13話『DAY2 ⑤【告白】』
──闇雲に走るしかなかった。
地下下水道のマップを持っているのは聖女だし、今はそんな余裕がないからだ。
山勘で来た道を引き返すしか方法がない。
急に体調がおかしくなるのは不自然だ。
何としてもでも、早く地上に上がらないといけない。
「……俺は足が速いんだ。すぐに医者を呼んでやる」
「無駄だよ……お医者さんにはどうにもならないから」
まだ意識はあったようだ。
しかし、聖女の言葉は意味深だった。
これは、病気ではない。
そう言いた気だ。
じゃあ、今聖女を蝕んでいる症状は何なのか。
その問いをする勇気も度胸だって何もなかった。
「ごめんね傭兵さん。私……今日で死んじゃうんだ」
「──はぁ!?──」
──今日で死ぬ?
──なんでそうなるんだよ。
ただ、聖女の魔法を使っただけじゃないか。
衝撃の告白に走る足が止まる。
そんな様子は微塵も無かったはずだ。
いや、あったのかもな。
この二日でしか判断は出来ないが、聖女の行動はあまりに積極的というか、ごく普通の女の子の思考とはかけ離れている。
だとするならば、不治の病の類なのかもしれない。
噂になってた婚約破棄も、この症状が起因しているのか。
考えるだけ、無駄だった。
「──死ぬなァァァァ!!」
止めた足を再び前に出して、地上に上がる為に駆け出した。
この時、俺の強固に蓋をした、表に出してはいけない心の中の『本物』を爆発させた。
「──好きだ、アリシア!!」
こんなにも、感情を揺さぶられるなんて思ってなかった。
声を荒げることなんて、普段の俺なら絶対にしない。
もう心の制御なんて出来ないし、洗いざらいブチ撒けることしか考えられなかったんだ。
意識が薄れいく聖女に、ありったけの心のうちを明かした。
──サラサラの銀髪が好きだ。
──見つめてくるその紅い瞳が好きだ。
──照れた時に、少し赤くなる頬が好きだ。
──からかってくるところも好きだ。
──無邪気で子供のような笑顔も好きだ。
──真剣な横顔も好きだ。
──ちょっと、拗ねるのも可愛いくて好きだ。
──小さく柔らかくて、凍りついた俺の心を溶かすぐらい温かい、そんなアリシアの手も大好きだ。
聖女の全て、ありとあらゆる、仕草と声が、俺は大好きなんだ。
「──あり……がとう。宝物がまた増えちゃった」
「この気持ちに嘘はない。俺は今日まで誤魔化してたんだ。気持ちだけ伝わればそれでいい!」
「……うん、こんなに嬉しいことはないよ。名前をもっと呼んでくれる?なんか……眠くって……」
──何度も叫んだ。
喉が裂けそうに、焼き付きそうになるまで、アリシアと。
死んで欲しくない。
まだ、これからも君と笑いあっていたい。
君を失うことは、酷く心が痛いことだから。
なんでこうなるんだよ。
やっとだったんだ。
俺にとって、とても大事な『大切な人』がいる。
それが君なんだ。
いなくなるなんて……。
そんなの……許せる訳がない。
「──アリシア、好きだ。俺のそばにずっといてくれ」
苦し紛れの言葉だった。
顔をしわくちゃにして言ったところで、説得力は皆無なのかもしれない。
それでも、言わなきゃならない言葉だった。
「私も……傭兵さんのそばに……ずっといたいよ」
「──アリシア!?」
──意識が無くなった。
気絶か……もう手遅れなのか。
脈の確認をしたら、確かな鼓動を感じた。
まだ、アリシアは生きている。
俺の一世一代の愛の告白は、確かに彼女の心に響いていた。
俺は、しっかりと聞きたいのだ。
この告白の結末を──。
必死に駆けて、地上の入り口にまで辿り着く。
恥じらいも、悔いも、後悔も、そんなものを残しても何にもならない。
伝えなければ伝わらない。
また、俺は聞きたいのだ。
ニカっと戯けながら『傭兵さん』と喋る声を──。
地上に上がってこれた。
目指すは医者である。
もう深夜になっていたがお構いなしだ。
街中の病院を周り、まだ診察をしている医師を探す。
数件周り、ようやく診察が出来る場所を見つけた。
「──連れが意思を失った」
それだけ伝えて、医師に見てもらうこと数時間。
意外な結果だった。
「どこも悪くないけどねぇ〜。なぜか全然起きないけどそんなに疲れてたの?魔力切れ?」
「──はいっ!?──」
俺はまた、からかわれていたのかもしれない。
聖女は至って健康であり、死ぬだとか、そんなことはないとのことだった。
──騙したな、アリシア!
起きたら、またからかわれるんだろうな。
考えただけで、胃が痛い。
今回の依頼はこれで終わりだろう。
俺の最後の仕事だ。
聖女を宿屋まで連れて帰り、ベッドへ寝かせた。
寂しくならないように、日が明けるまで、ずっと聖女の手を握っておくことにしよう。
お読みいただき、ありがとうございました!
本日は、20時頃に投稿します。
章完結、タイトルも回収しますのでよろしくお願いします。
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、『ブックマーク』と下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!
※感想、レビュー等、お気軽にお願いします。




