第2話 お姉様の魔法を調べることになったので、侯爵家が大騒ぎです!
翌日。
アルヴェイン侯爵は、執務室の机に置かれた報告書を、朝から何度も読み返していた。
昨日、五歳の長女エレノアが、転びかけた妹のリリアを魔法で浮かせて助けたという報告である。
「……先生。五歳の子供が、教わってもいない魔法を使うことはあるのか?」
向かいに座る魔法の指導役は、報告書へ目を落とした。
「無意識に魔法を発動する子供は、稀におります。ただ、人を浮かせたという例は、私も初めて伺いました」
「本人は、リリアが転ばないようにしたかっただけだと言っている」
「強く願ったことで発動した可能性はございます。ですが、どのような魔法が使われたのかは、実際に調べてみなければ分かりません」
侯爵は椅子の背にもたれ、報告書に記されたマリアの証言へ目を落とした。
リリアが地面に落ちる前に身体が浮き上がり、怪我をせずに済んだことは間違いないらしい。
「マリアも目撃している。リリアは確かに地面へ落ちなかったそうだ」
「それでしたら、まずは魔力の反応を確認してみましょう」
指導役は鞄から、掌ほどの大きさの測定具を取り出した。
中央には指を触れるための丸い部分があり、その周囲には目盛りと一本の針が付いている。
「触れるだけで魔力の反応を調べられる道具でございます。魔法を使っていただく必要はありません」
「身体への負担は?」
「ございません。魔力を放出させることもありませんので、ご安心ください」
侯爵は測定具を手に取り、表面を確かめた。
娘に痛みや負担がないことを確認できたため、ようやく表情を緩める。
「正式な適性調査は七歳の予定だったな」
「はい。今回は簡易的な確認だけにとどめ、正式な調査は予定どおり七歳で行うのがよろしいかと存じます」
侯爵が頷いたところで、扉がノックされた。
「旦那様、庭師から追加の報告がございます」
入ってきた家令によると、昨日、エレノアとリリアが花壇で遊んでいた際、倒れた花がひとりでに持ち上がったと話していたらしい。
ただし、庭師自身はその瞬間を見ていなかったという。
「……花まで浮かせたのか?」
「お嬢様方のお話では、そのようでございます」
侯爵は測定具を指導役へ返した。
「先生。今日のうちに調べておきたい」
「承知いたしました。では、お嬢様をお呼びしましょう」
侯爵は立ち上がり、窓の外へ目を向けた。
庭園では、二人の娘がいつものように遊んでいるはずだった。
「……昨日までは、花を眺めているだけの子だったんだがな」
◇
一方、その頃。
エレノアとリリアは、庭園の白いベンチに並んで座っていた。
目の前の花壇には、昨日二人で起こした花が、何事もなかったように咲いている。
「おねいちゃま!」
「なあに、リリア?」
「また、ふわってできる?」
リリアが両手を広げると、エレノアは少し考え込んだ。
「うーん……わかんない。でもね、今日は魔法の先生が来てくれるんだって!」
「せんせい!」
リリアは手を叩き、ベンチから降りた。
「リリアも、せんせい!」
「えっ? リリアも先生になるの?」
「うん!」
リリアは姉の前で胸を張り、両手を広げた。
「おねいちゃま、ふわってして!」
エレノアは慌てて首を振った。
「だめだよ、リリア。お父様が、先生と一緒じゃないと魔法を使っちゃだめって言ってたでしょ?」
「……そっかぁ」
リリアは自分の両手を見つめたあと、何かを思いついたように顔を上げた。
「じゃあ、リリアがする!」
両手を横へ広げ、つま先立ちになる。
何度か背伸びをしてみたものの、足は地面から離れなかった。
「……あれ?」
リリアは自分の足元を不思議そうに見下ろした。
「リリアも、勝手に魔法を使っちゃだめだよ」
「リリア、せんせいだよ?」
