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世界最強の神獣たちを育てた飼育員、百年後に目覚めたら全員俺の家に住み着いた ~竜王も神狼も俺の前では昔のままです~  作者: てへろっぱ


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第30話 世界最強の六大神獣、家事能力はだいたい壊滅していた



 翌朝、俺はいつもより少し早く目を覚ました。


 窓の外では世界樹の銀色の葉が朝日を受けてきらきらと光り、その根元では昨日集まってきた小型魔獣たちが何匹も丸くなって眠っている。庭の奥からはときどき小さな水音が聞こえ、リヴィの青い髪が水路の水面に浮かんでは沈んでいた。


 家の中も珍しく静かだった。ルビィたちはまだ起きていないらしく、今のうちなら落ち着いて準備ができそうだ。


「よし、今のうちに貼っておくか」


 俺は昨日の夜に考えておいた紙を居間の壁へ貼った。


《本日の家事当番》


 その下には、料理補助、掃除、洗濯、庭と魔獣の世話、買い出し、水回りと、ごく普通の家なら誰かが毎日やっているような役割を並べてある。


 国を治めたり、災害を止めたり、海を支配したりできる連中なのだから、このくらいは何とかなるだろう。


 そう思っていた。


 少なくとも、この時点では。


     ◇


「家事当番?」


 朝食を終えたルビィが、壁に貼った紙の前で首を傾げた。その隣ではシロがまだ眠そうな顔で文字を追い、フェニアは早くも嫌な予感でもしているのか、少しだけ眉を下げている。


