2. 墓所の主
第2話です。
1〜4話まで変更しました。
説明文を削りました。内容も少し変わっていますが、あらすじは変えていません。
読んで頂いた方は申し訳ございません。
その夜、俺の夢にローブを纏った女性が現れた。
黒髪で黒い瞳だから日本人だと思ったが、瞳は紺色で髪も濃い緑で、顔立ちも彫りが深い。かなりの美少女だった。
何かを真剣に訴えているのが解るのだが、声が無い。
ローブさんはその後も夢に現れ続け、1週間が過ぎた。
危害を加えて来るわけでも無いので、ちょっと楽しみになった。
慣れたので睡眠不足は無くなったが、やはりあの墓が気になって頭から離れない。
「ブレンドとミックスサンド」
「いらっしゃい、蒼」
「教会跡に行って来たよ」
「景色良かったでしょ。大銀杏の紅葉も綺麗だし」
ママはカウンター内から挨拶をして、サンドイッチを作りながら話しを続ける。
「あの石の建物は何で廃墟のままなんだ?」
「戦争中に大沼原に軍の飛行場があったのよ。お堂は高台でしょ。高射砲が広場にあってね。戦闘に巻き込まれて火事になったんだって。はい、コーヒーとミックスサンド」
「ありがとう。その後で修復はしなかったの?」
「物資は軍に供出だったし、そのまま戦争が終わっても物不足でしょ。あそこを整備したのは昭和の35年くらいだったって」
きゅうりの入ったツナサンドをつまむ。
「ママ詳しいね」
「小学生の時に町の歴史習うでしょ」
「なるほど、俺も地元で習った」
「教会の廃墟って市が管理してるのか、あの後ろの山はどうなってる?」
ママは湯呑みを持って俺の向かいに座った。
「御蔵山まで行くハイキングコースね。最後はキツイ坂だけど、2時間くらいよ」
今日の湯呑みは紅茶が入っているらしい。いい香りがする。
「墓地なんかはあるの?」
「墓地?無いわよ。そう言えばあってもおかしくないわね」
「ホラー映画みたいな人が住めそうなでっかい墓は無いの?」
ママは俺をじっと見ると、俺の玉子サンドを摘まんで、満足そうに言う。
「何も無いよ。月に1度は散歩に行くから間違いない。一緒に行く?」
もう一度行くと決めた。どうしても気になる。
ママの言った通り、教会の裏手には石段は無く、入口にハイキングコースの案内板が立っていた。
〈御蔵山山頂3.2km120分⇔お堂山前駅2.2km40分〉
こんなものは無かった。稜線に沿って山道が続いている。
何かの間違いだと思い、教会跡の周りを歩き回った。
気が付くと目の前に堂原の町が見えた。驚いて動くと、横になっていたのに気が付いたが、間に合わずにそのまま寝ていたベンチから転げ落ちた。
広場の時計は2時を過ぎている、朝9時には着いていたはずだ。5時間も何をしていたのか、記憶が無い。
もう一度回って何も無いことを確認するが、やはり石段は無い。ずっと倦怠感と悪寒がしている。
このままだと墓を荒したこととローブさんが夢に現れたことが全て無かったことになる。俺の中ではこの関連性に辻褄が合っていた。
「いよいよ幻覚を見るようになったか」
何も得るものも無く。考えても答えが出ないので帰ることにした。
家に近づくと、女の言い争う声がする。
2人の女性が言い争っている様に聞こえた。
「あなたが出ていって下さい。王殺し!」
「そなたこそ出て行かぬか、小わっぱが!」
「私達の居た世界とは違うのですよ。この家の周りを見たではないですか、何もかも変わってしまった。ここが何処なのかも判りません」
「良いではないか。妾を追う者共は滅びたのかのう?おとなしくしておれば安心安全」
自宅の前まで来ると、言葉がはっきりと聞こえて来た。
「王殺し、あなたがおとなしくできるとは思いません。この国の民が気づく前に消えて下さい」
玄関は鍵が掛かったままだった。縁側から入ったのか?
解錠して中に入る。
「それはそなたも解っておろう。契約者殿がおらなんだら、どのみち…」
2人は事務所にいた。入ると少女達が俺に集中する。
俺は2人の身なりと人種に驚いて違う意味で集中してしまった。
1人は夢に現れた少女だった。あの深緑のローブを纏っている。
夢では気が付かなかったがローブだから前が開いているのは当然だ。
だが、巨乳のために隙間が広がり、素肌の足から腹まで見えた。
ローブの下は何も身に着けていないようだ。髪はストレートロングで高校生くらいの年齢に見える。
もう1人は見覚えが無い。
透けた青い生地を体に巻きつけて、何と言ったか古代ローマ人の…ドレープとかドレーパリー?を着ている?巻いている?
透けているのでイロイロ見えそうだが、凝視しないようにする。
銀髪ストレートロングで瞳の色はグレイだ。スキニーだが中学生くらいだろうか?こちらもかなりの美少女だ。
こいつら外国人は何てヤバいコスプレしてるんだ。何のコスプレだ?
