移魔法を危険視していた理由。

 それは、自由と平等の思想が広がることで、現体制が崩壊する可能性を含んでいたからだ。



 「しかし、それはだれのためのタブーなのかな?」


 沈黙を破ったのは、それまで黙って成り行きを見守っていたアランだった。


 第十九話は2026年10月30日21時10分公開予定です。


 この作品が面白いと思っていただけた方は是非、無断転載ではなく高評価・感想・ブックマーク等で応援していただけたらと思います。

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