5話『DAY1 ②』
「──卵料理は人類を救うのよ」
訳の分からない言葉にそうですかと、雑な相槌を打った。
聖女様は、食事処を選ぶセンスがあるらしい。
現地民がこぞって通う名店を選び入店した。
大体の相場は、決まっている。
観光客目当てで、割高な粗悪品を現地特産品だと言って、儲けるやからも多い。
物ならまだ良い。
食べ物だともっと最悪だ。
不味すぎて、えんげするほど絶妙に臭い。
そんなものばかりだ。
それでいて、この食堂は良心的だった。
価格の安さ、客の満足度、どれを取っても素晴らしい。
聖女様には、こんな才能もあったのか。
心底、感心してしまう自分がいた。
「傭兵さんは、なんでテーブルにつかないの?」
「貴族様と同じテーブルにつけるかよ」
「私は気にしませんよ?」
「気にしないとかの話しじゃない。身分の話しだ」
何を言い出すのかと思えばこれだ。
この世界では、当たり前のことだからな。
底辺の人間が上級貴族と同じテーブルに着くことは許されない。
しようとしないし、する理由が無いからだ。
それは、貴族を愚弄する行為であって、品格を落とす、浅はかな行動である。
自衛でもあるし、聖女様を少しばかりは、尊重してやっているつもりだ。
聖女の立場が悪くなるだけ。
何のメリットだってない。
「私は……そういう考え方は嫌いです!」
「事実、そうだろ。世の中はそういう風に出来ている」
「私は……私の大切な人と共に居たいだけなんです」
「そりゃ、良かったな」
「その中に、傭兵さんも入っているのですよ?」
「──はっ?──」
雷魔法を打たれたような衝撃だった。
この聖女は、一体なにを言っているんだ。
今時、珍しいこと言う。
差別をせず、好きなことは好き、嫌いなことは嫌い、堂々と語れるやつはなかなかいない。
貴族なんてのは、最下層の人間を見下してナンボの種族であって、それは普遍的なものなんだろうと、勝手に思ってた。
もっと理解出来なくなってしまった。
聖女にとって、ただのそこら辺の石ころみたいな傭兵が大切だなんて、本気で思っているのだろうか。
──そんな訳あるものか。
「だから、そんな寂しいことは言わないでください」
「……綺麗ごとだな」
「では、こうしましょう」
「まさかアリシア……」
「──依頼します。私と食事をして下さい」
「な、何言ってやがる!?」
「もちろん、同席ですよ?」
──無茶苦茶だ。
たかが、小汚い傭兵と食事をしたいってだけで、聖女は依頼しやがった。
何でも屋になった覚えはないんだがな。
「……この依頼は別料金だぞ」
「なんなら料理に隠し味をつけますよ?」
折れてやることにした。
物好きな聖女様だ。
いつも俺の想像をはるか先まで超えてきやがる。
変な汗が背中に流れてきて、身震いをしてしまった。
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