第8話:傲慢な再会と、陛下の怒り
謁見の間を支配するのは、息が詰まるほどの静寂。
アルフレート王子は、ギルバート様が放つ威圧感に顔を青ざめながらも、必死に虚勢を張っていました。
「ガ、ガレリア皇帝……!言葉を慎め。エルナは我が国の公爵令嬢であり、私の婚約者だ。他国の皇帝が口を挟むことではない!」
その言葉を聞いた瞬間、ギルバート様が喉の奥で低く笑いました。それは可笑しみなど微塵もない、冷え切った嘲笑です。
「……婚約者?大勢の前で彼女を侮辱し、家畜同然の荷馬車に乗せて国境に捨てた男が、よくもそんな言葉を吐けたものだ」
「それは……!あ、あれは教育の一環だ。少しばかり反省させようとしただけで、本気で捨てるつもりではなかった!」
アルフレート王子の苦しい言い訳に、私は眩暈がするのを覚えました。
あの日、森に捨てられた私に、彼は確かに「消えろ」と言いました。雪の中に残された私が死ぬことなど、これっぽちも気にしていなかったはずなのに。
私は、震えそうになる右手を、左手でぎゅっと押さえました。
すると、その上からギルバート様の大きな手が重なります。彼は私を安心させるように一度強く握りしめ、そのままアルフレート王子を射抜くような視線で見据えました。
「教育、だと?……ならば俺も、貴様に『教育』をしてやろう。他国の地を、泥靴で汚した報いをな」
「なっ……!脅すつもりか!よいか、エルナがいないせいで我が国の魔力バランスは崩壊しかけているんだ!今すぐ連れ戻さなければ、国際問題に発展するぞ!」
「壊れた道具が必要になったから、返せと言っているだけだろう」
ギルバート様の声が、一段と低くなりました。
彼の周囲で、金色の魔力がバチバチと火花を散らし始めます。
「エルナは道具ではない。俺の命を救い、俺の心を救った、唯一無二の女性だ。……貴様らのような、彼女の価値も知らずに踏みにじった輩に、彼女を渡すつもりなど万に一つもあり得ない」
「黙れ!エルナ、お前からも何か言え!お前も、こんな野蛮な皇帝のそばにいるより、住み慣れた国に戻りたいだろう!?今戻るなら、王妃の座を考えてやっていい!」
アルフレート王子が、私に向かって命令するように叫びました。
その目は、「自分に従うのが当たり前だ」と信じて疑わない、傲慢な色に染まっています。
私は、ギルバート様の腕から一歩前へ踏み出しました。
足が竦み、声が震えそうになります。
それでも、私の手を「温かい」と言ってくれたこの人のために、私は伝えなければならないと思ったのです。
「……アルフレート様」
私の静かな声に、広場が静まり返りました。
私はゆっくりと、けれどはっきりと、彼を見つめました。
「私は……、もうあなたの『物』ではございません」
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