表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強の神獣たちを育てた飼育員、百年後に目覚めたら全員俺の家に住み着いた ~竜王も神狼も俺の前では昔のままです~  作者: てへろっぱ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/18

第15話 海皇様、陸に上がる気がなさすぎる



「リヴィ」


『なーに?』


「どうして水槽から出ないの?」


『面倒』


「やっぱりか!!」


 俺は家より大きな水槽の前で頭を抱えた。


 水槽の中。


 青い髪の少女――海皇リヴィは、ぷかぷか浮かんでいる。


 服も青。


 髪も青。


 瞳まで青。


 見た目だけなら、かなり神秘的だ。


 ただし。


『ごはん』


「さっきからそればっかりだな!」


『おなかすいた』


「自分で魚捕れるだろ」


『今日はレオンのごはんがいい』


「…………」


 百年前もこうだった。


 自分でできるのに、俺がいると途端に甘える。


「何食いたい?」


『魚』


「お前が送ってきた魚あるぞ」


『あれ食べる』


「自分で捕ったやつじゃん」


『レオンが焼いたら別物』


「理屈が雑!」


 でもまあ。


 久しぶりに会ったんだ。


 飯くらい作ってやるか。


「待ってろ」


『うん』


 俺が家へ戻ろうとすると。


『レオン』


「ん?」


『どこいくの?』


「台所!」


『ここで作って』


「何で!?」


『見てたい』


「…………」


 水槽の向こうから。


 じーっ。


 リヴィが俺を見る。


「……分かったよ」


『やった』


 嬉しそうに水中でくるっと回った。


 その瞬間。


 ざばあっ!


「冷たっ!」


 水が盛大にこぼれた。


『あ』


「暴れるな!」


『ごめん』


「近所に迷惑だろ!」


『次から静かに喜ぶ』


「できるの?」


『…………たぶん』


「お前もその返事か!」


 もう信用しない。


     ◇


「で」


 俺は庭に簡易の竈を作っていた。


「何でお前らまで外にいるんだ?」


「リヴィだけレオンの料理を見られるのはずるい!」


 ルビィ。


「公平」


 シロ。


「私もお手伝いを」


 フェニア。


「お前は料理じゃなく風呂の準備しろ」


「どうして今それを!?」


 フェニアが一歩下がった。


「逃げるな」


「逃げていません」


「足が玄関向いてるぞ」


「偶然です」


「あとでな」


「…………はい」


 フェニアがしょんぼりする。


 水槽の中ではリヴィが笑っていた。


『フェニア、まだお風呂嫌い?』


「リヴィ!」


『百年経っても?』


「あなたに言われたくありません!」


『私はずっと水の中』


「それはお風呂とは違います!」


『似てる』


「違います!」


「はいはい、喧嘩しない」


 魚を捌く。


 普通の大きさ。


 昨日リヴィが頑張って捕ったらしい魚だ。


「お」


 身が綺麗だ。


「いい魚じゃん」


『でしょ?』


 リヴィが水槽の中で胸を張る。


「えらいえらい」


『!』


 にぱっ。


「水跳ねさせるなよ」


『…………』


 リヴィが両手をぎゅっと握る。


 身体をぷるぷるさせている。


「何してる?」


『静かに喜んでる』


「努力の方向がおかしい」


 焼く。


 香ばしい匂い。


 ルビィの鼻が動く。


「レオン」


「何?」


「私も食べたい」


「夕飯食っただろ」


「魚は別腹」


「この前肉も別腹って言ってたよな」


「別腹いっぱいあるから!」


「それただの大食い!」


 シロも魚を見る。


「……少し」


「お前も?」


「一口」


 フェニアまで。


「私も味見程度でしたら」


「結局全員食うんじゃん」


 仕方ない。


 少し多めに焼く。


「できたぞ」


『やったー!』


「静かに!」


『…………やった』


「小声ならいい」


 皿へ載せる。


「ほら」


 俺は水槽の前へ持っていった。


『…………』


「どうした?」


『ここまで』


「え?」


『食べさせて』


「…………」


 リヴィが口を開けた。


『あー』


「百歳超えてるよな?」


『うん』


「あー、じゃない!」


『昔はやってくれた』


「仔だったから!」


『今もリヴィ』


「そういう問題じゃない!」


 しかし。


『あー』


「…………」


『あー』


「分かった分かった!」


 箸で魚を一口。


 水槽の上から差し出す。


「ほら」


『あー』


 ぱくっ。


「どう?」


 リヴィが止まった。


「?」


 もぐもぐ。


 そして。


『…………おいしい』


「そっか」


『レオンの味』


「ただ焼いただけだけどな」


『違う』


「何が?」


『レオンが作った』


「…………」


 こういうことを真顔で言うから困る。


『もう一口』


「はいはい」


 もう一口。


『もう一口』


「自分で食べない?」


『口までお願い』


「完全に甘えてる!」


 ルビィが横から入ってくる。


「私も!」


「お前まで口開けるな!」


「あー!」


「自分で食え!」


 シロ。


「あー」


「お前は無表情でやるな!」


 フェニア。


「では私も――」


「全員却下!」


 三人が不満そうな顔をする。


 その後。


 何故か俺は世界最強の神獣四柱へ順番に魚を食べさせることになった。


「どうしてこうなった」


「おいしい!」


「……満足」


「懐かしいですね」


『もう一口』


「俺の分なくなるだろ!」


     ◇


 食事が終わる頃。


 俺は改めて水槽を見上げた。


「それにしても」


『なに?』


「本当にここで寝るの?」


『うん』


「家の中じゃなくて?」


『水がいい』


「人の姿なら普通に寝られるだろ」


『寝られる』


「じゃあ家で」


『でも水がいい』


「何で?」


 リヴィは少し考えた。


『落ち着く』


「ああ」


 それなら分かる。


 昔もそうだった。


 陸で眠れないわけではない。


 でも水の中が一番安心する。


「なら水槽でいいか」


『うん』


「ただし」


『?』


「家の前は駄目」


『え』


「道塞いでるだろ」


『…………』


「裏庭に移す」


『ここがいい』


「何で」


『レオンの寝室の窓見える』


「そこ!?」


 こいつ。


 ちゃんと考えてこの位置に置いたな?