エレノアが返事に困っていると、近くで見守っていたマリアが二人の前へしゃがみ込んだ。
「リリアお嬢様。先生になるには、まず魔法のお勉強をしなければなりません」
「おべんきょう?」
「はい。文字を覚えたり、本を読んだり、たくさんお勉強するのでございます」
「……いっぱい?」
「はい。いっぱいでございます」
リリアはしばらく考え込んだ。
そして、姉の手をぎゅっと握った。
「……リリア、せんせいやめる!」
エレノアが目を丸くした。
「もうやめちゃうの?」
「うん! おねいちゃまとあそぶ!」
リリアは姉の手を引き、花壇を指さした。
「おはな、見る!」
「うん! じゃあ、昨日のお花を見にいこう!」
二人は花壇へ向かって走りかけたが、エレノアがすぐに立ち止まった。
「あっ! リリア、走っちゃだめだった!」
「……あっ!」
昨日のことを思い出したリリアも、慌てて足を止めた。
「いーち、にーい……」
「さーん、しーい……」
二人は手をつなぎ、一歩ずつ数えながら花壇へ向かった。
マリアはその後ろ姿を見送り、隣にいた侍女へ小声で話しかけた。
「……昨日から、何度も心臓が止まりそうになります」
「ですが、今日はちゃんと歩いていらっしゃいますよ」
「ええ。それだけでもありがたいことでございます」
そのとき、リリアが振り返った。
「マリア!」
「はい、リリアお嬢様」
「マリア、だいじょぶ?」
マリアが返事をする前に、リリアは姉の方へ顔を向けた。
「ころんだら、おねいちゃまが、ふわってするよ!」
エレノアはリリアの手を握り直した。
「うん! マリアも、わたしが守るね! でも、魔法は先生に教えてもらってからだよ!」
リリアは姉の顔を見上げた。
「せんせい、まだ?」
「もうすぐ来てくれると思うよ!」
マリアは二人の前へしゃがみ、目線を合わせた。
「ありがとうございます。ですが、私を守ってくださるなら、まずはお二人とも転ばないように歩いてくださいませ」
「はーい!」
「はーい!」
二人の返事がぴったり重なり、マリアは胸を撫で下ろした。
◇
しばらくして、侯爵と魔法の指導役が庭園へやってきた。
「お父様!」
エレノアは手を振り、妹と一緒に歩いていった。
「エレノア、待たせたね」
「ううん! リリアとお花を見てたの!」
侯爵は娘の頭を撫でたあと、隣に立つ指導役を紹介した。
「こちらが魔法の先生だよ」
「せんせい、よろしくおねがいします!」
エレノアが丁寧に頭を下げると、指導役も膝を折って挨拶した。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。エレノアお嬢様」
リリアも姉の隣で頭を下げた。
「リリアも!」
「はい。リリアお嬢様も、よろしくお願いいたします」
侯爵は二人の娘を屋敷へ促した。
「今日はエレノアの魔力を調べてもらうんだよ」
「リリアも見る!」
「ああ。静かに見ていられるなら、一緒にいていいよ」
リリアは両手を上げた。
「しずかにする!」
その声が庭園に響き、近くにいた庭師まで振り返った。
「うん。もう少し小さな声でね」
侯爵が人差し指を唇へ当てると、リリアも真似をした。
「……はぁい」
今度は隣のエレノアにも聞こえるかどうかという小さな声だった。
◇
測定は、一階の小さな応接室で行われることになった。
机の上には掌ほどの測定具が置かれ、侯爵と指導役、マリアが立ち会っている。
エレノアは父親の隣に座り、リリアはその反対側から測定具を覗き込んでいた。
「エレノアお嬢様。こちらの丸いところへ、指を触れていただけますか?」
「これ、なあに?」
「魔力を調べる道具でございます。触れると、この針が動きます」
エレノアは測定具へ顔を近づけたが、まだ指は伸ばさなかった。
