17話【2章】『DAY1 ③』
聖女と行動を共にし、王都へと降り立った。
国の中心だけあって、どこもかしこも、賑わっている。
水の街エレザードとは、また違った雰囲気にみえる。
都会とは、このことか。
貧民街育ちには、ちょっとばかり、気が滅入ってしまった。
「観光みたいですね、傭兵さん!」
エレザードでも同じ言葉を聞いた。
聖女は、記憶が無くなっても、いつだって、全力で今を楽しんでいるのだ。
少し前なら『そうか』なんて言葉で流していたのだろう。
取り繕うのは、辞めた。
聖女との思い出を心に刻む必要がある。
「……楽しいか?」
「えぇ、とても楽しいです。傭兵さんもいますからね!」
「……そうか、俺もアリシアといれて楽しいよ」
「──ちょっ!?──」
なぜだか、聖女の顔が赤くなった。
──まさか……照れているのか!?
──こんなセリフで!?
もしかして、聖女って意外とチョロいか。
そんなはずはない。
俺が狂わされるほど、からかってくる女だったじゃないか。
よりにもよって、なんでアリシアがデレているんだ。
聖女に困らされているのは、常に俺だけであって欲しかった。
少しアプローチを変えることにした。
俺は聖女をデレさせてみせる。
「……手を握ってもいいか?」
「なっ、なっ、なんですか急に!?恥ずかしい!」
「アリシアの手が好きなんだ」
「だっ、だっ、ダメですよそんな!?」
攻め過ぎたか……。
記憶が無いのに、急にこんなこと言ったら流石に驚くよな。
我に返ってしまった。
俺が恥ずかし過ぎて、狂ってしまいそうだ。
「……すまん、今のは──」
「どうしたんですか。行きますよ傭兵さん?」
「……えっと、これって──」
「手元は見ないで下さい!」
──手を繋いでいた。
指を絡めて、小さな手がしっかりと、俺の手を離さないでいる。
「──んなっ!?──」
言葉が出ないほど、俺は聖女に悩殺されている。
──誰もここまでしろなんて言っていない!
これじゃまるで、カップルみたいじゃないか。
聖女をデレさせるはずが、デレていたのは、結局のところ俺だった。
「傭兵さんの手は温かいですね」
「……アリシアの為に温めておいた」
「傭兵さん……意外と冗談が言えるんですね」
「……まぁな」
お互いにデレの攻防をしている様は、側から見たら滑稽なのかも。
だけど、俺と聖女の関係はこんなもので良いのだ。
まだ、聖女と楽しむ時間は山ほど残っている。
沢山の積み重ねを残したい。
大好きな君となら、何をしても、どこにいても、俺は幸せなのだから。
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