「駄目」


『やだ』


「裏」


『ここ』


「裏!」


『ここ!』


「子供か!」


 リヴィが水槽の中で頬を膨らませた。


『レオンのけち』


「近所迷惑!」


『じゃあ家動かす』


「発想が逆なんだよ!」


 ルビィが手を挙げる。


「じゃあ家を水槽の横に増築――」


「しない!」


「まだ最後まで!」


「聞かなくても分かる!」


 シロ。


「水槽を小さくする」


「できる?」


「リヴィが小さくなれば」


 三人で水槽を見る。


『…………』


「リヴィ」


『なに』


「お前、どれくらいの水槽なら平気?」


『これくらい』


「今のじゃん!」


『広い方が楽』


「一晩だけ小さいので我慢できる?」


『…………』


「できる?」


『レオンも一緒なら』


「俺は水槽で寝ない!」


『じゃあ無理』


「交渉下手!」


 困った。


 このままでは本当に道を塞ぐ。


 その時。


 フェニアが言った。


「でしたら、裏庭へ水路を作ってはいかがです?」


「水路?」


「はい」


「それって普通の?」


「普通です」


「神力使わない?」


「…………」


「フェニア?」


「少しだけ」


「駄目」


「では手作業で」


「できるの?」


「もちろんです」


 フェニアが胸を張る。


「私たち四柱であれば、半刻もかからず――」


「人間の姿で」


「…………」


「魔法禁止」


「…………」


「普通の道具で」


 三人が黙った。


 水槽の中のリヴィまで黙った。


「できる?」


「…………」


 ルビィ。


「やったことない」


 シロ。


「穴なら掘れる」


「手で?」


「爪で」


「魔獣形態禁止」


「…………」


 フェニア。


「私は指示を」


「働け」


『私は水担当』


「一番楽じゃん!」


 世界最強。


 土木作業経験。


 ほぼゼロ。


「よし」


 俺は腕をまくった。


「明日の仕事終わったら、みんなでやるぞ」


「え?」


「水槽を裏庭に移す」


 ルビィが目を輝かせる。


「一緒に?」


「ああ」


 シロ。


「みんなで?」


「そう」


 フェニアも少し笑う。


「手作業で?」


「普通にな」


『私も?』


「当然」


『水の中から応援する』


「働け!」


『…………水運ぶ』


「よし」


 何故か。


 四人とも嬉しそうだった。


 ただの引っ越し作業なのに。


「そんな楽しみ?」


 ルビィが笑う。


「だって」


「?」


「みんなで家のことするの、昔みたいだから」


「…………」


 そうか。


 昔。


 育成所でも。


 寝床を直したり。


 水場を掃除したり。


 壊れた柵をみんなで直したりした。


 俺には少し前。


 こいつらには百年前。


「じゃあ」


 俺も笑った。


「明日は早く帰ってくる」


「うん!」


「待ってる」


「準備しておきます」


『いっぱい水持ってくる』


「いっぱいはいらない!」


     ◇


 その夜。


 俺は寝室の布団へ入った。


「今日は絶対入ってくるなよ」


「はい」


 ルビィ。


「分かった」


 シロ。


「承知しております」


 フェニア。


 三人を居間へ追い出す。


「おやすみ」


「おやすみ!」


「おやすみ」


「良い夢を」


 扉を閉める。


「…………」


 静かだ。


「よし」


 今日はゆっくり寝られる。


 布団へ入る。


 目を閉じる。


 数分。


 こん。


「…………」


 窓から音。


 こんこん。


「…………」


 目を開ける。


 窓の向こう。


 巨大水槽。


 その中。


 リヴィの顔。


 ぺたっ。


「…………」


 俺は窓を開けた。


「何?」


『おやすみ言ってない』


「…………」


『レオン』


「おやすみ」


『うん』


 リヴィが嬉しそうに笑う。


『おやすみ』


「はいはい」


 窓を閉める。


 再び布団。


「今度こそ……」


 こんこん。


「まだ何!?」


 窓を開ける。


『寂しい』


「水槽すぐそこだろ!」


『レオン見えない』


「カーテン閉めたから!」


『開けて』


「嫌だよ!」


『お願い』


「…………」


 負けた。


 カーテンを半分だけ開ける。


『見える』


「これでいい?」


『うん』


「じゃあ寝ろ」


『はーい』


 今度こそ静かになった。


「まったく」


 俺は布団へ潜る。


 そして。


 朝。


「…………」


 目を開ける。


 右。


 ルビィ。


 左。


 シロ。


 足元。


 フェニア。


「…………」


 いつも通り。


 そして窓。


 リヴィ。


 水槽の中から俺を見ている。


『おはよう』


「お前らあああああああ!!」


 世界最強の神獣四柱。


 どうやら全員。


 百年分の距離を。


 一気に取り戻すつもりらしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