14話『RE;START【1章完結】』
──アリシアの手が温かい。
好きな気持ちをもっと早く伝えておけば、聖女のことをもっと知ることが出来たのではないかと後悔した。
朝日が昇り、次第に聖女が眼を覚ます。
眠いのか、唸り声をあげながら、あくびをして、精一杯の伸びをしていた。
それを見ているだけで、可愛いなと思ってしまう。
小動物のような愛くるしさだ。
聖女の全ての行動に、今はなぜかときめいている。
──やっぱり、間違ってなんかいない。
──俺は、アリシアに恋をした。
起きたので、慌てて手を解いた。
続けても良かったが、なんだか照れ臭くて手を引っ込めてしまったんだ。
すると、聖女が声をかけてきた。
「──おはようございます。……あの、あなたは誰ですか?」
「──はっ!?──」
第一声の言葉で聖女の行動全てを理解した。
思えば、聖女は、出会った時からおかしい行動をしていたんだ。
まるで、初めましてかのように、自宅に訪ねて来ていたし、会話が噛み合っていなかった。
聖女の死ぬって言葉は直接的でなく、この二日の私は消えてしまう。
そういう意味だったんだ。
俺が聞きたいのは、そんな言葉じゃない。
だけど、そんなものは、もう後の祭りである。
聖女からは、俺と出会ってからと、この二日に渡る濃密な交流と思い出さえも、忘れてしまっている訳だ。
俺の告白は、聖女には届かなかった。
心臓を抉るぐらい、鋭い痛みが走る。
過呼吸になるほど苦しい。
落ち着かせるために、何度も、何度も、胸を拳で叩きつけた。
このやるせない思いは言葉に出来ない。
聖女の前では、してはいけない。
それは、彼女を酷く傷つける行為だ。
記憶が残っている俺だからこそ、残酷なことを聖女には強いたくはない。
聖女は俺に何度も言っていた。
『傭兵さんだけは、この思い出を忘れないでいて』
だから、あんな大袈裟に体を張ってキスまでしていたんだ。
理解しろよ、この愚か者。
これは、聖女なりに俺へ向き合ってきた記録なんだ。
証だったんだ。
だとするならば、聖女への言葉に回答する言葉は、たった一つしか無いだろう。
「──どちら様ですか?」
「──俺は傭兵だ」
その言葉に尽きる。
何度だって言ってやる。
──俺は傭兵だ。
──君はどうあっても聖女アリシアだ。
何度、記憶が無くなったって構わない。
その度に、俺は聖女にまた恋をするんだろう。
告白の返事が返ってくるまで、聖女の為にまた声が枯れるまで叫び続けるだろうさ。
次からは、もう出し惜しみをしない。
二日で記憶が無くなってしまうのは、分かっているからな。
この先から、俺が出来る誓いを一つ決めた。
何度忘れてもいい。
君が忘れるなら、俺が何度だって思い出させてやるよ。
『忘れられた数だけ愛の告白をする』
自身に課した誓いだ。
何度だって、聖女を笑顔にしてみせる。
俺が折れることだけは許さない。
苦しいのは、きっと俺だけじゃない。
聖女もきっとそうなんだ。
いつか、言葉にして聞いてみたいものだな。
──聖女からの『愛してる』を──。
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