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世界最強の神獣たちを育てた飼育員、百年後に目覚めたら全員俺の家に住み着いた ~竜王も神狼も俺の前では昔のままです~  作者: てへろっぱ


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第51話 百年前の保存結界、俺が眠る予定は「最長七日」だったらしい

 ライカが次の休暇日を決めた翌朝。


 我が家では、珍しく六人全員が朝食の席についていた。


 正確には、リヴィだけは食卓の横まで引いた水路に浸かっているので、「席についている」と言っていいのか分からない。


「ライカ、次の休み何するの?」


 果物を切りながらルビィが尋ねると、ライカは少し考えたあと、真面目な顔で答えた。


「何もしない」


「つまらなくない?」


「休暇とは、何もしなくてもよいものだとレオンに教えられた」


「それはそうだけど」


「まずは一日、それを実践する」


 まるで新しい修行でも始めるような言い方だ。


「昼寝する?」


 シロが聞く。


「それは何かをしていることにならないか?」


「ならない」


「そうなのか」


「ライカ、お前は休むことを難しく考えすぎだよ」


 俺が言うと、本人は納得しきれない様子だった。


 その隣では、フェニアが昨日から自分の部屋へ置いている小さな木箱について、ルビィから質問攻めにされている。


「本当に一枚だけ残したの?」


「はい」


「今度見せて!」


「手を洗ってからでしたら」


「昨日も洗ったよ!」


「昨日の手で今日触らないでくださいませ」


「そこまで汚れてないよ!?」


 フェニアが百年前の羽根を一枚だけ残し、シロは待つためだった丘を純粋な昼寝場所として使えるようになり、リヴィの海では人々がまた泳ぎ始めた。


 ミコの神殿では、本人から正解を授かるのではなく、自分たちで考えた上で相談するというやり方が少しずつ広まっているらしい。


 ルビィの祭礼も、今年から「捧げる果物」ではなく「皆で食べる果物」へ変わった。


 百年間続いたものが、少しずつ形を変えている。


 俺が戻ったから全部変わった、などと思うつもりはない。


 六人が自分で望んだからだ。


「レオン」


「ん?」


 ミコが俺を見ていた。


「先ほどから笑っておられますが」


「そう?」


「はい」


「何か面白い?」


 ルビィまでこちらを見る。


「いや。お前ら、ちょっと変わったなと思って」


 六人の動きが止まった。


「どこが!?」


 ルビィが最初に反応する。


「ルビィは……果物食べる量はあんまり変わってないな」


「そこじゃない!」


「シロは昼寝が増えた」


「前から」


「フェニアは羽根を捨てられるようになった」


「元々捨てたかったのです」


『私はー?』


「人間を海に入れるために説明を頑張った」


『いっぱい喋ったー』


「あれでいっぱいなのか……」


 リヴィは満足そうなので、それ以上は言わない。


「ライカは寝るようになった」


「まだそこまで変わってはいない」


「一時間昼寝した」


「それを全員に報告するのはやめろ」


「ミコは分からないって言えるようになった」


 最後にミコを見ると、九本の尻尾が一度だけ揺れた。


「それは褒めてくださっているのでしょうか」


「褒めてるよ」


「でしたら受け取っておきます」


 昔なら、六人を育てるのは俺の仕事だった。


 今は違う。


 百年生きた六人は、自分で変わる。


 俺がしていることと言えば、たまに話を聞き、飯を作り、変なことをしたら注意するくらいだ。


 それでも。


 こうして同じ食卓にいるだけで、俺には十分だった。


 その時。


 玄関の呼び鈴が鳴った。


「誰だろ」


 今日は誰か来る予定だっただろうか。


 ミコを見る。


「私は何も手配しておりません」


「最初にミコ疑うの普通になってきたな」


「不本意です」


「土地を勝手に買った前科があるからな」


「もう反省いたしました」


 本当だろうか。


 玄関へ向かい、扉を開ける。


 そこにいた人物には見覚えがあった。


「エドガーさん?」


「ご無沙汰しております、レオン・ハルト殿」


