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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第十二章 ~地獄編~

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402 集結の時

 うぅむ、ウォレンは「対応を考える」と言っていたが、ありゃ相当怒ってるな。

 黒帝とも称される男の怒気とは、恐ろしいものだ。


「なーに、うんうん頷いているんです、かっ!」

「よっと、ん? 何だポチ? そんな悲しそうな顔して?」

「いや、おかしいですよ! 完全に気配消して接近したのに、何で今のかわせるんですかっ!?」

「え? あ……うーん、なんとなく!?」

「何となくでかわされるレベルなんですか、私!? マスターと同じレベルなんですよ!?」


 はて? 確かにその通りだ。

 最近戦士寄りの戦い方になってるから、感覚が鋭敏になってるのかもしれないな。

 先日のモンスター接近についてもそうだが、ミネルバの言葉通りだったな。

 だが、俺は魔について諦めたつもりはない。必ず魔王を倒すべく賢者となり……いや、大賢者となってやるんだ。


「ん。精進しろよ、ポチ」

「むきー! なんですかそれ! その態度! せっかく良い事教えてあげようとおもったのに!」

「良い事?」

「強く大きな魔力が南からここに向かってるってトゥースさんが言ってたんですけど、マスターには教えてあげませんっ!!」

「へぇ、それじゃあ南門に行ってみるか」

「何で知ってるんですっ!?」


 疑問を大にしながら、何故コイツは尻尾を振っているのだろうか。

 最近ますますポチがわからなくなるが、こんなんでも使い魔杯の覇者なんだよな。

 俺は「マスター! マスター!」と突っかかってくるポチを適度に流しながら、南門へ向かった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「おぅ、呑気な登場だな」


 南門で胡座(あぐら)をかいて座っていたトゥースが、俺の接近に気付いてそう言った。


「ポチが慌ててなかったからな。って事は、大体検討がつくさ」

「確かにな。悪い魔力は感じねぇ。が、ポチのヤツ……お()ぇのところは最後に報告したみたいだな」


 ニヤリと口の端をあげたトゥース。

 む、確かに俺より早く銀の皆やリナたちが来ている。

 さっき別れたばかりのウォレンやアイリーンもいるのだから、俺への報告が最後という事か。

 ……ん?