「いたくない?」
「はい。痛くありませんよ」
エレノアは念のため、父親を見上げた。
「お父様、見ててくれる?」
「もちろんだよ。ずっと隣にいるからね」
侯爵が手を差し出すと、エレノアはその指を握った。
「じゃあ、やってみる!」
リリアも両手を握り、姉を応援した。
「おねいちゃま、がんばれ!」
エレノアは空いている方の手を伸ばし、測定具の中央へ人差し指を触れた。
針が動き始めた。
「あっ! うごいた!」
エレノアが声を上げると、指導役も頷いた。
「はい。きちんと反応しておりますね」
指導役は目盛りを確認した。
しかし、針は中央を越えても止まらなかった。
右へ進み続け、最後の目盛りに達してしまった。
「……おや?」
指導役は身を乗り出した。
針は終端に押し付けられたまま、動かない。
指導役は測定具の側面を確かめたあと、エレノアの手元へ視線を戻した。
「せんせい?」
エレノアが首を傾げた。
「もう、おしまい?」
「……はい。指を離していただいて結構でございます」
エレノアが指を離すと、針はゆっくり元の位置へ戻った。
「お父様! ちゃんと動いたよ!」
「ああ。よくできたね」
侯爵は娘の頭を撫でたが、指導役が測定具を裏返して確認し始めたため、そちらへ目を向けた。
「先生。何かあったのか?」
「……念のため、別の測定具でも確認させてください」
指導役は鞄から同じ形の測定具をもう一つ取り出し、机の上に置いた。
「エレノアお嬢様。申し訳ございませんが、もう一度だけお願いできますか?」
「うん!」
エレノアは二つ目の測定具へ指を触れた。
針が動き始める。
中央を越え、最後の目盛りまで進む。
そして、再び終端で止まった。
指導役はエレノアに指を離してもらうと、二つの測定具を並べ、それぞれの目盛りを確認した。
どちらも針は元の位置へ戻っており、外見上の異常も見当たらない。
「……先生?」
侯爵が声をかけると、指導役はようやく顔を上げた。
「旦那様。二つとも、測定できる範囲の上限に達しております」
「……上限?」
「はい。こちらは成人の魔法使いが使用することも想定した測定具でございます。私も長年指導に携わっておりますが、上限まで針が動く方は滅多におりません」
侯爵は娘を見た。
エレノアはリリアと顔を見合わせ、楽しそうに笑っている。
「おねいちゃま、すごい!」
「えへへ!」
指導役は二つの測定具を机の端へ寄せ、説明を続けた。
「二つとも測定範囲の上限に達しておりますので、詳しい魔力量までは分かりません。適性についても、今回の測定だけでは判断できないのです」
「それなら、どうすればいい?」
「専用の設備が必要になります。ですが、まだ五歳でいらっしゃいますし、急いで調べる必要はございません。正式な適性調査は七歳の予定ですから、今日はここまでにいたしましょう」
「それでも、五歳の子供としては普通ではないのだな?」
「……はい。少なくとも、私がこれまで担当したお子様の中には、このような反応を示した方はおりません」
侯爵は一度頷くと、娘の方へ身体を向けた。
「エレノア」
「なあに、お父様?」
「どこか痛いところはないかい?」
「ないよ!」
エレノアは両手を広げ、父親へ笑顔を向けた。
「ぜんぜん痛くなかった!」
「そうか。それならよかった」
侯爵は娘を抱き寄せた。
エレノアは父親の胸に頬を寄せた。
「お父様、くすぐったい!」
「おや、そうかい?」
侯爵が抱きしめる腕を緩めると、リリアが椅子から身を乗り出した。
「リリアも!」
侯爵は笑いながら、リリアも抱き上げた。
「もちろん、リリアもだよ」
両腕に娘たちを抱えた侯爵を見て、指導役は測定具を鞄へ戻した。
「本日の確認は、これで十分でございます。正式な適性調査までは、安全な基礎から始めるのがよろしいかと存じます」