 王立文書院副院長、エドガー・ベルム。


 百年前の育児日誌を国宝として公開する前に、本人たちへ聞くべきだと俺たちと話し合った人だ。


 今日も大きな鞄を抱えている。


「また日誌?」


「いいえ」


 そう答えたエドガーの顔は、以前より少し硬かった。


「本日は、別の資料についてご確認いただきたいことがございます」


     ◇


 居間へ通す。


 六人もエドガーの顔を覚えていたらしく、以前ほど緊張させることはなかった。


 もっとも。


 白銀神狼が床に寝転び、炎竜皇が果物を食べ、海皇が水路から顔を出している居間へ慣れろという方が無理なのかもしれない。


「どうぞ」


 フェニアが茶を出す。


「て、天鳳様直々に……恐縮です」


「今日はただの客人ですから、お気になさらず」


「努力いたします」


 前にも似たようなやり取りをしていた気がする。


 茶を一口飲んだあと、エドガーは鞄から細長い箱を取り出した。


 それ自体は新しい。


 中に古い紙が何枚か入っている。


「以前、《王立神獣育成所》関係の資料を再整理したことはお伝えしましたでしょうか」


「育児日誌が見つかった時に聞いた気がします」


「はい。日誌の発見後、文書院では育成所関連資料の分類を全面的に見直しております」


「また俺の恥ずかしい手紙が出てきた?」


「今回は違います」


「良かった」


「レオン」


 ルビィが横から口を挟む。


「私たちの恥ずかしい記録は読んだのに、自分のは嫌なの?」


「当たり前だろ」


「ずるい!」


「何がずるいんだよ」


 エドガーが咳払いする。


 話を戻そう。


「今回見つかったものは、育成所そのものではなく、旧王宮営繕局の保管資料でございます」


「営繕局?」


「王国施設の建築、補修、魔導設備の管理を担当していた部署です」


 エドガーが一枚目を出す。


 紙の上部には古い王国印。


 その下には、


《王立神獣育成所・緊急設備定期点検記録》


 とあった。


「保存結界?」


 紙の途中に見覚えのある言葉を見つけた。


「はい」


 エドガーの表情がさらに硬くなる。


「レオン殿が使用されたと考えられる、緊急保存結界についての記録です」


 居間の空気が変わった。


 ルビィが果物を置いた。


 シロが身体を起こす。


 ライカの視線は完全に書類へ向いている。


 俺も無意識に姿勢を正した。


「見つかってなかったんですか?」


「育成所側の資料は大半が失われております。ただ、設備を外部から整備していた営繕局側に控えが残っていたのです」


「百年間?」


「別の施設の図面に混ざっておりました。育児日誌が発見されなければ、育成所関連資料として再確認されることもなかったでしょう」


 百年前の紙。


 俺が眠ることになった設備について書かれている。


 嫌な感じはしない。


 ただ。


 自分の記憶の一部が、また紙の向こうから出てくるような妙な感覚がした。


「読んでも?」


「もちろんです。そのためにお持ちしました」


 最初は設備の規格だった。


 魔力容量。


 耐久性。


 外部衝撃への防御性能。


 保守周期。


 専門的なところは俺には分からない。


「昔の保存結界って、どういうものだったの?」


 ルビィが尋ねる。


 俺は少し考えた。


「怪我人をすぐ動かせない時とか、外が危険で避難できない時とかに、一時的に中の時間を遅らせて守るものだったと思う」


「長く眠るためじゃないの?」


「俺の記憶では違う」


 当時の俺も設備担当ではない。


 細かい仕組みまでは知らなかった。


 育成所には緊急設備として置かれていて、使い方だけ教えられていた。


 襲撃の日。


 俺は仔たちを逃がしたあと、それを使った。


 そして。


 次に目を開けた時、百年後だった。


「ここです」


 エドガーが一か所を指さす。


 読む。


《標準連続稼働時間 二十四時間》


 その下。


《非常時最大稼働時間 百六十八時間》


「百六十八……」


 頭の中で計算する。


 一日二十四時間。


 七日。


「一週間?」


「はい」


 エドガーが頷いた。


「当該設備の設計上、内部に人間を保存できる時間は、最長七日間です」


 誰も喋らなかった。


 俺はもう一度読む。


