19話【2章】『DAY1 ⑤』
「お前か……最近クソ聖女が雇ってる妙な傭兵とやらは」
ジジイがビビり散らかしながら、見栄を張って挑発をしてきた。
実力差が、まるで分かっていないようだ。
今ならお前なんぞ、一万回は殺しても、殺し足りないぐらいなんだがな。
死んで償えよ。
小型ナイフを取り出して、一気にジジイに詰め寄った。
動脈を断ち切って終いだ。
そう確信した矢先のこと──。
俺のナイフを大剣で防ぐ、若い男が立ちはだかった。
「大丈夫ですか国王様。死んでましたよ?」
「遅いぞ、剣聖!」
「申し訳ありません道が混んでまして……」
「まぁ、良い。あのクソ生意気な男を殺せ!聖女は生け取りだ!」
「ハイハイ、かしこまりましたよ」
ただものでは無いやつが現れた。
剣聖って言ってたっけか。
どれほど強いのだろうか。
ていうか、あの剣は何だ。
──体格と合ってないじゃないか、素人か……!?
「……マズいですよ傭兵さん」
聖女が、俺の手を強く握った。
もしかしてこいつ、相当な手練なのかもしれない。
「あいつは……剣聖ですよ」
「……剣聖ってなんだ」
「知らないんですか!?」
「……知らん」
「王都の中で選ばれし剣士に与えられる称号ですよ」
「……強いのか?」
「強いなんてものじゃないですよ。無敗の剣士の異名があるんですから!」
「……そうか」
対峙したことのないような敵だ。
よほど、自信があるのだろう。
俺では、倒せない敵なのかもな。
だけど、俺は引く訳にはいかない。
敗北するということは『俺の大切な存在である聖女』をくいものにされるということだ。
負けられないし、引き下がれない。
メンドーなやつを呼びやがって……。
戦闘において、久しぶりの焦りを感じた。
「傭兵さん、剣聖に勝てますか……」
涙ながらに問いかける聖女。
その姿を見て、俺は決心した。
やってやるし、やれない訳がない。
聖女に俺のかっこ悪いところなんて、みせてやりたくない。
あいつらは、聖女を泣かせて、傷つけたんだぞ。
「……俺は傭兵だ」
「分かってますよそんなこと」
「依頼ならなんでもする」
「お願いします。傭兵さん私を助けて!」
「……殺しても構わんか?」
「こんな時になんて冗談を──。いや、やっぱり傭兵さんらしいですね!でも、殺しは無しですよ?」
「……あぁ」
冗談を言った訳じゃないんだがな。
それで、聖女が和んでくれるのなら、それも甘んじて受けよう。
──殺しは、無しか。
言ってくれるじゃないか。
多分、手加減が出来る相手じゃないぞ。
「お話合いは終わったかな?サクッと殺して聖女奪っちゃうぞ!」
「……ほざけ!!」
剣聖との戦闘が始まった。
あの細い身体に大剣でこの腕とは、正直に言って驚いた。
剣聖の攻撃は、とても速くて、一撃が恐ろしく重い。
ナイフで撃ち合っているが、手首が衝撃で麻痺しそうになる。
剣聖が優勢のように思えるが、言い得て妙だった。
剣の撃ち合いの内に感じた違和感だ。
剣聖は、小手調べで軽い攻撃をして、俺の出方を伺っているんだと思っていた。
さっきから、剣の速度が上がらない。
なんなら、剣聖は息を切らして、余裕のない様子だ。
みるみる、剣の速度は落ちていった。
──訂正しよう。
──コイツ……めちゃくちゃ弱い!!
──無敗の剣士?
──ふざけてんのかコイツ。
まともに相手をするのもなんだかバカらしくなってきた。
俺はこんな雑魚相手に怯んでしまったのか……。
アリシア、本当にごめん。
もっと強くなれるように頑張るよ。
「──悪は……滅びろ!トドメだぁー!」
「……そうだな」
何がトドメなんだよ。
何も疲れちゃいないよ。
そもそも、攻撃なんて受けてないし。
呆れたので、一撃で葬る事にした。
「──グボぇォ──」
ナイフを使うと、何かの手違いで殺してしまいそうだったから、グッと我慢して、顔面に拳を叩きつけてやった。
「──ま、まんめ──」
「……あ?なんて言ってるか分かんねぇよ」
歯が吹き飛んで、上手く喋れなかったらしい。
怒りのぶつけ先が分からなかったので、とりあえず、無敗の剣士くんとやらに馬乗りになり、拳の連打をお見舞いした。
ちっとも、うさが晴らせない。
抵抗する度に拳の強度を上げてパウンドを繰り返す。
どうやら、剣聖とやらに勝利した。
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