 ライカだけは妙に真剣な表情で役割を確認していたが、ミコは紙を見る前から何か抜け道を考えていそうな顔だった。


「昨日も言っただろ。俺一人で六人分の世話をするのは無理だから、今日から家事は分担する。全部完璧にやれとは言わないけど、少しくらいは覚えてくれ」


「もちろん手伝うよ!」


 ルビィは元気よく胸を張ったものの、俺が料理補助の欄へ彼女の名前を書き込んだ瞬間、その勢いが少しだけ弱くなった。


「……料理?」


「補助だから大丈夫だ。野菜を切ったり、皿を並べたりするだけでいい。火だけは絶対に使うなよ」


「私、炎竜なのに?」


「だから使わせないんだよ。この前、鍋ごと真っ赤にしただろ」


「あれは少し火が強かっただけで――」


「鍋底が溶けかけてた」


「……今日は使わない」


 ようやく納得したところで、次はシロを見る。


「シロは掃除な。箒と雑巾を使って、普通にやること。風圧で埃を外へ吹き飛ばすのは禁止」


「分かった」


 返事そのものは素直だったが、尻尾が露骨に下がっている。


「掃除そんなに嫌?」


「嫌じゃない。ただ、箒が苦手」


「どうして?」


「尻尾に当たるから」


 なるほど。


 百年以上生きた神狼にも、普通の箒ならではの悩みがあるらしい。


「じゃあ掃く時だけ尻尾を少し上げればいいだろ。いい運動にもなるし」


「……疲れる」


「そこは頑張れ」


 渋々ながらも頷いたので、次はフェニアの番だ。


「フェニアは洗濯。水と石鹸を使って洗うこと。浄化の炎で一瞬、は駄目だからな」


「ですがレオン、私の浄化であれば衣類を傷めることなく、汚れだけを綺麗に落とせます。そちらの方が明らかに効率的では?」


「今日は効率を競う日じゃなくて、普通の家事を覚える日だ」


「しかし……」


「洗う」


「……はい」


 フェニアは昨夜、風呂へ行けと言われた時とよく似た顔をした。


 何でも能力で解決できるせいか、この連中は便利な力を禁止すると途端に弱くなる。


「ライカは庭と魔獣の世話を頼む。世界樹の下にいる仔たちの様子を見て、餌場を片づけて、怪我してる奴がいたら俺に教えてくれ」


「承知した」


「あと、勝手に訓練するな」


「何故そこまで付け加える?」


「お前、並んで座ってる大型魔獣を見ると部隊みたいに扱うだろ」


「規律を教えることは悪いことではない」


「庭の魔獣に隊列はいらないんだよ」


 ライカは少し不満そうだったが、とりあえず納得したらしい。


 最後はミコだ。


「ミコは買い出し。必要な野菜と卵を普通に店で買ってきてくれ」


「承知しました。では商会へまとめて発注を――」


「自分で店に行く」


「配達ではいけませんか?」


「駄目」


「では必要な店を買収し、安定供給できる体制を――」


「店を買うな」


 先回りして止めると、ミコは本当に少し残念そうな顔をした。


「では、一般的な買い物というものを体験してまいります」


「そうしてくれ。予算はこれな」


 小銭の入った袋を渡すと、ミコは中身を確認してしばらく黙り込んだ。


「……レオン、一桁ほど間違えておりませんか?」


「合ってるよ。今日は野菜と卵だけだから十分足りる」


「この金額で六人分を……?」


「普段お前が使ってる金額がおかしいだけだ」


 ミコは小銭袋を見つめながら、「世界は厳しいですね」と小さく呟いた。


 そして最後に、窓の外へ声をかける。


「リヴィ、お前は水回り担当な」


『もう水あるよー』


「そういう意味じゃない。水槽と水路の掃除、それから落ち葉を拾って、水桶が空いてたら補充しておいてくれ」


『ほとんど水の中?』


「ああ」


『やるー』


「お前だけ妙にやる気あるな」


『陸に出なくていいから』


「理由は褒められないけど、まあいいか」


 こうして役割は決まった。


 全員やる気はある。


 俺はそれだけで、少し安心して仕事へ向かった。


 やる気があることと、家事ができることがまったく別の話だと知るのは、その日の夕方だった。


     ◇


《もふもふ魔獣店ポッケ》での仕事を終え、俺はいつもの道を家へ向かっていた。


 今日は珍しく、仕事中には大きな事件がなかった。小型魔獣の耳掃除をし、老犬型魔獣の食事相談に乗り、午後には店長から百年後の魔獣についてまとめられた新しい図鑑まで借りられた。


