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記憶が2日で消えてしまう聖女様の傭兵は忘れられた数だけ愛の告白をすると誓った。【1章完結】  作者: 久方久米


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11話『DAY2 ③』


 楽しい時間も終わりを告げようとしていた。


 最深部に辿り着いたからだ。


 奥の様子を察するに、コカトリスは、今はぐっすりと眠っている。


 そのまま眠ってくれているなら、始末も楽になるのだが、攻撃をすると今にでも起きそうだ。


 聖女様といえば、隅っこで膝を抱えてガクブルと震えていた。


 これからだというのに、締まりが無いなとつくづく思う。


 「めっちゃ怖いですよ!?」


 「……魔獣だからな」


 「傭兵さんはあれを本当に倒せるんですか?」


 「……倒せなきゃこの仕事やってないだろ」


 確かに魔獣との戦いには慣れている。


 問題は、聖女だ。


 聖女は、自分の身を守る術を持っていない。


 コカトリスの攻撃に気を取られていたら、呆気なく殺されてしまうだろう。


 ここまで苦戦しないんだけどな。


 聖女を抱えたままの、命がけの戦闘が始まる。


 「一人にさせられないから、抱えたまま戦うぞ」


 「えっ、ちょ……何でお姫様抱っこなんですか!?」


 「首に手を回せ。体は左腕一本で支えてやる」


 「方法を聞いてる訳じゃないです!」


 「……そんなに死にたがりだったのか?」


 「はいはい、そうですね。一人は危ないですもんね!」


 安全に戦う為には、必要だからな。


 手でも握らせておいて、落ち着いてもらうことにした。


 「……ずるいですよ傭兵さん」


 「……案外楽しいかもしれないぞ?」


 軽口を叩たいてやった。


 緊張を和らげるためだったけど、このやり取りも、もはや普段通りだったから必要なかったのかもな。


 意を決して、俺はコカトリスに立ち向かった。


 「──ギェェェェ!」


 殺気に反応して、鳴き声を放ちながら、目を覚ましたらしい。


 寝ぼけているなら助かったが、起床してすぐに、コカトリスの強酸が襲いかかる。


 初撃を軽快かつ、容易く回避した。


 攻撃をするモーションが単純だ。


 強い魔物だが、知能があまり高くない。


 向かってくる外敵に、毒やら、強酸やらを、雑にぶつけてくるだけだ。


 そして、戦闘をしている場所にも助けられていた。


 大型の鳥の魔獣であるから飛ばれるのが、それなりに厄介でもある。


 この地下下水道ならば、話しは別だ。


 狭い通路であり、最深部は天井が低い。


 行動を制限させるには、うってつけだった。


 「──傭兵さん、攻撃が来ます!」


 死角の攻撃は、聖女の指示を貰って攻撃を回避する。


 上手く連携が取れていた。


 「なんで傭兵さんは、死角からの追撃三連発攻撃が避けられるんですか!?」


 「……避けなきゃ死ぬだろ。アリシアが」


 「方法じゃないってば!」


 「……山勘だ」


 「戦闘センスの化け物ですね傭兵さん」


 若干、聖女が引いていた。


 当たり前のことをしているだけなのに、そこまで言わなくてもいいだろう。


 攻撃が来るタイミングが分かっているから避けられる。


 それだけのことだった。


 ゆっくりと、回避しては前進。


 焦ることなく、じわじわとコカトリスとの、距離を詰めていく。


 そうして、コカトリスとの間は、ゼロ距離に達して擦り寄ることに成功した。


 「──ギェェェェ!?」


 魔獣もなんでこんなにも接近されているのかが、理解出来ていないらしい。


 驚きのあまり、ジタバタしていた。


 「──先に目を潰さなきゃな」


 コカトリスの能力は別にある。


 見た者を石化させる呪いだ。


 近寄っただけでは、何も解決しない。


 小型ナイフを取り出して、逆手にクルッと持ち替えた。


 そのまま、魔獣の目玉を一突き。


 右と左の順で手際良く、えぐり出す。


 視界を奪われた魔獣は、もうただのデカい鳥同然だった。


 始末するのが楽になってしまったな。


 ケリをつけるのなら今だろう。


 コカトリスの頸動脈(けいどうみゃく)をナイフで一閃した。


 そして、意識を失い、大量の出血のうち、絶命させた。


 「……ふぅ……」


 大仕事を終えて、呼吸も落ち着いた。


 下手な仕事をしていたら、もしかしたら死んでいたかもしれなかったからな。


 あるいは……聖女を……。


 あまり考えたくはなかった。


 「どちらが化け物か分かりませんね!」


 聖女様は、驚きはしつつも、ずっと眼をキラキラさせながら、戦闘を眺めていた。


 最前線の特等席だったからな。


 さぞ、スリルのある体験が出来たであろう。


 「戦う傭兵さんは素敵だった」


 一切の曇りない眼で聖女が呟く。


 慣れないツラで少し吹き出してしまった。


 「急にどうした。様子が変だぞ」


 「見惚れてたんですよ。なかなか見られる戦いじゃないですからね」


 「……物好きなんだな」


 「そうですよ。私は物好きな女なんです」


 「そりゃ、結構。戦闘も終わったんだ。早く降りてもらえないな?」


 「いや……もう少し……このまま……」


 聖女が服にしがみついて離れてくれなかった。


 少し俯いていて、名残り惜しそうにしている。


 聖女がそんな顔しないでくれよ。


 俺自身も今の時間が少し、名残り惜しくなった。



お読みいただき、ありがとうございました!

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