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第十五話 釈放

 こんにちは。作者の「野生の書生」です。


 本作は無断転載をテーマとしていますが、無断転載を擁護・許可するものではありません。

 作者も異世界を含めて無断転載を行ったことはありません。


 この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。

 アルフレッド侯爵邸はその後、丸一日燃え盛った。


 幸いにして、来客含め全員避難はできて死者はいなかった。

 だが、失ったものもあった。


    ◇


 火災発生の一報が届くと、アランと執事は早く逃げるように言ったが、俺は地下の物置に走った。

 

 煙が充満する廊下を、姿勢を低くしながら進む。

 地下の物置を目指す方法は、ほとんどカンが頼りだった。


 ——ここまで来て手ぶらで帰れるか。


 俺は階段の裏側に、装飾のない地味な扉があるのを見つけた。


 おそらくここだ。


 幸い鍵はかかっていない。

 ——いや、これは幸いなのか?


 考えている暇はなかった。

 俺は扉を開けて、その向こうに現れた階段を下りた。



 地下の物置は埃が充満していた。

 入り口には魔石のランプが置いてあり、明かりをともす。


 すると、物置の奥に場違いな、だけど俺にとっては見慣れた素材でできた箱が目に入った。


 ——あれだ!


 俺は物置の奥に歩を進めようとした。

 ようやく真実に手が届く。


 だがその瞬間、俺は足元に広がる光景に違和感を感じた。


 埃が積もった床の上に、真新しい足跡が複数ある。

 アリスが出入りした時のものではない。

 これは今しがたこの物置に侵入したものがいるということで——



 突如として背後に人の気配がした。

 俺は羽交い絞めにされて、力ずくで物置から連れ出された。

 振り返ると、騎士団の一人と思われる男の顔があった。


 ちょっと待ってくれ!

 あの箱だけは取らせてくれ!


 俺は体をよじって訴えたが、俺を連れ出した騎士団の男はそれを許さなかった。


 「何やっているんですか!早く逃げないとあなた死にますよ!?」


 分かっている。

 分かっているけど、あの箱にはヴィトが探していた「答え」がある。

 あと少しで、手が届きそうなんだ——!


 俺の望みもむなしく、「真実」が隠された物置はどんどん遠ざかっていき、もはや俺の手が届くところではなくなっていった。


    ◇


 「地下には何もなかった........?」


 騎士団事務所を訪れた俺とアランは、応対した騎士に唖然とした表情を向けていた。


 侯爵邸が鎮火した後、現場検証が行われたが、俺たちはその場から締め出された。

 現場検証が終わったことを受けて、地下にあった箱について確認しようとしたら、返ってきた答えが「地下には何も保管されていなかった」ということだった。


 そんなはずはない。

 あの日、確かに俺は目の前に「真実」が入った箱が置いてあったのを見た。


 それが無くなっているということは、全焼したかもしくは、何者かが持ち去ったか。

 後者の場合、俺をあそこから連れ出した男が関与していると思われた。


 俺はあの日侯爵邸にいた騎士全員に会わせてほしいと願い出た。

 煙の中ではあったが、顔を見ればわかるかもしれない。


 だが、俺の申し出は「事件解決には感謝しているがそれ以上の協力をする理由はない」ということで、一蹴された。


 俺とアランは引き下がるしかなかった。


    ◇


 数日後、ヴィトが釈放された。


 俺はアランの事務所でヴィトと再開していた。

 ヴィトは出会った頃より、若干やつれてはいたが、その目には変わらない精悍さが宿っていた。

 

 「ありがとう。本当に感謝する。」


 ヴィトは俺に手を差し出してきた。

 俺はその手を強く握った。


 俺の無断転載から始まったこの物語。

 ヴィトが途中まで書いた物語を、俺はどうやら一区切りさせることに成功したらしい。

 ——だけど、伏線回収が終わっていない。


 「約束通り、お前を転移魔法で元の世界に還す。」

 ヴィトはそういうと俺の目を見た。


 「待ってください。この物語はまだ完結していません。」

 俺はまだ責任を果たしていない。

 それに、俺自身が真相を知りたいと願っている。


 「しかし...........。手掛かりはもう。」

 ヴィトは申し訳なさそうな顔になった。



 「それに、これも読んでほしいんです!」


 俺はそういうと、ヴィトに一冊の本を差し出した。

 ヴィトの事件が解決してから、かねてより温めていたアイディアを魔道具で本にしたのだ。

 以前のヴィトのアドバイスを受けて、多少はマシになっている——はずだ。


 「俺はもう囚人じゃないからな。”時間を返せ”じゃ済まないぞ。」

 ヴィトはやれやれという顔で本を受け取ったが、その表情は少し嬉しそうにも見えた。



 「それと........。転移魔法のこと、もっと詳しく教えてくれませんか?」


 ヴィトが転移魔法にこだわる理由は、以前に聞いた。

 だが、よく考えたら俺はそもそも転移魔法のことをよく知らない。


 「——長くなるぞ。」


 ヴィトは警告した。

 だが、その目は純粋に輝いていて——

 いや、この表現だときれいすぎだ。


 まるで好きなラノベやアニメを語る機会を得たオタクのような目をしていた。


 第十六話は2026年10月26日21時10分公開予定です。


 この作品が面白いと思っていただけた方は是非、無断転載ではなく高評価・感想・ブックマーク等で応援していただけたらと思います。

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