第十二話 推理
こんにちは。作者の「野生の書生」です。
本作は無断転載をテーマとしていますが、無断転載を擁護・許可するものではありません。
作者も異世界を含めて無断転載を行ったことはありません。
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・地名等は一切関係ありませんので、ご容赦ください。
二日後、といっても夕方になってからだが、俺たちは騎士団とともに侯爵邸を訪れていた。
今度は調査ではなく、「実験」が目的だ。
つまり、侯爵邸の寝室で毒の入った小袋に火をつけたトリックが実際に可能かどうかを確かめるためだ。
寝室に火が付いたのは明け方六時ごろ。
その時間に実験をしたいから、今日はここで泊まり込むというわけだ。
「明け方の実験には皆さんも立ち会っていただければと思います。」
俺は執事や使用人にそう伝えていた。
おかげで、今日は皆早く就寝することとなった。
◇
翌日、午前五時半。
関係者一同が侯爵邸の寝室に集まっていた。
部屋の中は事件当日と同じ状態に維持されていた。
「本当にこれで何かわかるのですか?」
執事は半信半疑の、いやほとんど疑っている様子で俺たちの方を見ていた。
事前にアランの事務所でも試してみたが、侯爵邸でも同じことができるかは不安ではあった。
それに、このトリックには運に頼った部分もある。
もしも失敗すれば、今後俺の話に耳を傾けてくれるかどうか——。
六時を回る。
空が明るくなっていく。
太陽が東の空から顔を出し、寝室の窓から光が差し込んできた。
その時だった。
小袋に見立てて灰皿の上に置いておいた丸めた紙が煙を出し始めて、やがて小さな火が付いた。
——成功だ!
俺は内心ガッツポーズをしていた。
その場にいた一同も驚いた顔で燃える紙を見ていた。
何度検討しても、見つからなかった発火装置。
——当たり前だ。
発火装置は侯爵が自分の手で撤去してしまっていたのだから。
俺は窓際に置かれたアランが取り寄せた”荷物”——花瓶の方に視線を向けた。
収斂火災。
金魚鉢やペットボトルなど水の入った容器がレンズの役割をして火種が発生する現象。
俺の世界では割と知名度の高い現象だったが、この世界ではレンズの役割を果たすほど完璧に成形されたガラス製品はそう出回っていない。
二か月経過しても太陽の角度が変わらなかったのだから、この世界の環境は偶然の収斂火災が起きにくい条件がそろっていると言えた。
「これで密室に火をつける方法はわかりましたね。」
俺は一同を見回すとそう告げた。
俺はちょっとした探偵気分に浸っていた。
「しかし.......。今ので火が付くのだったら、なぜ事件当日だけ火が付いたのかね?」
執事が聞いてきた。
もちろんこれは天気にも左右される不確実なトリックだ。
だが、晴れていた日は他にも何日もあった。
事件当日だけ火が付いた理由は——。
「水量ですよ。おそらく事件の日以外は花瓶に入っていた水の量が少なかったのでしょう。」
俺はそう答えた。
「でも、事件の前日。花瓶の水を替えましたけど、いつもと同じ量しか入れませんでしたが。」
使用人B<シーナ>が言った。
その通りだ。
いくら花瓶がノーマークだからといって、下手に触れば不審がられる。
だが、花瓶が窓際に置いてあったのなら——。
「おそらく侯爵が寝静まった後、窓の外から水魔法で水を追加したんでしょう。窓越しでも水たまりを作れたってことは、花瓶に水を足すぐらいのことはできたでしょうから。」
一同がざわざわと顔を見合わせ始めた。
——じゃあ、一体だれが。
密室で中に入らず火をつけるトリックはできても、毒の入った小袋を仕込む必要はある。
それができた人物はただ一人。
「あなたですよね。アリスさん。」
俺は使用人A<アリス>を名指しした。
第十三話は2026年10月25日11時40分公開予定です。
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