「ああ。よろしく頼む」
◇
測定が終わると、エレノアは指導役の前へやってきた。
「せんせい」
「はい、エレノアお嬢様」
「わたし、またリリアを助けられる?」
指導役は少女の顔を見た。
「リリアお嬢様を、ですか?」
「うん。昨日みたいに、ころびそうになったら助けたいの」
エレノアは少しだけ俯いた。
「でも、どうやったのか、わかんないの……」
指導役は膝を折り、少女と目線を合わせた。
「昨日は、リリアお嬢様が怪我をしなくて、本当によかったですね」
「うん!」
「ですが、魔法は使い方を間違えると、かえって怪我をさせてしまうこともございます。ですから、これから少しずつ、安全な使い方を覚えていきましょう」
エレノアは顔を上げた。
「おぼえたら、リリアを助けられる?」
「はい。できることは、きっと増えていきますよ」
その答えを聞いたエレノアは、隣にいる父親の袖を引いた。
「お父様! わたし、お勉強する!」
「そうか。頑張ろうね、エレノア」
すると、リリアが姉の手を引いた。
「おねいちゃま!」
「なあに?」
「リリアも、おべんきょう!」
エレノアが驚いて妹を見ると、リリアは姉の手を両手で握った。
「リリアも、おねいちゃま助ける!」
「リリアが、わたしを?」
「うん! おねいちゃま、ころんだら、リリアが助ける!」
エレノアは妹をぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう、リリア!」
「えへへ!」
リリアも短い腕を精いっぱい伸ばし、姉の背中に回した。
侯爵は二人の姿を見守っていたが、エレノアが顔を上げると、その頭を優しく撫でた。
「二人とも、優しい子に育ってくれたね」
エレノアは妹を抱きしめたまま、父親へ笑顔を向けた。
「お父様! わたし、リリアをいっぱい守るね!」
「ああ。ただし、危ないことをするときは、必ずお父様か先生に相談するんだよ」
「はーい!」
リリアも姉の真似をして手を上げた。
「はーい!」
侯爵は二人の返事に満足そうに頷いた。
◇
その日の夕方。
侯爵は執務室で、指導役から測定結果の報告を受けていた。
机の上には、二つの測定具の反応を記録した書類が置かれている。
「今回の結果は、当面、ご家族と必要な関係者だけで共有するのがよろしいかと存じます」
「私もそう思う。まだ正確なことは分かっていないし、エレノアに余計な注目を集めたくない」
侯爵は報告書を閉じた。
「今後の指導は、先生に任せる。まずは安全な基礎から教えてやってくれ」
「承知いたしました」
指導役は一礼し、書類をまとめ始めた。
侯爵は机に肘をつき、額を押さえた。
「……それにしても、先生」
「はい」
「昨日は、エレノアがリリアを浮かせた。今日は、測定具が二つとも上限を示した」
侯爵は窓の外へ目を向けた。
夕暮れの庭園は静かで、昨日までと何も変わらないように見える。
「……明日は何が起きると思う?」
「……旦那様。それは、私にも分かりかねます」
侯爵は深いため息をついた。
「そうだろうな……」
そのとき、廊下から小さな足音が聞こえてきた。
「おとうさまー!」
扉が開き、リリアがマリアに付き添われて顔を出した。
その後ろには、エレノアもいる。
「お父様! お話、終わった?」
「ああ。ちょうど終わったところだよ」
エレノアが駆け寄りかけたところで、リリアが先に両手を広げた。
「おとうさま! おねいちゃま、すごい!」
侯爵は椅子から立ち上がり、娘たちの方へ歩いていった。
「ああ。そうだね」
「ふわってできる!」
「うん。でも、先生がいいと言ったときだけだよ」
リリアは大きく頷いたあと、父親を見上げた。
「おとうさまも!」
「……私も?」
