四ノ怪:釣瓶落とし 前編
・釣瓶落とし
釣瓶落とし、または釣瓶下ろしとは、京都府、滋賀県、岐阜県、愛知県、和歌山県などに伝わる妖怪である。
木の上から落ちて来て、人間を襲う、人間を食べるなどと言われている。
大正時代の郷土研究資料『口丹波口碑集』にある口丹波(京都府丹波地方南部)の口承によれば、京都府南桑田郡曽我部村字法貴(現・亀岡市曽我部町)では、釣瓶下ろしはカヤの木の上から突然落ちてきてゲラゲラと笑い出し、『夜業すんだか、釣瓶下ろそか、ぎいぎい』と言って再び木の上に上がっていくと言われている。
また曽我部村の字寺でいう釣瓶下ろしは、古い松の木から生首が降りてきて人を喰らい、飽食するのか当分は現れず、2、3日経つとまた現れるという。
これら以外にも多くの伝承があるがここでは省かせて頂く
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2025年9月23日
『本日未明、滋賀県彦根市の宗安寺にて頭部のない遺体が発見されました。警察によると、発見された遺体は宗安寺の僧侶の一人とのことです。これにより、今月で六名の僧侶が遺体が発見されておりますが、今の所、容疑者特定までは至っていないようです。繰り返します・・・』
そこで私、新造寺唯はテレビの電源を切り、ベッドへ横になる。
少し前までは、つまらない政治家の話や熊の目撃情報についてのニュースしか放送していなかったはずなのに、最近はもっぱら、この首無し殺人事件のニュースしか取り上げられていない
「パパ、大丈夫かな・・・」
私の父は比叡山延暦寺を護る僧侶の一人である。
そして、最近巷を賑わかせている首無し殺人事件は私の実家である滋賀県中心で起きている。
それも滋賀県にあるお寺の住職や僧侶が被害に遭っているではないか。
父は比叡山延暦寺を護る僧侶のため、そこらの格闘家よりも強いが、大丈夫だと自分自身に言い聞かせてはいるが、次の犠牲者が父になるのではないかと常々不安に思っている
「パパに連絡してみようかしら?」
起き上がった私は父に電話しようとiPhoneを手に取るが、時刻を確認すると23時を過ぎている
「・・・・明日にしよう」
父は僧侶のため、かなり早寝早起きの人間である。
そんな父に23時過ぎに電話をしては起こしてしまいかねない
「明日は早いし、今日はもう寝よう」
私の父は自分の娘に自身の跡を継いでほしくはないらしく、私が東京の大学へ進学すると言った時は私を応援してくれた。
そして、めでたく東京の早稲田大学文学部に受かった私は上京し、今は日本の宗教について学んでいる。
最初は宗教について興味はなかったのだが、講義を受けていくにつれ、日本の宗教に興味を持つようになったが、そのことについて父に話した所、あまり良い表情はしていなかった。
そんなことを思い出しながら、明日の朝からある講義のために今日は眠ることにする。
翌日、朝の講義を受け終わった私は、大学の学食で少し早い昼食を一人で食べていると、設置されているテレビからニュースが流れる
『本日未明、滋賀県彦根市にて首のない遺体が発見されました。身元は比叡山延暦寺の僧侶である新造寺忠行さんであると判明しました』
私の手元からスプーンが落ちるが、そんなことを気にしている場合ではない。
ニュースで放送されている新たな犠牲者の名前が父の名前と同じなのである
「パ、パパ?」
私はテーブルに置いてあるiPhoneを取り、震える手で父へ電話をかける
「お願い!繋がって!!」
『もしもし?』
「パ、パパ!!」
『申し訳ありません。私、新造寺忠行さん本人ではありません』
電話の向こうから聞こえる声は確かに父の物とは違く、少し若いように感じる
「あ、貴方、誰ですか?何で父の携帯を持っているんですか!」
『失礼。私、この事件を担当している警視庁の範馬と言う者です。貴女は娘さんの新造寺唯さんでよろしいでしょうか?』
電話に出たのが犯人かと思い、身構えてしまったが、どうやら警察の方が電話に出た
「・・・・警視庁ということは、やっぱりニュースで放送されている首の無い遺体ってパパなんですね?」
『・・・この度はご愁傷様でございます』
電話の向こうの相手は私の質問に対し、肯定とも否定とも答えない
「・・・パパは、父は誰に殺されたのですか?父は比叡山延暦寺を守護する僧侶の一人、一般人が父を殺せるなんてありえません!」
そう、父は比叡山延暦寺を守護する僧侶の一人。
空手や柔道は黒帯、剣道は最高段位の八段を有している実力者である父を殺すなんて一般人には不可能だ
『落ち着いてください。新造寺唯さん、貴女のお話を聞きたいのですが、今、どちらに居られますでしょうか?』
「大学です」
『大学?叡山学院ではなく?』
「はい。父から天台宗から離れて生きて欲しいと常々言われておりまして、一般の大学へ進学しております。大学は早稲田大学です」
『早稲田ですか。今からだとそちらに14時過ぎぐらいにお伺いできると思うのですが、お時間は大丈夫でしょうか?』
「はい。私も父を殺した犯人をいち早く捕まえたい。それのお手伝いが出来るのでしたら何だってします。場所は早稲田大学のどこで待てばよろしいでしょうか?」
『それでしたら、私の友人がそちらの講師をしておりますので、その研究室でもよろしいでしょうか?講師の名前は武坂京と言うのですが』
範馬と名乗る刑事の口から"武坂京"と言う名前が出るが、私の記憶にその名前が一致する先生はいない
「武坂京?申し訳ありません。その先生の名前は聞いたことがなくて・・・」
『しまった。今は京坂武と名乗っているのを忘れていました』
「京坂?確か、民俗学の先生ですね?その先生の研究室へ行けばよろしいでしょうか?」
『お願いします。京坂には私から話を通しておきますので』
「承知しました」
『それでは、後程、よろしくお願いします』
そこで通話が切れた。
刑事とのやり取りはしっかりと受け答えが出来ていたのだが、電話が終わった瞬間から考えが纏まらなくなり、私はただただ呆然と立ち竦んでいることしか出来なかった




