第5話:愛されたことのない私への、過保護すぎるご褒美
アステリア王国からの返還要求があった翌日。
私は、離宮の広間で言葉を失っていました。
「……あの、ギルバート様。これは、一体?」
目の前には、溢れんばかりの宝石箱、最高級のシルクで仕立てられた色とりどりのドレス、そして、見たこともないほどの豪華な刺繍の靴が山積みにされていました。
「君にふさわしいものを選ばせたら、少し数が多くなってしまった。……気に入らないか?」
ギルバート様は、不安そうに私の顔を覗き込んできます。その様子は、まるで獲物を捧げて褒めてもらおうとする誇り高い狩人のようでした。
「いえ、気に入らないなんて……。ですが、私のような者にこれほど贅沢なものは勿体ございません」
私が思わず一歩引くと、ギルバート様の手が素早く私の腰を抱き寄せました。
「『私のような者』などと言うな。君は、世界で唯一、俺を人間に戻してくれた女性だ。……アステリアの連中は、君に石ころすら与えなかったと聞いた。ならば、俺がこの国のすべてを君の足元に敷き詰めよう」
彼は跪き、私の手にそっと真珠の指輪をはめました。
実家では、魔法が使えない私は「着飾る価値もない」と、常に姉のお下がりの色褪せた服を着せられていたのに。
「……ありがとうございます。大切にいたしますわ」
私が頬を染めて微笑むと、ギルバート様は感極まったように私の手首に顔を埋めました。
「ああ……エルナ……。君が笑うだけで、俺の魔力はこんなにも穏やかになる。……あんな国に、絶対に君を返しはしない」
彼が低く呟いた言葉には、独占欲が滲み出ていました。
その頃。
アステリア王国の王宮内では、阿鼻叫喚の地獄が広がっていました。
「どういうことだ!なぜ、王宮の結界が霧散している!」
第一王子・アルフレートが、叫び声を上げます。
エルナを追放して数日。王国を支えていた聖なる泉の魔力が急激に腐敗し、農作物は枯れ、王宮内に至っては魔法の灯りすら灯らなくなっていました。
「報告いたします!エルナ様がいなくなったことで、国内の魔力汚染を浄化する者が不在となり、地脈が毒されています!このままでは、ひと月と持たずに我が国は……!」
「馬鹿な……。あいつは魔力ゼロの無能だったはずだぞ!」
アルフレートは、震える手で壁を叩きました。
彼らが「不吉な嫌がらせ」だと思っていたエルナの魔法無効化の体質。
それこそが、王国に溜まる魔力の歪みを、無自覚に吸い取り、浄化し続けた「聖域の盾」そのものだったのです。
「……隣国へ使者を出せ!どんな手を使っても、エルナを連れ戻すのだ!」
自分たちが捨てた宝物の価値に、彼らはようやく気づき始めていました。
しかし、その宝物は今、世界で最も恐ろしく、そして最も一途な王の腕の中にありました。
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