リリアは父親の前に立ち、両手を精いっぱい伸ばしてみた。
けれど、背の高い父親の頭には、指先さえ届かなかった。
「おとうさま、おっきい!」
侯爵は娘の前にしゃがみ、目線を合わせた。
「そうだね。リリアより、ずっと大きいね」
リリアは嬉しそうに頷くと、今度は両手を高く上げた。
「おっきいおとうさまも、ふわってできる?」
侯爵は指導役を振り返った。
「……先生。私は、浮かされる予定はないのだが」
「……私も、その方がよろしいかと存じます」
指導役は鞄の留め具を閉じる手を止め、侯爵とリリアを交互に見た。
マリアが慌ててリリアの前へしゃがんだ。
「リリアお嬢様。エレノアお嬢様が魔法を使われるのは、先生の許可があるときだけでございますよ」
「うん!」
リリアは素直に頷いた。
そして、指導役へ顔を向けた。
「せんせい! おとうさま、ふわってして!」
指導役は鞄を持ち上げかけた姿勢のまま、固まってしまった。
エレノアは妹の隣へしゃがみ、優しく言い聞かせた。
「リリア、お父様は浮かせちゃだめだよ?」
「……なんで?」
「だって、お父様は大きいから、危ないかもしれないでしょ?」
リリアは父親を見上げたあと、少し考え込んだ。
侯爵は娘の言葉に頷いた。
「そうだね。エレノアの言うとおりだよ」
すると、リリアは今度は自分の両手を広げた。
「じゃあ、リリア! ふわって!」
エレノアは困った顔で父親を見上げた。
「……お父様。リリアが、また浮きたいって」
「ああ。聞こえているよ」
侯爵はリリアへ両手を差し出した。
「リリア。そんなに浮きたいのかい?」
「うん!」
侯爵は娘を両脇から抱き上げた。
「それなら、お父様が抱っこしてあげよう」
リリアの足が床から離れた。
「わあっ!」
侯爵は娘を胸の高さまで持ち上げた。
「どうだい?」
「ふわってした!」
リリアは父親の肩に両手を置き、声を上げて笑った。
「おとうさま、すごい!」
エレノアも手を叩いた。
「ほんとだ! お父様もできるんだね!」
侯爵は笑いながらリリアを抱き直した。
エレノアはすっかり感心した様子で指導役へ振り返った。
「先生! お父様も、魔法のお勉強しなくていいの?」
指導役は口元を押さえた。
「……旦那様は、十分お上手でございますよ」
侯爵は二人の娘と指導役を順番に見た。
「……先生。笑っているだろう?」
「……申し訳ございません」
指導役はとうとう堪えきれず、肩を震わせた。
その横で、エレノアは父親の袖を引いた。
「お父様! 今度は、わたしも!」
侯爵はリリアを片腕に抱え直し、空いた腕でエレノアも抱き上げた。
「わあっ!」
「おねいちゃまも、ふわって!」
二人の笑い声が執務室に響いた。
侯爵は娘たちを落とさないように抱えながら、指導役へ顔を向けた。
「……先生。明日からの指導、くれぐれも頼むよ」
「……はい。ですが、旦那様」
指導役は二人の娘を抱える侯爵を見て、また口元を緩めた。
「今のところ、お嬢様方を一番よく浮かせていらっしゃるのは、旦那様でございますね」
侯爵は何も言い返せなかった。
エレノアとリリアは、父親の腕の中で楽しそうに笑っている。
侯爵は二人を抱え直し、諦めたように笑った。
「……まったく。二人とも、どこまで私を驚かせるつもりなんだろうね」
その問いに答える代わりに、リリアが父親の頬へ小さな口づけをした。
「おとうさま、だいすき!」
エレノアも反対側から頬を寄せた。
「わたしも!」
侯爵は二人をぎゅっと抱きしめた。
「……ああ。お父様も、大好きだよ」
その日、侯爵が一番驚いたのは娘の魔力だったが、一番嬉しかったのは、二人がいつもどおり甘えてくれたことだった。
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