2話『RE;START〈リスタート〉』
──あれから二日経つ。
仕事の依頼は無く、ただ呆然と自室に篭っていた。
そろそろ仕事をしなければ、明日の食糧だってもはや怪しいだろう。
どこかに魅力的な仕事はないだろうか。
魔獣殺しの方が手っ取り早いのだが……。
都合良く、依頼など来る訳がなかった。
「──誰かいらっしゃいますか?」
幻聴だろうか。
女の声がした。
この貧民街に若い女はいないはずなんだかな……。
とても嫌な予感がした。
この耳を刺す声は、ごく最近に聴いたことがある。
まさかな……。
玄関に向かい存在を確認した。
「──あなたが傭兵ですか?」
また来やがった。
あれだけ暴言を吐いた。
警告だって充分にした。
それなのに、あの聖女様はまた俺の前に現れたんだ。
「いい加減にしろよお前。どれだけしつこいんだ」
「……何のことですか?」
「はぁ?二日前もウチに来ただろうが」
「──私とあなたは今日が初対面ですよ?」
「──はぁっ?──」
何を言っているのかがサッパリだった。
高等な煽りで俺をバカにしているのか、あるいは、超ド天然のド阿呆なのか。
理解に苦しむ発言だった。
あながち、婚約破棄の噂は的を得ていて、本当のことだったのかも知れない。
こんなに頭が悪いのなら少し可哀想だなと、何故だか哀れんでしまった。
「傭兵ですよね?」
「あぁ……」
「──ご依頼がありますの」
このやり取りは二回目だぞ。
どんな神経をしてやがるんだ。
ハガネのメンタルじゃないか。
オリハルコンより硬いのかもしれない。
前回のやり取りを無かったことにしたいってことなんだろうか。
無理があるぞこの女。
呆れてどうでも良くなった。
「話しぐらいは聞いてやるよ」
追い返したところで、この女は諦めないのだろう。
この熱量で毎度毎度ウチに来られては、たまったもんじゃない。
なんで俺に固執するんだよ……。
愚痴を言う友達ぐらい、作れば良かったと後悔した。
「で、なんだよアリシア。そんなに傭兵がご所望か?」
「……どうして私の名前を知ってるんですか?」
「お前が言ったんじゃないか」
「そう……だったんですか……」
他人事の様な生返事だった。
悪いが俺は聖女に興味なんかないぞ。
ストーキングなんてしてないからな。
ていうか、ストーキングしてるのはお前だバカ聖女。
「傭兵の中であなたが一番腕が立つのでしょ?」
「……そうかもな」
もう突っ込まないことにした。
聖女様は出会いを一からやり直したいのだ。
無粋な真似はやめておこう。
「──私の傭兵になってください」
二日前と全く同じだった。
真剣な眼差しで、真っ直ぐ見つめて、それに堂々と、俺に依頼を出してきた。
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