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8/11

クリスマスイブの朝

朝の光は乾いていた。机の上の古い本——昨夜、桜井さんから預かった一冊に目が落ちる。早く読んで返さないと、と思って開いた。辞書を引きながら数頁。本を閉じた。


机の上のものを、左上から右下へ揃える。計算ノート、刷り出した論文、筆記具立て、マグカップ、電気スタンド。万年筆を窓の方へかざし、インクの残量を光に透かしてから、ノートの右端に六桁の日付を入れた。


引き出しの一番上を開けた。小さな紙の袋に、白地に紺の紐のお守りがひとつ入っている。十一月の終わりに、一人であの神社で買ったものだった。


紺色のリボンを結んだ。結び目は歪んだ。コートの内ポケットの右に入れて、布の感触を上から一度確かめる。


桜井さんが編んでくれた濃紺のマフラーを取った。五時、駅前の交差点、と頭の中で確認する。


外の空気は冷たかった。街のどこかで誰かが歌っている。店先のあかりに、薄く混じっていた。


——もうすぐ、彼女に会う。


信号が変わるのを待っているとき、ポケットの電話が一度だけ震えた。


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