6話『DAY1 ③』
卵のスープが絶品らしい。
スープを頬張る聖女様は、クールな見た目と相反して、無邪気な子供のようだった。
そんな聖女を眺める内に、二杯目のスープがテーブルに運ばれてきた。
「さぁ、どうぞ」
やってやったと、したり顔をする聖女に呆れて、ため息をついてやった。
俺の出来る仕返しはこの程度。
黙って食事をすることにした。
「美味しいでしょ?」
「……そうだな」
「もっと美味しくなる隠し味を入れます!」
「……必要ない」
「絶対に美味しくなるのになぁー」
何か企んでいる様子だった。
俺は……もしかしたら殺されるのかもしれん。
毒殺……まさか。
一体、何を盛ろうというのか。
怪しさだけが滲みだしていた。
「てぇーいぃ!」
「──んっ!?──」
──隙を見せた瞬間のこと。
聖女様が咥えていたサジを俺の口に突っ込んできた。
隠し味とは、このことだった。
「どうかしら傭兵さん。私はこんなことも出来るのよ?」
「……悪ふざけなら他所の貴族にやりやがれ」
「ちょっと可愛いなって思ったでしょ」
「全く思わないな」
「いいじゃんケチィ〜。惚れてもいいんだぜ!」
「相手を選んで出直せよー」
出会って数日しか経たない女であることは間違いない。
この聖女様は、他人との距離感をあまり深く、分かっていないようだ。
多少なりとも、ドキッとした。
不覚にも、可愛いなとか、癒されるなとか、普通の男であるならば誰しもが思う感情。
美少女であることも認める。
だが……俺は傭兵だ。
不純な感情など……切り捨てなければならない。
強がって、何ともないフリをした。
「意外と傭兵さんはガードが固いのね」
「……もう少し、品性とやらを学んだ方がいいぞ」
「大切な人には、みんなこうするものよ?」
大切な人だと言っていれば、何でも誤魔化せると思っているらしい。
無邪気な聖女は、今回のイタズラで大変満足したようだ。
反応に困るから、もう二度とやらないで欲しい。
「もう出ましょうか傭兵さん」
「そうだな、たいがい疲れたぞ」
「焦ってる傭兵さんも素敵だね」
「からかいが過ぎるんじゃないか?」
「からかってなんかないよ。私はいつだって本気だよ?」
キョトンとしながら、当然かのような口調だった。
今でこれなら、先がおもいやられるぞ。
何人もの男をたぶらかす、魔女そのものではないか。
少女の好奇心は残酷なんだなと、つくづく思ってしまう。
スキャンダルを起こすような大人には、育って欲しくはないものだ。
食堂を出て、本日泊まる宿屋を探すことにした。
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