↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶が2日で消えてしまう聖女様の傭兵は忘れられた数だけ愛の告白をすると誓った。【1章完結】  作者: 久方久米


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/20

8話『DAY1 ⑤』


 図書館で何をするのかって言うと、明日の仕込みのようなものだった。


 地下下水道のマップを確認したくて、聖女様と共に資料を漁っている。


 たまに、聖女が関係の無い絵本を読み始めて、作業が遅延する事態もあったが、大体の情報が揃っていく。


 「少し、息抜きをしません?」


 「ずっと抜きっぱなしだったじゃないか」


 「そんなことありませんよ。資料は集まったじゃないですか」


 「サボってなきゃ、こんなに外が暗くならずに済んだ」


 「だって傭兵さんはサボり方を知らないじゃない」


 「……そうだな」


 核心を突く言葉であった。


 あまり冗談を言うタイプでもないし、聖女はとても退屈であっただろう。


 面白いことも、仕事として必要なのか。


 それを理解させられそうな問いだった。


 「傭兵さんの息抜きを手伝ってあげようか?」


 「……断る」


 「いいから、こっちに来てよ傭兵さん」


 ──嫌な予感がした。


 食堂の時と、何だか空気感が似ている。


 間違いない。


 聖女様はまた、良からぬことを考えているのだ。


 振り払おうとしたら、もう遅かった。


 俺の耳元で……フゥーっと、吐息を吹きかけてきた。


 「──ひぃっ!?──」


 何でもない行動に性感帯が刺激され、少し力が抜けた。


 また悪ふざけだ。


 何度注意をしても、直りやしない。


 注意しようとしたけど無駄だった。


 「──どう……だったかな。気持ち良かった?」


 「そういう行為も控えてくれると助かるのだがな」


 「好きなくせに。顔はちゃんと感じてたじゃない」


 「そういう問題じゃないんだがな……」


 注意する気にもならなかった。


 今日は一日中、こんな調子で弄ばれている。


 聖女の気持ちを理解するのも、仕事の内かと、自分自身に言い聞かせておくことにした。


 「もう宿に戻って明日に備えますか」


 「朝は……早いのか?」


 「そうね、起きてすぐには地下に降りますよ」


 歩き回り、遊び疲れたのだろう。


 ちらほらと、あくびをする。


 俺も聖女の護衛をしなくてはならない。


 早く就寝をしてくれた方がこちらも気が楽だ。


 図書館から退出し、宿屋までの帰路に就いた。


 聖女は、部屋に着いて早々に、風呂へ行った。


 風呂は唯一、一人の時間になる。


 回りに警戒しながら、入浴が終わるのを待つことにした。


 しばらくして、風呂上がりの聖女様が自慢気に話しかけたのである。


 「どう?……似合うかしら」


 ナイトウェアは、白乳色のキャミソールにショートパンツを着用していた。


 聖女らしく、それでいて、清楚だった。


 可愛いだなんて口には出せないが、なんだか許せない気もしている。


 こんな状況で体のラインがハッキリと分かる、色気のある服装をされたら、いろいろと誤解を生む可能性だってあるだろう。


 というか、自慢して何になるというんだ。


 俺は褒めてなんてやれないし、そんな資格を持った大層な人間ではない。


 「……早く寝ろよ」


 「傭兵さん酷いですよ。ちゃんと褒めて!」


 「冗談よりも休息が先だ」


 「つまんないの〜」


 「面白くあってたまるか」


 「ねぇ、傭兵さん。あなたも寝るんでしょ。同じベッドで寝ませんか?」


 また、聖女様のからかいが始まった。


 寝る訳ないだろうが。


 ましては、貴族の女との添い寝なんて考えたくもない。


 倫理観もそうだが、寝てしまっただけで死刑なんてことも……。


 この聖女は、俺を社会的に抹殺しようとしている。


 きっと、そうに違いない。


 「依頼中は寝ないことにしている」


 「へぇー、すごいのね。いいじゃない、今日だけ!」


 「……万が一、襲われでもしたら誰が助けるんだ?」


 「そうでした……忘れてました。じゃあ、後一つ。わがままを聞いて貰っていい?」


 「いつもわがままだろ」


 「そんなこと言わないでよ。いやね、ちょっとしたことなのよ。寝てる間は……手を握っていて欲しいの」


 可愛いところ……っていうか、子供っぽい一面があるのだなと、意外性があった。


 手を握ってやるだけなら問題はないか。


 聖女の策に溺れているような気がしてならないが、踏ん張り所なので、優しく握っておいてやろう。


 「手……温かいね傭兵さん」


 「いいから早く寝ろよ」


 「寝れないよ。今日は楽しかったもの。傭兵さんはどうだった?」


 「──俺は……」


 楽しかった、とは言いずらい。


 なんというか、新鮮だった。


 聖女と街を歩き、馬鹿みたいなことを言い合って、寝食を共にして……。


 これまでの人生とは、比べ物にならないぐらい、充実な一日だったからだ。


 楽しかったの一言では、簡単に収まってはくれないだろう。


 強いてこの感情を言語化するのなら、聖女の言葉を借りるのなら、この回答が正しいはずだ。


 「──温かかった」


 この言葉しかなかっただろう。


 「なにそれ、変なの」


 聖女は、ニコッと戯けていた。


 それ以上に、今日の中で一番と言ってよい程の柔らかい表情でもあったんだ。


 「ねぇ、傭兵さん」


 「……今度はどうした」


 「今日のことは、ちゃんと覚えていてほしいの」


 「からかってきたことをか?」


 「まぁ、それでもいいかな」


 「どういうことだよ。煮え切らないな」


 「傭兵さんにだけは、忘れないでいて欲しいから」


 「なんだよそれ。今日のことは、強烈に記憶に残ったぞ」

 

 「惚れちゃってもいいんだぜ?」


 「……外が冷えてきた。もう寝ろよ」


 聖女は、まだ話し足りなかったのかもしれない。


 誰がこんな女を忘れるものか。


 振り回すだけ振り回して、かといって大人な言動も多く、たまには子供のような無邪気な……そんな聖女。


 アリシアの手の温かさが、凍てつく心の氷を少しずつ溶かしてくれているような気がした。


お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、『ブックマーク』と下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!


※感想、レビュー等、お気軽にお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。