それに2人ともサンダルを履いたまま部屋に上がっている。
掃除のことを考えたら少し冷静になれた。
こちらは2人を直視するのがツラいのに、本人達は気にしていない様で不公平だ。
「「蒼!」」
俺は美少女の知り合いはいない!
「誰だ?何で俺の名を?」
2人は消えてしまった墓から来たと言う。
「妾は知恵と農業の神だったのじゃが、悪戯が過ぎてな。高位の神から邪神に落とされた上に小奴らの仲間に封印された。じゃが、幸運にも蒼が解放してくれた、礼を言うぞ」
「私は封印魔術を維持するために、邪神と共に封印されましたが、4千年が過ぎて、私の魔力が尽きて封印が弱まりました。そして蒼が……」
ローブさんの本名リアンノン、自称大魔法使い。名前の意味は、偉大な才能のある女王という意味で本名というより魔法使いの称号。実年齢は215歳。この年齢で大魔法使いは異常に早熟だそうだ。
自称邪神さんは、人間の賢者から亜神、神へと昇神したそうだ。神に昇神したのは11万年くらい前らしい。賢者が神になることも珍しく、普通は一代で大国を築くような人物が昇神するのだと言う。
名前は神語で2048文字(本人談)あるので割愛する。
何かのパスワード?
11万年って信じるわけ無いでしょ。ホモ・サピエンスっていつからだっけ?
2人ともアニメのコスプレか?
偶然に俺が墓所跡にやって来て、封印を解いてしまったということだ。
「蒼!あなたのせいですよ!私と契約の契を結んでください!」
4千年も封印の維持ってどんだけブラックなんだ。まるで電池じゃないか。設定にしても酷い。
確かに墓をあばいたが、そんな荒唐無稽な話はない!
魔力とやらが尽きたんなら、いずれは封印が解けただろ。
それに解放されたならもう自由じゃないか、俺には用が無いはずだ。
「どちらにしても墓は消えて封印も解けたんじゃないのか?」
俺は何も知らずにあそこに行っただけだ。
「封印の解除は不完全です。私達は封印から離れられず、魔力は回復不能です。結界から出ると強制的に墓に戻されるのです」
「墓はもう無かったぞ。それになぜこの場にいられる?」
矛盾だらけじゃないか!
「それは蒼と仮契約したからです。仮契約で私達は結ばれました。今なら蒼の活動範囲で存在が可能です。言葉が必要なくなり、蒼の記憶を利用できます。封印の石箱が消えた理由は解りませんが、あの場から離れられませんでした」
「仮契約?」
2人は俺が戻らない墓所跡で途方に暮れていた。ローブさんが俺の夢に出て訴えても上手く行かなかったからだ。1週間もたってから俺が現れた事で、2人は俺と先に契約するために戦いになった。俺は魔法の勢いに当てられて気を失い、ベンチまで運ばれたそうだ。
「死んだかと思うて肝を冷やしたぞ」
そして俺が無防備な隙に仮契約を済ませたと言うことだ。
仮契約の効果で封印が弱められ、俺の活動範囲なら、墓所跡に引き戻されない。
つまり、この家なら俺が居なくても存在できる。
しかもテレパシー的な何かで意思が伝えられる。
俺の記憶を使える?
邪神て名前だけなら大魔法使いよりずっと強そうだが、何もしなかったのか?
何だろう腑に落ちないものがある。
仮契約は従側なら一方的に可能だと言う。勝手に親分にされて、親分のリソースを勝手に使われてしまう。
「私達は資格者と契約を結べば封印から完全に解放されて、魔力もある程度復活するのです。そして石箱の封印を解いた蒼が資格者です」
「資格者?同意しかねる」
資格を破棄する条件は、どちらかの死。
契約成立後に資格者が死ぬ(老衰でも)と、自動的に彼女達も死ぬ(契約に同意しているので神も死ぬ)が、その逆に彼女達が死んでも俺に影響は無い。
「妾と契約するぞ」
「私と契約するのです。邪神を復活させてはなりません」
邪神と大魔法使いって本当なら世界を滅ぼせるのでは?
一連の不思議体験で話しを受け入れそうになっている俺だが…。
俺にメリットが無い、彼らにとっては大事な契約なのに俺にメリットが無い。契約自体にはデメリットは無いが、その後が怖い。
仮死状態で永久保存でも目論んでいるのか?
4千年も封印できるのが本当なら、千年くらいは簡単なのではないか?
彼女等が何かしでかしたら社会的に死ぬ。いや世界が滅びるかも。
美少女達と同居しても社会的に死にそうだ!
これは絶対にパスだ、絶対パスでは無い。
危険感知スキルなんて無くても危険だと解る。
「お伽話みたいな嘘で煙に巻こうとしても信じる分けが無いだろう。出て行ってくれ」
ピンポーン
2人を追い出そうとした時にドアベルが鳴る。
2人に事務所から出ないように言って玄関に向かう。
来訪者は大家さんだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
4話まで書き換えています。