 見間違いではない。


 七日。


「……でも俺、百年寝てたぞ」


「そこが、今回文書院から確認したかった点です」


「記録が間違っている可能性は?」


 ミコが静かに尋ねた。


 さっきまで柔らかかった表情が消えている。


「私どもも最初にそれを疑いました」


 エドガーが別の書類を出した。


「同型設備の仕様書が三施設分残っております。いずれも最大百六十八時間です」


「延長できないのですか?」


 フェニアが聞く。


「外部から魔力を供給し続ければ?」


「通常の方法では不可能とされています」


 ライカの声が低くなる。


「通常の方法では?」


「理論上、保存対象へ流れる時間そのものをさらに遅延させる改造は可能だったようです。ただし、それは緊急設備の目的を超えます」


「誰かが改造したってこと?」


 ルビィが言う。


 エドガーはすぐには頷かなかった。


「そこまでは判断できません」


 正しい答えだ。


 まだ紙が見つかっただけ。


 俺も慌てて結論を出す気にはならなかった。


「他には?」


「自動解除について記載がございます」


 読む。


《外部危険度低下後、自動解除》


《自動解除不能時、外部操作盤から解放可能》


《百六十八時間到達時、安全機構により強制解除》


「強制解除?」


「はい」


「なら七日経ったら、何があっても俺は外に出るはずだった?」


「仕様上は」


 俺は椅子へ背中を預けた。


 百年。


 七日。


 差が大きすぎる。


「壊れたんじゃない?」


 ルビィが言う。


「襲撃だったんでしょ? 何か当たったとか」


「可能性はある」


 ライカが即座に答える。


「だが、単純に破損しただけなら保存機能そのものも失われる可能性が高い。百年間対象を生存させたのなら、少なくとも内部機能の大半は維持されていたことになる」


「ライカ、詳しいね」


「軍用の保存設備なら現代にもある。原理は違うが、故障時の考え方は似ている」


 今度はミコが書類を手に取る。


「エドガー様。点検日はいつですか?」


「襲撃のおよそ三週間前です」


「結果は?」


「異常なし」


 全員がまた黙った。


 襲撃の三週間前には正常だった。


 それでも。


 俺は百年間眠った。


「レオン」


 シロの声がした。


「何?」


「知ってた?」


「七日までって?」


「うん」


「……たぶん」


 記憶を探る。


「正確な数字は覚えてなかった。でも、一週間くらいで出られる設備だった気はする」


「じゃあ」


 シロの耳が伏せられる。


「レオンも、すぐ戻ると思ってた?」


 その質問が一番刺さった。


「……ああ」


 たぶん。


 あの日の俺は。


 六体と百年別れるつもりなどなかった。


 永遠の別れを覚悟していたわけでもない。


 仔たちを逃がす。


 危険が収まるまで、自分も生き延びる。


 それだけだったはずだ。


「七日なら」


 ルビィが小さく言う。


「私たち、待てたよ」


「ルビィ」


「七日なら……毎日待ってても、八日目に帰ってくるんでしょ?」


 俺は答えられなかった。


 ルビィ自身も、答えを求めて言ったわけではないのだろう。


 百年待った。


 でも本当は。


 七日で終わるはずだった。


 その事実を今日初めて知った。


     ◇


 しばらくして。


「よし」


 俺は手を叩いた。


 六人がこちらを見る。


「まだ何も分かってない」


「でもレオン!」


 ルビィがすぐ声を上げる。


「気持ちは分かるよ。でも、今あるのは百年前の仕様書だけだ」


「誰かが何かした可能性がある」


 ライカが言う。


「あるかもしれない。ないかもしれない」


「調べるべきです」


 今度はミコ。


「それは賛成」


 そこで一度区切る。


「でも世界中の軍とか神殿とか動かすなよ」


 六人が黙った。


 図星らしい。


「ルビィ」


「まだ何も言ってないよ!」


「炎竜皇として調査隊出そうとした?」


「……ちょっとだけ」


「駄目」


「ライカ」


「私は国家機密資料への照会を――」


「駄目」


「まだ申請していない」


「ミコ」


「百年前の関係者およびその子孫、当時の土地所有記録、資材購入履歴、魔導技師の雇用記録を――」


