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世界最強の神獣たちを育てた飼育員、百年後に目覚めたら全員俺の家に住み着いた ~竜王も神狼も俺の前では昔のままです~  作者: てへろっぱ


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第13話 三大神獣、職場への出入りを禁止される



「明日は絶対一人で来るからな!」


「「「えー」」」


「えーじゃない!!」


 俺たちは城下町の路地を走っていた。


 正確には。


 俺が走り。


 ルビィとシロとフェニアは、完全に余裕の顔でついてきている。


「レオン、もっと速く走れる?」


「無理!」


 ルビィが横から聞いてくる。


「じゃあ抱っこする?」


「もっと目立つからやめろ!」


「飛ぶ?」


「論外!」


 シロが反対側から言う。


「背中乗る?」


「お前の本体になったら一発でバレる!」


「小さくなる」


「できるの?」


「……少し」


「どれくらい?」


「馬くらい」


「十分目立つ!」


 フェニアまで提案する。


「では転移を」


「神獣の力使うなって言ったよな!?」


「逃走時は緊急事態かと」


「お前らが原因だ!」


 後ろを見る。


 さっきの騎士たちは追ってきていない。


 どうやら本気で捕まえるつもりではなかったらしい。


「よし」


 俺は足を止める。


「ここまで来れば大丈夫だろ」


「もう終わり?」


 ルビィが残念そうにする。


「何で楽しそうなの?」


「一緒に走ったから!」


「逃げてただけだぞ」


 シロも少しだけ息を弾ませている。


「楽しかった」


「お前まで」


 フェニアは服の裾を整えながら微笑む。


「百年前にも、よく皆で逃げましたね」


「お前が風呂から逃げる時だけな」


「…………」


「フェニア?」


「昔のことです」


「今日も入れよ」


「今その話をしますか!?」


 元気そうで何よりだ。


「とにかく」


 俺は三人を見る。


「今日の反省会」


「反省会?」


「そう」


 ルビィを指差す。


「まずお前」


「はい!」


「帰れって言ったのに職場の屋根にいた」


「…………」


「何か言うことは?」


「見守ってた」


「駄目」


「はい……」


 次。


「シロ」


「なに」


「留守番って言った」


「うん」


「何で来た?」


「寂しかった」


「…………」


 ずるい答え方を覚えたな。


「それでも駄目」


「……はい」


 最後。


「フェニア」


「はい」


「お前は一番大人だと思ってた」


「もちろんです」


「堂々とついてきたよな」


「シロの監督です」


「監督対象と一緒に抜け出してるじゃん」


「…………」


「しかも最後、治癒魔法使った」


「レオンが怪我をしましたので」


「擦り傷!」


「傷です」


「そこは譲らないんだな!」


 困った。


 三人とも反省しているようで、根本的には何も反省していない。


「いいか」


 俺は指を一本立てた。


「俺は明日も仕事に行く」


 三人の顔が暗くなる。


「そして」


「…………」


「お前らは」


「…………」


「家で留守番」


「「「…………」」」


「返事」


「……はい」


「はい」


「承知しました」


「声小さい!」


 でも返事はした。


 今度こそ大丈夫だろう。


 たぶん。


     ◇


 昼過ぎ。


 俺たちは《もふもふ魔獣店ポッケ》へ戻った。


「ただいま戻りました」


「おかえり」


 店主は笑っていた。


「……怒ってないんです?」


「何に?」


「仕事中に逃げたこと」


「まあ事情が事情だからねえ」


「すみません」


「それより」


 店主が俺の後ろを見る。


 三人。


「…………」


「何で君たちも戻ってきたんだい?」


「反省したから」


 ルビィ。


「謝罪」


 シロ。


「先ほどはご迷惑をおかけいたしました」


 フェニア。


 意外と素直だ。


「店長さん」


 ルビィが頭を下げる。


「ごめんなさい!」


「私も」


 シロもぺこり。


「申し訳ございませんでした」


 フェニアも。


「おお……」


 店主が驚いている。


「ちゃんと謝れるんだな」


「こいつら昔から悪いことしたら謝らせてたんで」


「なるほどねえ」


 俺は少し胸を張る。


 飼育はしつけも大事なのだ。


「それで」


 店主が俺を見る。


「明日も来てくれるんだろう?」


「もちろんです!」


「よかった」


「え?」


「いやあ」


 店主が頭を掻く。


「君、もう来ないかと思ってね」


「何で?」


「初日から色々ありすぎただろう」


「ああ」


 確かに。


 魔獣大量集合。


 暴走魔獣。


 三大神獣。


 逃走。


 普通なら辞めたくなるかもしれない。


「でも仕事自体は楽しいですよ」


「本当かい?」


「はい」


 魔獣を見るのは好きだ。


 百年前と同じ仕事ができる。


 それだけで十分だった。


「それに」


 店の奥を見る。


 朝、耳を診た犬型魔獣が眠っている。


 岩角牛も庭で休んでいる。


「やっぱり俺、こういう仕事好きみたいなんで」


 店主が笑った。


「じゃあ改めてよろしく頼むよ」


「こちらこそ」


 握手。


