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『魔法無効化の「欠陥」令嬢は、追放先で孤独な獅子王に心ごと救われる ~愛を知らない私が、隣国の陛下に「運命の人」だと溺愛される理由~』  作者: 一ノ瀬 陽
第3章:今さら返せと言われても、もう遅いです

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第7話:エルナが消えた王国に降り注ぐ災厄

アステリア王国の使節団が到着する数日前。

かつての私の故郷は、見るも無惨な姿へと変わり果てていました。


「……どういうことだ。なぜ、これしきの火を消せない!」


王宮の修練場。第一王子・アルフレート様は、苛立ちを剥き出しにして叫んでいました。

彼の指先から放たれたはずの炎魔法は、標的に当たる前に黒い煙を上げて爆発し、制御不能となって自分たちのマントを焼け焦がしています。


「陛下、王子!国内の魔力溜まりが完全に腐敗しております!魔法を放てば放つほど、歪んだ魔力が逆流して術者を傷つけるのです!」


魔導師たちの報告に、アルフレート様は顔を真っ赤にして地団駄を踏みました。


無理もありません。

この国は、肥大化した魔力を「浄化」する仕組みを持っていませんでした。その代わりに、私の『魔法無効化(アンチ・マナ)』という特異体質が、国中に溢れる余剰な魔力の毒を吸い続けていたのです。

私がいた公爵邸や王宮は、私という「掃除機」のおかげで、常に清浄な魔力に満ちていました。


それを「不吉」だと追い出した結果――王国は今、自ら蓄えた魔力の毒に溺れ、自滅しようとしていたのです。


「くそっ、あの無能女さえいれば、こんなことには……!」


アルフレート様は、隣で怯えるミーナ様の肩を強く掴みました。

「聖女」と称えられた彼女の癒しの魔法も、今や濁った光しか放たず、何の役にも立ちません。


「……エルナを連れ戻す。あいつは私の婚約者だ。どこへ行こうと、私の所有物だ」


自分の過ちを認める代わりに、彼は傲慢な独占欲を正当化しました。

そして。

アステリア王国の使節団が、ガレリア帝国の重厚な城門をくぐりました。


私は、ギルバート様の隣で、彼らを迎えることになりました。

豪華な絹のドレスに身を包み、ギルバート様が贈ってくださった「聖なる守護」の宝石を身につけて。


「エルナ!そこにいたのか!」


謁見の間に入ってくるなり、アルフレート様はギルバート様への礼も失念し、私に向かって手を伸ばしました。

その目は血走っており、私を救いに来たヒーローのような顔をして叫びます。


「さあ、帰るぞ!お前の無礼は許してやる。国が大変なんだ、お前の『力』で何とかしろ。……おい、いつまでそこに立っている。早くこちらへ来い!」


かつての私なら、その怒声を聞いただけで肩を震わせ、俯いていたでしょう。

けれど今、私の腰には、ギルバート様の強く温かい腕が添えられていました。


「……私の婚約者に、誰の許可を得て指図している?」


ギルバート様の、氷の刃のような声が広間に響き渡りました。

その瞬間、アルフレート様の足元の石床が、ギルバート様の魔力によるプレッシャーでピシリとひび割れました。


愛を知らなかった私を守るため、獅子王が静かに牙を剥いたのです。

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