「もう調べ始めてるじゃん!」


「まだ手配前です」


「頭の中では全部組んでるだろ」


「はい」


「フェニアは?」


「私は比較的冷静です」


「本当?」


「まず神殿所蔵資料を――」


「同じだよ!」


 シロを見る。


「シロは?」


「探す」


「何を?」


「壊した奴」


「犯人いるって決めるな!」


 最後にリヴィを見る。


『私はー』


「うん」


『みんなが調べるなら寝て待つー』


「お前だけ平常運転すぎる」


『急いでも百年前だよー』


 ……正論だった。


 全員がリヴィを見る。


『何ー?』


「いや」


 俺は笑ってしまった。


「今日、一番まともなのリヴィかもしれない」


『やったー』


「褒められておりますか?」


 フェニアが疑問を挟む。


「一応」


 確かに。


 百年前の出来事だ。


 今この瞬間に誰かが危険なわけではない。


 急いで国中をひっくり返す必要はない。


「調べよう」


 俺は改めて言った。


「ただし、一つずつ」


 エドガーが持ってきた資料。


 王立文書院に残っているもの。


 必要なら、六人がそれぞれ持っている記録も確認する。


「俺も知りたい」


 百年眠った理由。


 育成所が襲われた理由。


 その二つが同じ問題なのかどうかすら、まだ分からない。


「でもさ」


「何でしょう?」


 ミコが聞く。


「百年ぶりに家族揃った途端、昔の犯人探しだけして暮らすのは嫌だよ」


 六人が静かになる。


「俺は仕事も行く。飯も作る。お前らも休む時は休む。祭り行きたきゃ行くし、昼寝もする。海でも遊ぶ」


 調べる。


 でも。


 今の生活を全部それに使うつもりはない。


「百年前より、今の方が大事だから」


 言ったあと。


 六人の視線が妙に集まっていることに気づいた。


「何?」


「レオン」


 ルビィがにやけている。


「今の、もう一回」


「言わない」


「何で!?」


「また記録する気だろ」


 ミコを見る。


 目を逸らされた。


「紙出そうとしてたよな?」


「気のせいです」


「手に筆持ってるぞ」


「偶然です」


「そんな偶然あるか!」


 少しだけ、空気が元に戻った。


 それでいい。


     ◇


 エドガーは他にも数枚、関連資料を持ってきていた。


 設備の修理履歴。


 交換部品の記録。


 定期点検担当者の署名。


 俺が見てもよく分からないものが多い。


「専門家にも見てもらう?」


「その予定です。ただし、レオン殿と六大神獣の皆様へ先にお伝えすべきと判断いたしました」


「ありがとうございます」


「以前、教えていただきましたので」


 エドガーが少し笑う。


「当事者がいるなら、まず本人へ聞く、と」


 ちゃんと続いている。


「それで、これが最後なのですが」


 一枚だけ。


 他より小さな紙が出てきた。


「何?」


「緊急保存結界の外部操作盤に関する、部品交換記録です」


 日付を見る。


 襲撃の四日前。


「近いな」


 ライカが低い声で言う。


「はい」


 交換された部品は一つ。


《外部解除鍵》


 俺は文字を見る。


「鍵?」


「保存結界を外から開ける際に使用する認証部品です」


「壊れてたの?」


「記録上は、《経年劣化による予防交換》となっております」


「普通の整備?」


「それだけなら」


 エドガーの言い方が引っかかった。


「何かある?」


「交換前の部品番号と、交換後の部品番号が記載されております」


「うん」


「ですが」


 指先が、交換後の番号を示す。


「この番号に該当する部品が、当時の王国規格に存在しません」


 今度こそ。


 誰も言葉を挟まなかった。


「存在しない?」


「少なくとも、営繕局の正式な部品台帳にはございません」


「書き間違いじゃ?」


「その可能性もあります」


 エドガーは冷静だった。


「転記ミス。現場独自の管理番号。後世に台帳の一部が失われた可能性。考えられる理由はいくつもございます」


 ミコが小さく頷く。


「現段階で不正な交換だったとは断定できない、と」


「その通りです」


 でも。


 襲撃の四日前。