「どうしたんです、マスター?」

「お前、本当に俺の使い魔か?」

「八百年の付き合いをお忘れで?」

「大事な事なら最初に俺に報告だろう!?」

「大丈夫です! まだ大事には至ってません!」

「そういう話をしてるんじゃねぇんだよ!」

「あ、見てください! 見えましたよ!」


 と、ポチが右前脚を伸ばし叫んだ瞬間、俺たちの目の前に風がやってきた。

 見上げると瞳に映る灰色の巨躯。

 それを見てブルの背で鼻息を荒く吐く伝説の黒紫(こくし)の鳥。

 皆が固唾を呑み、俺は懐かしさに顔を綻ばせた。


「よぉ、久しぶりだ――」

「――灰虎(はいこ)です!! 覚えていらっしゃいますか、シロさん!!」


 俺は顔を綻ばせたまま固まっていたが、灰虎(はいこ)のヤツは顔を紅潮させていた。


「お久しぶりですー!」


 ポチはポチで、灰虎(はいこ)の好意に気付いてないようだ。

 相変わらず自分の事になると鈍いヤツである。


「はぁ、こりゃ病的だな……」


 トゥースが頭を掻きながら言う。


「ふはははは! 聞いたか紫死鳥(ししちょう)よ!? シロさんは我を覚えていたぞ!? 無論、我は片時も忘れていなかったがな! む? ……久しいな千の魔手よ?」


 獣同士のテンションと人間と話す時のテンションの差が激しいな。

 まさか……文字通り人間の前では猫を被ってたとはね。


「ブルと紫死鳥(ししちょう)から、此度の伝言受け取った。再び魔王が復活したようだな?」


 既に違和感しか感じない。

 しかし、面識のないアイリーンに話の進行を任せる訳にもいかない。


「あぁ。悪いけどまた力を貸してくれ」

「ふっ、我らの絆は時如きで綻びはしない。黒亀(こっき)の爺も、黄龍(こうりゅう)も近くまで来ている。姿を見せるのも間もなくだろう」

「ふん、どうせ隠れ家が見つかって逃げて来たのだろう。天獣といえど、今や逃げ場はここしかない。相変わらず見栄っ張りだな」

「くっ!? 何を言うか紫死鳥(ししちょう)! シロさんの前でそんな事を言うんじゃない!!」


 シロ以外の前ではいいのか。


「はぁ……まぁ、ようやくこちらの戦力が整ってきたな」

「首を長くして待ってたってかぁ? まぁ、ヤツ程じゃないがな」


 トゥースの視線の先には、何かがいた。

 細長い身体が大地を這っているのだ。何だよ、示し合わせたかのように揃うな。

 獣の感性って独特だし、天獣故に揃ったのかもしれない。


「あら奇遇ですね」


 黄龍(こうりゅう)のこの切り出し方にも違和感がある。


「あぁ、久しぶりだな黄龍(こうりゅう)


 あの戦争の後、多くの人間と触れたのかもしれない。ならばこの性格変異にも納得がいく。トゥースと面識があるようだから、もしかしたらコイツの影響もあるかもな。

 しかし、神様が言った『俺の軌跡』か。今、その軌跡がトウエッドに集結しつつある。


「微力ながら、魔王との決戦に参加させて頂きます」

「アズリー、真に受けるな。『一人じゃ怖いから仲間に入れてくれ』だ」


 紫死鳥(ししちょう)の翻訳も、あながち間違っていないかもしれない。


「まったく、情緒も何もないのですね、アナタは」

「何だ、この五千年で結構仲良くなったんだな?」

「いえ、紫死鳥(ししちょう)さんが何度も私たちの巣を訪れて勝負を挑んできたもので、顔を合わせる機会が多くなっただけです」


 総じてそれを仲良くなったというんだ。

 徐々に集まる伝説たち。周囲の人間は、それを緊張の面持ちで見守る事しか出来ない。

 トゥースに近い実力者がこれだけ集まれば、その実力差と存在の違いに萎縮してしまうのは仕方ないが…………、


「リナお姉ちゃん! あれ、飛んでる!」

「亀さんだね、ティファ!」


 我が弟子たちの胆力は、一体誰に似たのだろう。


「私も早く飛びたいですー!」


 天獣の特性……か。

 黄龍(こうりゅう)は長い身体を這わせた方が早いだろうし、灰虎(はいこ)も似たような理由で走ってるんだろうな。見たところ飛行特性を活用しているのは黒亀(こっき)くらいなのか。

 確かに、雄大ではあるが、そこまで速くない。生身であれ以上の速度が出るのであれば、飛ぶ必要性はないのか。

 ポチが覚えたとしても、飽きるのは早そうだな。

 南門の前にゆっくりと着地した黒亀(こっき)がジロリと俺を見る。


「久しいのう、(わっぱ)

「お久しぶりです」


 この人はブレないな。

 まぁ、近付きたいと思う人があまりいないのかもしれない。

 面倒くさがり屋っぽいし。

 黒亀(こっき)に関しては紫死鳥(ししちょう)も何も言わないところを見るに、そういう事なのだろう。


「なんじゃトゥース。まだ生きとったのか」

「さ、全員揃ったな。アイリーン、状況を説明してやれ」


 黒亀(こっき)にはトゥースも無視か。

 仲が悪いのだろうか?

 そんな事を考えていると、紫死鳥(ししちょう)が俺の隣に飛んで来て耳打ちをした。


「過去あの二人は喧嘩してな。その時はトゥースも若く惜敗したのだ。が、それ以降トゥースが強くなると、黒亀(こっき)は全ての勝負を断ったのだ」


 なるほど。ずる賢い爺さんって訳か。

 勝ち逃げされたままなんだな、トゥースは。

 今戦えばトゥースの方が強いのはわかりきってるが、過去の勝敗までは拭えない。

 黒亀(こっき)は逃げ続ける限りトゥースにデカい顔が出来る。

 老練というやつなのだろうか。勝負事より戦略向きだな、あの亀の爺さん。


「おいおい……住民までアイツら見に来たぞ?」

「これでまた増長するな、ヤツら」


 紫死鳥(ししちょう)の苦言を聞きながら、俺はたははと息を吐くのだった。

コミック アース・スター様にて荒木風羽先生による『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ と、ポチの大冒険』の第21話が公開されております。


あんよが上手なアズリーを是非見てやってください・x・b

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