 こういう日が俺の求めていた普通なのだ。


「家の方も平和だといいんだけどな」


 口に出した瞬間、少し嫌な予感がした。


 角を曲がると家はちゃんと立っている。屋根もあるし、世界樹も倒れていない。水槽も壊れていない。


「よし。少なくとも大事故は――」


 安心しかけたところで、玄関の向こうから大きな物音が聞こえた。


 どん、と何かが倒れ、その直後にフェニアの慌てた声が続く。


「ルビィ、もう少し押さえてください!」


「押さえてるって! これ以上やったら割れるよ!」


「何してる!?」


 嫌な予感に耐えきれず、俺は玄関を勢いよく開けた。


 そして、言葉を失った。


 居間が泡だらけだった。


 床どころか廊下まで白い泡に覆われ、場所によっては俺の膝近くまで積もっている。泡の山の向こうから、ルビィがひょこっと顔を出した。


「あ、レオン。おかえり!」


「ただいまより先に、これ何!?」


 今度はフェニアが洗濯桶を抱えたまま姿を現した。


「洗濯をしていたのですが、少々石鹸の量を誤りまして」


「これを少々って言うのか?」


 床一面に広がった泡を指差すと、フェニアは少しだけ目を逸らした。


「最初は一つだけだったのです。しかし思ったほど泡立たなかったため二つ追加し、それでも足りない気がしているうちに、最終的には十二個ほど」


「入れすぎだよ!」


「百年前のものより一つ一つが小さかったので、同じ感覚で使ってしまいました」


「大きさだけで判断するな!」


 フェニアを叱っていると、泡の奥から大鍋を抱えたルビィが近づいてきた。


「私はちゃんと料理補助したよ!」


「本当か?」


「野菜も切った!」


「それは偉い。見せて」


 少し安心しながら台所へ向かった俺は、まな板の上を見てまた止まった。


 人参が一本。


 縦に真っ二つ。


「ルビィ、これだけ?」


「ちゃんと二つになってるよ?」


「切れてはいるけど、料理で言う『切る』はもう少し細かくするんだ」


「何等分?」


「料理による」


「難しい!」


 さらに玉ねぎを探すと、一つは丸ごと皮付きのまま置いてあり、その横には直径二センチほどの白い物体が転がっている。


「こっちは?」


「一個目の玉ねぎ。綺麗になるまで皮を剥いたら小さくなりすぎたから、二個目はそのままにしておいた」


「食べられるところまで全部剥いたのか……」


「えっ」


 ルビィが本気で驚いた顔をした。


 炎竜皇。


 料理能力。


 想像以上に低い。


「シロはどこ?」


 辺りを見回しても姿がない。返事もないので何度か呼ぶと、居間の隅に積もった泡の陰から銀色の尻尾だけが見えた。


「何してるの?」


「休憩」


 シロが顔だけ出す。


「掃除は?」


「半分までやった。でもフェニアの泡で全部見えなくなった」


「せっかく掃いたあとにこれか」


「うん。少し心が折れた」


 それは、まあ、少し気の毒だ。


「箒はちゃんと使えた?」


「三本壊した」


「どうして!?」


「力加減」


「またか……」


 我が家では家事をするだけで、普通の道具が次々と犠牲になっていくらしい。


     ◇


「ライカは庭か?」


「ここだ」


 外へ出ると、返事はすぐに聞こえた。


 そして俺は、今日一番理解に困る光景を見た。


 大型魔獣が三十匹ほど、世界樹の下に綺麗な五列を作って座っている。


「……ライカ、これは何?」


「餌を与える際に争いが起きないよう、待機位置を決めた。食事の順番も体格ごとに分けてある」


「それだけなら合理的だけど、この姿勢は?」


 俺が尋ねると、一頭の猪型魔獣が前脚を揃えてぴしっと胸を張った。


「生活指導だ」


「訓練するなって言ったよな?」


「訓練ではない。集団生活に必要な規律を教えているだけだ」


「その言い訳、誰に習った?」


 ライカは本気で悪いことをしていると思っていないらしい。庭そのものは綺麗になっているし、魔獣たちも喧嘩せず大人しくしている。


 今日はこれでいいことにしよう。


 敬礼らしき動作を覚え始めているのだけは、明日までに止めさせる必要があるが。


「ミコは?」


「お帰りなさいませ、レオン」


 声に振り返ると、家の横からミコが小さな紙袋を二つ抱えて歩いてきた。


「お、ちゃんと買ってきた?」


「はい。ご指定の野菜と卵です」


「店は買ってない?」


「買っておりません」


「商会も?」


「そちらも買収しておりません」


