表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
24/30

24_魔物討伐と転落


 一方そのころ、メイジーは魔塔研修の一環として、魔物討伐に同行していた。屋根のない移動馬車で人の姿をしたセランが、「手を出せ」と言うので、メイジーは素直に従う。


「何?」

「それ、持っとけ」


 渡されたのは、魔法少女の変身アイテムのような、キラキラしたハートの飾りがかわいい腕輪だった。


「真ん中のハートを押すと、俺の魔力を供給できる」


 このハート型の魔道具は魔法石でできているらしく、セランはこの中にエネルギー体として入ることが可能だと説明した。

 つまり、今まではぬいぐるみの姿か青年の姿でメイジーと一緒にいたが、このアイテムだけで契約魔法の有効範囲にいられるということだ。


 カチ、とハート型のボタン押すと、セランは光の塊となって、腕輪に吸い込まれていく。この魔法石への出入りは、スイッチの他にセランの意思でも自由に行えるらしい。


「こんな便利なアイテムがあるなら、もっと早く言ってくれたらいいのに」

「この魔法石は貴重だし、魔道具を作る技術者が少ないんだ。手に入れるのに苦労したんだぞ」

「ふうん」


 メイジーは「ありがとう」とお礼を言って、腕輪を付けた。

 それから、魔物が出没したという森に到着する。


「報告では、食虫植物とトカゲのような爬虫類型の上級魔物が出没するらしい。今日の僕たちの役目は、魔術師団が上級魔物を倒す補助をすること。いいね?」

「はい」


 魔術師たちと一緒に歩くメイジーに、ギースが言う。


 本来、魔物討伐は各地の魔術師団と騎士団が合同で行う。

 魔塔で働く魔術師は研究が専門で、どんなに優秀でも戦闘に参加しない。しかし、例外的に、希望者は定期的に研修に参加し、魔物討伐に協力することがある。


「緊張してる?」

「初めての魔物討伐なので」

「はは、リラックスリラックス。後ろから援助魔法をかけてるだけでいいから」


 世界樹の邪霊が解き放たれれば、オスニエル王国は大混乱に陥る。

 魔術師団も機能しきらず、大量の魔物が街で暴れて甚大な被害をもたらすのだ。


 すると、ギースがどこか険しい表情を浮かべる。


「それにしても、ここ最近は以前に増して魔物の活動が活発化している。邪霊の影響かな」

「恐らく」


 メイジーは小さく頷き、枯葉が絨毯のように広がる土を踏みしめ、前に進んだ。


「あそこだ」


 騎士の誰かがそう呟いた先に、廃墟が佇んでおり、そこに大型の爬虫類のような魔物が三体、姿を現した。


 爬虫類型の上級魔物の周りに、食虫植物がうごめいていて、近づくことができない。

 食虫植物も魔物の一種で、中級ランクに位置付けられる。

 粘液をまとっていて棘があり、所々に口があって、鋭い牙が生えていた。


「――炎よ」

「――氷よ」


 魔術師たちが魔法で食虫植物の蔦を退けようとするが、切ってちぎって燃やしても、すぐに再生して伸びてくる。

 わずかにできた隙間から騎士が奥に進み、トカゲの上級魔物と戦うが、食虫植物のせいで動きづらそうだ。


「これじゃ、キリがないな」


 ふとギースがこぼした言葉に、メイジーが共感する。それと同時に、今の自分の実力を試してみたくなった。


「私にも協力させてください」


 そう言って左手をかざし、複数の呪文を唱え始めると、仰々しい魔方陣が空中に無数に浮かび上がり、そこから氷の塊が現れ、食虫植物と上級魔物を一斉に貫いていく。氷が触れた部分が一瞬で凍っていった。


(食虫植物に再生する性質があるなら、再生する隙を与えなければいいだけ)


 今度は右手をかざして、火魔法の呪文を唱える。すると今度は頭上に赤みを帯びた魔法陣が現れ、炎が食虫植物をしゅうう……と焼き尽くしていく。


「なんだあれ……本当に学生のレベルか?」

「魔力量も技術も相当のものだ」


 メイジーの攻撃に、騎士も魔術師も一瞬気を取られる。

 氷と火のふたつの属性を組み合わせた魔法で、食虫植物は跡形もなく消えた。そして、上級魔物の三体も動きが鈍っている。


「今です!」


 メイジーの声が辺りに響き、このチャンスを逃すまいと、騎士たちが一斉攻撃を仕掛ける。

 また、自分は援護に徹すると言っていたギースだったが、「メイジーちゃんに負けてられないね」と軽く笑いながら、うちの一体を氷の槍で貫いて倒してしまった。


 無事に三体の魔物を倒し終わると、安心した空気が流れる。


(終わったのね)

「よかった」


 安堵して小さく息を吐いた直後、魔物に向けられていた注目が、メイジーに向けられる。そして、あちこちで賞賛の声が上がった。


「今の魔法は一体なんですか……!?」

「これほどの威力は見たことがありません」


 予想以上の反応に、メイジーを思わず目を瞬かせる。


「いえ、そんな……」


 謙遜して一歩後に後退したとき、何かが足に絡みついてよろめく。

 足元を見ると、食虫植物の蔦だった。まさかまだ、残っていたとは思わなかった。全身の血が引いていくのを感じた瞬間、足を引っ張られる。


「メイジーちゃん危ない! そっちは……」


 近くにいたギースがこちらに手を伸ばし、メイジーも咄嗟に手を伸ばしたものの、掴み損ねてしまう。

 ふわりと身体が傾き、宙に浮く。メイジーたちの後ろは崖になっていたのだ。嫌な浮遊感を感じたあと、メイジーは崖の下に落ちていった。


「きゃあぁぁぁっ……」


 メイジーは悲鳴を上げ、落下しながら思案を巡らせた。


(どうしよう、どうしよう。結界魔法? 風魔法? それとも植物魔法? こんなときどうしたら)


 すっかり動揺してしまい、魔法を使う余裕がない。

 せっかく掴んだやり直しの人生も、こんなにあっけない形で終わってしまうのだろうか。

 怖くなって、ぎゅっと瞼を閉じたとき、腕輪の装飾がピカッと光り、上から声が降ってきた。


「ったく。俺の主は世話が焼けるな」

「……! セラン……!」


 セランはメイジーの腕を掴んでぐいっと引き寄せ、そのままメイジーを包み込むように抱き締めた。そして、耳元で囁く。


「しっかり掴まっていろ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