 外から保存結界を解除するための鍵が交換された。


 その番号が、公式記録にない。


 そして四日後。


 俺はその保存結界へ入り。


 本来なら最長七日で出るはずが。


 百年後まで眠り続けた。


「……出来すぎてるな」


 俺が言うと、ライカがすぐ反応した。


「レオン」


「分かってるよ。まだ決めつけない」


 百年前。


 何かがあった。


 それは最初から分かっていた。


 育成所が襲われたのだから。


 ただ。


 今日初めて。


 その「何か」が、俺が保存結界へ入る前から始まっていた可能性が出てきた。


     ◇


 エドガーが帰ったあとも、六人は居間に残っていた。


 誰もすぐには普段のことへ戻らない。


「レオン」


 フェニアが静かに尋ねる。


「怖くはございませんか?」


「何が?」


「知ることが」


 少し考えた。


「怖くないって言ったら嘘かな」


 百年前。


 俺が知らなかったこと。


 忘れていること。


 知れば今までの記憶が変わるかもしれない。


「でも、知らないままの方が嫌だよ」


 それに。


「今は一人じゃないし」


 言った瞬間。


 しまったと思った。


 六人の表情が変わる。


「レオン!」


 ルビィが立ち上がった。


「だからもう一回は言わないぞ!」


「まだ何も言ってない!」


「顔で分かる!」


「記録したいだけ!」


「やっぱりじゃん!」


 ミコはすでに紙を出していた。


「正確な発言記録は後世のために必要かと」


「国宝にする気か!」


「家族内資料です」


「余計に嫌だよ!」


 フェニアまで笑っている。


 シロは俺の隣へ来て、いつものように袖を掴んだ。


「一人じゃない」


「分かったから復唱しなくていい」


「うん」


 そう答えながら、離れない。


 ライカはさっきまでの険しい顔を少しだけ緩めた。


「調査は急がない。だが確実に進めよう」


「うん」


『疲れたら休むー』


「それ、お前が言うと説得力あるな」


『任せてー』


「そこだけは世界一だな」


 笑いが起きる。


 百年前のことを調べ始めても。


 たぶん我が家はこんな調子なのだろう。


 それでいい。


 あの日。


 俺が緊急保存結界へ入った時。


 予定では、長くても七日だった。


 それなら本当は。


 一週間もすれば。


 また六体へ飯をやり。


 シロを撫で。


 フェニアを風呂へ連れていき。


 リヴィを水から出そうとして諦め。


 ライカが無理をしていないか見て。


 ミコが妙な取引を始めていないか注意し。


 ルビィに果物を食べすぎるなと言っていたはずだった。


 その七日が。


 百年になった。


 誰が。


 何のために。


 どうやって。


 今は、まだ分からない。


 でも一つだけ。


 今日知って良かったと思えることがあった。


 百年前の俺は。


 六人と別れるつもりなど、最初からなかった。


 七日後には帰るつもりだったのだ。


 帰れなかっただけで。


「レオン」


「ん?」


 ルビィが、さっきまでとは違う静かな声で言った。


「七日で帰るつもりだったなら」


「うん」


「百年遅刻だね」


「……そうなるな」


「すごい遅刻」


「悪かったよ」


「じゃあ」


 ルビィが笑った。


「百年分、一緒にいないとね」


「計算おかしくない?」


「合ってる!」


「寿命考えろよ」


「私たち長いよ!」


「俺は人間だぞ!」


「じゃあ今からいっぱい!」


 結局、そうなるのか。


 シロも当然のように頷き、フェニアは笑い、ライカまで否定しない。


 ミコに至っては何か計算し始めている。


「ミコ、何計算してる?」


「レオンが百年分の遅刻をどの程度の密度で返済できるかを」


「返済扱いするな!」


『利息つくー?』


「つけるな!」


 百年前の謎。


 存在しない部品番号。


 七日のはずだった保存結界。


 考えなければならないことは増えた。


 それでも。


 今日も我が家は騒がしかった。


 たぶん。


 これくらいでちょうどいい。

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