「偉いじゃん!」


 思わず頭を撫でると、ミコの身体が一瞬固まった。


「どうした?」


「……もう一度、お願いいたします」


「買い物ちゃんとできて偉い偉い」


 頭をぽんぽんと撫でてやると、九本の尻尾が一斉にふわっと広がった。


「そんなに嬉しい?」


「百年ぶりのお使いでしたので」


「仔狐の頃と変わらないな」


「それは言わないでください」


 照れたように笑うミコを見て、これなら今日一人くらいは合格だと思いかけた。


「お釣りもある?」


「もちろんです。ただ、少々価格について交渉させていただきまして」


「値切った?」


「店主様と話し合った結果、今後百年間、我が家への食材を原価で提供いただく契約を結びました」


「全然普通じゃない!」


「双方の合意は得ております」


「普通の買い物で百年契約なんて結ばない!」


 やっぱり駄目だった。


     ◇


 最後の希望を求めて水路へ向かうと、そこだけは驚くほど綺麗だった。


 落ち葉は一枚もなく、水槽の壁まで透明に磨かれ、水桶にもちゃんと水が補充されている。水路の中ではリヴィが得意そうに泳いでいた。


『レオン、できたー』


「お前すごいじゃん。今日一番まともかもしれない」


『えらい?』


「偉い偉い」


 褒めると、リヴィは水を外へ飛ばさないよう気をつけながら、水中で小さく一回転した。


 以前なら盛大に水を撒き散らしていたので、そこも少し成長している。


「よし。ここは文句なし」


『でも、ちょっとだけ増やした』


「何を?」


『水』


 嫌な予感がした。


「どこに?」


『世界樹の向こう』


 走って見に行く。


 そして。


 昨日まで何もなかった場所に、小さな池ができていた。


 小さいといっても、家よりは大きい。


「リヴィ」


『なーに?』


「家の決まりに『水路を勝手に延長しない』って書いてあるよな?」


『延長してないよ』


「じゃあこれは?」


『池』


「屁理屈覚えすぎだろ!」


『ミコに教えてもらった』


「ミコ!」


 少し離れた場所から、涼しい声が返ってくる。


「お呼びでしょうか」


「余計な教育するな!」


     ◇


 日が暮れる頃、俺はようやく家の中を片づけ終え、六人を居間へ集めた。


 泡は何とか流し、洗濯物は結局俺がすすいだ。ルビィが切った野菜も料理に使える形へ直し、シロが壊した箒は庭の隅へまとめてある。


 目の前に並ぶ六大神獣は、朝より少しだけ姿勢が悪かった。


「今日の反省会するぞ」


 俺がそう言うと、ルビィが恐る恐る背筋を伸ばした。


「まずルビィ。玉ねぎ一個を消滅させたのは駄目だけど、ちゃんと手伝おうとはしてたから、明日も料理補助を続けよう」


「またやっていいの?」


「ああ。最初からできる奴はいないし、俺が横で教える」


 ぱっと顔が明るくなる。


「シロは箒三本壊したけど、掃除そのものは途中までできてた。次はもう少し丈夫な道具を使おう」


「……うん。今度は壊さない」


「フェニアは石鹸十二個。次から分からない時は勝手に足さず、先に聞くこと」


「はい。次は一個から試します」


「半分で十分だよ」


「……難しいですね」


「何で洗濯がそんな高難度なんだ」


 フェニアが真剣に悩んでいる横で、ライカは妙に堂々としている。


「ライカは庭自体は合格。ただし、魔獣を軍隊みたいにするのは禁止な」


「軍隊にはしていない」


「明日『右向け右』を教えてたら庭当番を外す」


「……分かった」


「ミコは普通に買い物すること。百年契約は解除」


「明日、店主様と再度交渉してまいります」


「今回は契約なしで頼む」


「承知しました」


 最後にリヴィを見る。


「池は元に戻す」


『やだ』


「即答するな」


『もう魚住んでるよ』


「何?」


 窓から庭を見ると、本当に小さな魚型魔獣が何匹も泳ぎ始めていた。


「いつ来た?」


『さっき』


「早すぎない?」


『かわいいよー』


 しばらく池を見る。


 魚型魔獣たちは楽しそうだ。


 こういうのには弱い。


「……池は残す」


『やったー!』


「ただし、これ以上一センチも広げない。それが条件」


『はーい』


 また一つ、庭から普通が消えた気がする。


「それでレオン」


 ルビィが少し遠慮がちに尋ねた。


「家事当番って、明日もやるの?」


「もちろん」


 六人の表情が揃って曇った。


