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クリスマスイブの朝
朝の光は乾いていた。机の上の古い本——昨夜、桜井さんから預かった一冊に目が落ちる。早く読んで返さないと、と思って開いた。辞書を引きながら数頁。本を閉じた。
机の上のものを、左上から右下へ揃える。計算ノート、刷り出した論文、筆記具立て、マグカップ、電気スタンド。万年筆を窓の方へかざし、インクの残量を光に透かしてから、ノートの右端に六桁の日付を入れた。
引き出しの一番上を開けた。小さな紙の袋に、白地に紺の紐のお守りがひとつ入っている。十一月の終わりに、一人であの神社で買ったものだった。
紺色のリボンを結んだ。結び目は歪んだ。コートの内ポケットの右に入れて、布の感触を上から一度確かめる。
桜井さんが編んでくれた濃紺のマフラーを取った。五時、駅前の交差点、と頭の中で確認する。
外の空気は冷たかった。街のどこかで誰かが歌っている。店先のあかりに、薄く混じっていた。
——もうすぐ、彼女に会う。
信号が変わるのを待っているとき、ポケットの電話が一度だけ震えた。