 よし。


 初出勤は色々あったけど。


 仕事は続けられる。


「ただし」


「はい?」


 店主が俺の後ろを見る。


 三人。


「この子たちは明日から出入り禁止ね」


「「「えっ」」」


「当然」


 俺は即答した。


「何で!?」


 ルビィが抗議する。


「今日の騒ぎ忘れたの?」


「でも私は何も壊してない!」


「存在だけで騒ぎになってる!」


「それは私のせいじゃないよ!」


「半分くらいお前のせい!」


 シロが静かに手を挙げる。


「店の外なら?」


「駄目」


「道の反対側」


「駄目」


「屋根」


「もっと駄目!」


 フェニア。


「変装を完璧にすれば」


「眼鏡以外の案ある?」


「…………」


「ないんだな?」


「研究いたします」


「研究しなくていい!」


 店主が笑っている。


「仲いいねえ」


「そう見えます?」


「見えるよ」


 三人が一斉に嬉しそうな顔になる。


「そこ喜ぶの?」


     ◇


 午後。


 今度は三人を店の隅へ座らせ。


「何もするな」


 と念を押して仕事をした。


 すると。


「レオンさん!」


 朝来ていた少年が戻ってきた。


 腕には、白い毛玉魔獣。


「どうした?」


「この子、元気になりました!」


「お」


「きゅっ!」


 毛玉が俺を見るなり飛び降りる。


 ころころ転がるように走ってきた。


「おっと」


 抱き上げる。


「腹は?」


 触る。


 朝より柔らかい。


「大丈夫そうだな」


「ご飯も少し食べました!」


「よかった」


「ありがとうございます!」


「俺は腹揉んだだけだよ」


「でも、僕じゃ分からなかったから」


 少年が笑う。


「また何かあったら来てもいいですか?」


「もちろん」


「はい!」


 少年が帰る。


「…………」


 後ろ。


 三人が俺を見ている。


「何?」


 ルビィが頬を緩める。


「やっぱりレオンだなって」


「何が?」


「誰かのお世話してる時、楽しそう」


「そう?」


 シロが頷く。


「昔と同じ顔」


 フェニアも。


「私たちが怪我をした時も、いつもそのようなお顔でした」


「覚えてないなあ」


「私たちは覚えていますよ」


「…………そっか」


 俺には。


 ほんの少し前の出来事。


 でも。


 こいつらには百年前のこと。


 そんな違いが、まだ時々不思議だった。


 俺は毛玉魔獣が残していった白い毛を服から取る。


「ま」


「?」


「これからまた新しく思い出作ればいいだろ」


 三人が止まった。


「レオン」


「ん?」


 ルビィが笑う。


「うん!」


 シロの尻尾も揺れる。


「いっぱい」


 フェニアも柔らかく微笑んだ。


「百年分では足りませんね」


「それは多すぎる」


「では二百年分」


「増やすな!」


 いつもの調子に戻った。


 それでいい。


     ◇


 夕方。


「お疲れさまでした!」


「お疲れさん」


 初仕事終了。


「明日も九時でいいです?」


「ああ」


「分かりました」


 店を出る。


 三人も当然のようについてくる。


「じゃあ帰るか」


「うん!」


「帰る」


「夕食は何にしましょう?」


「その前に一個確認」


 三人を見る。


「明日は来るなよ?」


「…………」


「…………」


「…………」


「返事」


「はい」


「……はい」


「承知しております」


「よし」


 今度こそ。


 明日は普通に働ける。


 そう信じよう。


 家への道を歩く。


 すると。


「あ」


 ルビィが止まった。


「何?」


「レオン」


「ん?」


「家の前」


「家の前?」


 まだ遠い。


 俺には何も見えない。


 だが三人には分かるらしい。


 シロが鼻を動かす。


「……荷物」


「また!?」


 フェニアも目を細める。


「かなり大量ですね」


「お前らの追加便じゃないだろうな!」


「違う!」


「私じゃない」


「私も手配しておりません」


「じゃあ誰だよ」


 嫌な予感。


 急いで家へ向かう。


 角を曲がる。


「…………」


 あった。


 荷物。


 いや。


 荷物というより。


 **水槽。**


 巨大な水槽が。


 俺の小さな家の前に置かれていた。


「…………」


 俺は近づく。


 水槽の横に紙。


『レオンへ』


「…………」


 さらに。


『陸に行くの面倒だから、ここ住む』


「…………」


 最後。


『水入れといて』


「リヴィイイイイイイ!!」


 山の向こう。


 遠く離れた湖から。


『はーい!』


 返事だけは元気よく聞こえてきた。


「来る気あるなら自分で来い!!」


『明日行くー』


「本当に!?」


『たぶんー』


「一番信用できない返事!!」


 俺の隣で。


 ルビィが水槽を見る。


「……入るかな」


 シロ。


「家より大きい」


 フェニア。


「増築が必要ですね」


「だから増築しないって言ってるだろ!!」


 どうやら。


 一週間限定の同居生活に。


 四人目が加わろうとしていた。


 しかも本人より先に。


 **住む場所だけが届いた。**


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