「何でそんな顔するんだよ」


「レオンがやった方が早い」


 シロが正直に言う。


「それは俺も分かってる。でも、百年前はお前らが仔だったから俺が全部やってたけど、今はもう大人だろ。俺がいない時も、ちゃんと生活できた方がいい」


 俺が一人ずつ顔を見ながらそう言うと、六人は少しだけ静かになった。


「それに、一緒に暮らすなら俺だけが全部やるより、みんなでやった方がいいだろ」


 最初に笑ったのはルビィだった。


「じゃあ、明日もやる!」


 シロの耳も上がる。


「箒、もう一回練習する」


「私は石鹸の適量を覚えます」


 フェニアも今度は素直に頷き、ライカは庭を任せろと胸を張った。


「隊列は作るなよ」


「努力する」


「努力じゃなくて禁止」


 ミコも「明日は市場価格で購入してまいります」と宣言し、リヴィは水路と池の掃除を担当すると嬉しそうに泳いでいる。


 家事能力そのものは、だいたい壊滅していた。


 それでも朝より少しだけ、この家で一緒に暮らす家族らしくなった気がした。


     ◇


 その夜、俺は地下の温泉に肩まで浸かりながら、ようやく一息ついていた。


 仕事をして帰ってきたあと、六人分の失敗を片づけ、家事を教え、夕食まで作ったせいで腕も脚も重い。


「飼育員って、こんなに忙しい仕事だったっけ……」


 昔の育成所も大変だったはずなのに、今の方が忙しい気がする。


 でも、不思議と嫌ではなかった。


「明日はルビィに包丁の使い方から教えるか。フェニアには石鹸の量も――」


 そこまで考えた時、壁の向こうから慌ただしい声が聞こえてきた。


「ルビィ、それは砂糖です! 全部入れないでください!」


「えっ、白いから塩かと思った!」


「シロ、味見は一回だけです。さっきから五回目です!」


「一口ずつだから」


「ライカ、包丁を軍刀のように構えないでください!」


「この方が手元が安定する!」


「ミコ、食材の追加発注は不要です!」


「不足する可能性に備えて――」


『水いるー?』


「リヴィは台所を水浸しにしないでください!」


「…………」


 嫌な予感しかしない。


 俺は湯船から立ち上がり、急いで服を着て台所へ向かった。


「何やってる!?」


 扉を開ける。


 六人が揃って振り返った。


 その中央。


 テーブルの上。


 皿に載っていたのは、何か真っ黒な物体だった。


「……これ、何?」


 尋ねると、ルビィがものすごく嬉しそうに笑った。


「レオンの夜食!」


「炭にしか見えないんだけど」


「まだ途中だから!」


「もう完成を通り越してるだろ!」


 よく見ると、全員の手や服には粉やら水やら何やらが付いている。どうやら俺が風呂へ入っている間に、六人だけで何か料理をしようとしていたらしい。


「急にどうしたんだ?」


 俺が聞くと、六人は顔を見合わせた。


 しばらくして、シロが少しだけ照れたように口を開く。


「レオン、いつも私たちのご飯作るから」


「今日は私たちが作ろうって決めたんだよ」


 ルビィが続け、フェニアも申し訳なさそうに真っ黒な夜食を見る。


「結果として、失敗してしまいましたが」


「次は改善する」


 ライカはもう再挑戦する気らしい。


「必要であれば専門家を――」


「ミコ、自分たちで練習するんだぞ」


「……はい」


『次は焦がさないー』


「リヴィは何担当だった?」


『火消し』


「もう焦げたあとだった?」


『うん』


「遅かったんだな」


『うん』


 俺はもう一度、皿の上の真っ黒な夜食を見る。


 たぶん食べたら身体によくない。


 いや、たぶんではなく確実に危険だ。


 それでも、こいつらが俺のために作ろうとしたことくらいは分かった。


「ありがとな」


 そう言うと、六人の顔が揃って明るくなった。


 だからこそ。


「でも、これは食べない」


「えええええ!?」


「身体壊す!」


「一口だけでも!」


「嫌だ!」


「百年ぶりの手料理だよ!?」


「百年を免罪符にするな!」


 その夜、俺の家では世界最強の六大神獣が作った、世界でたぶん一番危険な夜食を前に、食べるか食べないかでしばらく揉めることになった。


 少なくとも明日から。


 料理当番だけは。


 俺が必ず隣で見る。


 それだけは固く決めた。


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