第十三話 真犯人
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
本作は無断転載をテーマとしていますが、無断転載を擁護・許可するものではありません。
作者も異世界を含めて無断転載を行ったことはありません。
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
「ちょっと待ってください.........!」
名指しされたアリスは怒るでもなく、そう言っていた。
「確かに今の方法なら、私にもできるかもしれませんし、私が一番疑わしいかもしれません。でも証拠はあるんですか?」
アリスは続けた。
「二か月前に起きたボヤ騒動。おそらくその原因にあなたは気付いていたんじゃないですか?」
俺は証拠を提示する前に、質問を投げかけた。
二か月前に起きたボヤ騒動はタバコの不始末ではなく、今回と同じ原因。
だけどそれは事件ではなく、事故。
誕生日の祝宴後ということなので、おそらく贈答された花を飾ったのだろう。
それが、バラ等の水を多く注ぐ必要がある品種だったのなら、偶然今回のようなことも起こりうる。
アリスは質問に答えなかった。
使用人B<シーナ>が、はっとした表情を見せた。
『花瓶に注ぐ水が多すぎる。茎が痛むからもっと少なくていい。』
ボヤ騒動の直後、アリスからそう言われたことを思い出したのだ。
「たぶん、その時点では侯爵に殺意は抱いていなかったのでしょう。花瓶が原因であることを伏せたのはそれを行った人物に非難の矛先が向かわないようにするためでしょうか?」
あいかわらずアリスは否定も肯定もしなかった。
「毒の小袋を置いたのは、おそらく未必の故意でしょう。火が付かなかったときは、”寝室で大きな物音がした”とか言ってマスターキーを借りて、毒の小袋を回収するつもりだったのでしょうから。」
——これは俺が現世でアパートの庭に侵入した時の言い訳から思いついた話だ。
「ですから、証拠はどこにあるんですか!」
アリスはたまりかねたように言った。
「火が付かなかった時を想定するのなら、明け方にもう一度窓の外から寝室の様子を確認する必要があったかと思われます。それに火が付いたとしても、侯爵が寝たまま起きなかったら花瓶の水に手を付けなかったかもしれません。」
俺は回りくどいとは思ったが、自分の推論を続けた。
「あなた、明け方に寝室の窓の外にいたんじゃないですか?もしかしたら煙が出ているのを確認した後、窓を叩いて侯爵に知らせたりもしたのでは?」
俺はアリスの目を見て聞いた。
——アリスの目に動揺が走った。
「だとしたら、残っているはずですよ。窓の外の庭にあなたの残留魔力が。それに、窓を叩いたのならあなたの手形と一致する跡も見つかるかもしれません。」
この世界には指紋やDNA鑑定はない。だが、手形くらいは残る。
息を吹きかけて窓を曇らせれば、叩いた跡を浮かび上がらせることぐらいはできる——と思う。
俺のハッタリも含んだ話ではあったが、効果はあったようだ。
アリスは言葉を失ったまま、その場に座り込んだ。
執事や使用人たち、騎士団の面々が驚いた表情でアリスを見つめた。
「私は..............。帰りたかっただけなのに。」
座り込んだアリスは、小さな声でぽつりとそうつぶやいていた。
第十四話は2026年10月25日21時10分公開予定です。
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