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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第十二章 ~地獄編~

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394 想定外の復活

「も、もしかしてこれって……」


 ポチたちに追いつき、部屋に入る。

 そこにあったのは、やはり一枚の手紙。

 俺はそれを取り開く。

 しかし、その瞬間、俺たちを大きな地震が襲う。


「っ!? な、なんだこりゃ!?」

「強い魔力の反応があります! これは一体……!?」


 リナは地にしゃがみこみながら肩を抱えた。

 そしてそれはフユと春華(はるはな)も同じだった。


「結構やべえ魔力だな。どうするアズリー!?」

「何が起こってるかは俺たちが見てくる! 他の皆はこことトウエッドを繋げて財宝を頼む! ポチ! 行くぞ!」

「アウッ!」


 リナ、フユ、オルネルの三人がここに来てくれたのは助かった。

 それだけで三つの空間転移魔法陣をトウエッドと繋げる。

 向こうと繋げれば、向こうの魔法士がこことトウエッドを繋げるだろうから、それだけ運搬は早く済むだろう。

 オルネルならば指示も的確だろうし、ブルーツと春華(はるはな)には――――


「おっしゃあ! そら行けポチィ!!」

「ポチさん! よろしくお願いしんす!」

「はっ!?」

「んもう! 特別なんですからね!」

「ちょ、おい! 何言ってんだポチ!?」

「銀には銀で大事な任務があんだよぉ!」

「そ、それって……もしかして……!?」

「アズリーさんの護衛でありんす!」


 馬鹿な!? まさかブレイザーの指示っ? いや、これはもしかしてアイリーンやウォレンの指示か!?


「んま! アズリーの方が当然つえーんだが、弾除けくらいにゃなるだろっ!!」


 この二人の行動を否定しないところを見ると、ポチも知っていたな!?


「おいポチ! 二人を下ろすんだ! おい、聞いてるのか!?」

「そうはいきません! もう走り出しちゃいましたから! そう、止まれません!」

「にゃろう! 二人に何かあったらどうすんだよ!」

「マスターに何かあったらどうするんですか!!」

「っ!?」


 ポチは走る事を止めず、俺に強い言葉を投げた。

 それは、あまり聞いた事のない、ポチの真剣な言葉だった。


「マスターは一人しかいないんです。マスターが死んじゃったら皆死んじゃうんです。でも、この魔力の揺らめきは私たちにしか対処出来ません。だから私たちは行くしかないんです。最悪、私がちゃんと盾になってあげますから、ちゃんと逃げてくださいね!」

「っ! 逃げるか馬鹿犬!」

「そこはちゃんと逃げてください! いいです! お二人に頼みますから! ぷんぷんです!」

「はははは、そりゃいい。ま、俺より先に殺させやしないさ。それだけは約束してやる」

「どうせ振り払われてしまいんすが、最期の時までお供しんす」


 くそ、皆して俺の言う事なんか聞いちゃくれない。

 だが、ポチの言う通りならば、急がなくちゃいけない。


「…………ったく、帰ったら説教だかんな!」

「えぇ! マスターが皆さんからお説教くらっちゃうんですから!」


 ……口の減らない犬ッコロだ。


「ところでマスター!」

「ぁんだよ!」

「このルート……どこか記憶にあるんですけど、気のせいでしょうか!?」

「奇遇だな! 全っ然気のせいじゃねぇよ! その時も俺の背中に人が乗ってたしな!」

「やっぱりそうですよね!? これそういうルートですよね!?」

「おいおい、一体どういうこった!? 俺たちにもわかるように説明しやがれ!」


 ブルーツが俺に情報を催促してくる。

 真後ろにいる春華(はるはな)もそれが気になるようだ。


「俺たちが過去、クッグの村にやって来た後、事件は起きた。ポルコ・アダムスの娘フェリスが行方不明になった」

「そういやアズリーの話の中にそんな話もあったな」

「確か、ブライトさん? と一緒に炎龍の山に行ったんでありんすね?」

「いやいや、これだけ山に近付けば、戦士の俺だって潜んでる奴の魔力の多寡はわかる。この先に炎龍――ロードドラゴンがいるような気配はないぜ? ……待てよ?」


 ブルーツの声が震えたのがわかった。

 そのブルーツの反応に、遅れて春華(はるはな)が気付く。


「そ、そうでありんす……確かアズリーさんのお話には続きがありんした……」

「確か……炎龍たちは守ってたんだよな、住処を」

「そうです。私たちはその住処を幸か不幸か、いち早く叩く事が出来たんです。けれど、今回は少々出遅れたようです。この魔力こそ――」

「――炎龍王、獄龍ヘルエンペラーのもの……」


 魔力のない俺には、ヘルエンペラーの反応がどれ程のものなのか把握出来ない。

 だが、ポチの口ぶりではどうにかなりそうでもある。

 生まれた直後ならば問題ない。大丈夫、俺たちは強くなった。

 今ならあの時みたいに罠がなくとも戦う事は出来る。


「ポチ、急げ!!」

「アオォオオオオオオオオオオンッ!!」


 ポチの速度が上がり、山を駆け上がる。

 ポチは、まるで木々を透過したかのように真っ直ぐ山頂まで向かった。

 そしてポチも気付いたようだ。自分のレベルの力に。

 肉体的強さであれば、素の状態で聖戦士の称号があった時に近い。

 つまり、魔法や特殊技能さえ使えれば、俺たちは過去の時代の力を超えたという事。

 ガスパーや魔王との戦闘を前に、ここまで戦力を上げられたのは大きい。

 後は俺の魔力さえ戻れば、レオンだって救出出来るはずだ!


「山頂ですー!」


 山頂より高く跳び上がり、余裕すら見せるポチ。

 俺たちはポチの背中から跳んで火口付近に着地する。

 すぐにポチも火口まで着き、走り回る。


「どこ!? どこですー!?」

「魔力の反応は!?」

「下じゃねぇか!? 春華(はるはな)わかるか!?」

「あい、ブルーツさん! 下から強い魔力反応がありんす!」

「「という事は――」」


 火口の中に見えるマグマの海。

 俺たち四人がおそるおそるとのぞき込む。

 ――瞬間、俺たちの視線を燃える線が走って行った。


「飛ばれちゃいました!」


 天に舞い上がる細長い胴体。発光する黄金の瞳。艶やかなレッドメタリックの鱗。体表から流れ落ちる溶岩は、まるで兵器。あれはマグマから持ち上がったものじゃない。どういう構造をしているのかわからないが、おそらく身体からの分泌物。

 あれが街の上空を飛ぶだけでどれだけの被害が出るかわからない。

 全長十五メートル程の幼体ではあるが、内に秘める実力は本物だ。


「あれが炎龍王――」

「――ヘルエンペラーでありんすか……」


 ブルーツと春華(はるはな)も奴の異常性に反応している。

 既に二人からは冷や汗が見てとれる。

 たとえ生まれたばかりだとしても、二人から見れば強敵だ。

 だから俺とポチで何とかしなくては。


「マスター、これじゃあ届きません。どうしましょう!?」

「そうだな……」


 確かに魔力の台(マジックテーブル)空中浮遊魔法(レビテーション)も使えない今じゃ、ヘルエンペラーの対抗策がない。

 アイリーンですら魔力の台(マジックテーブル)はまだ不十分だ。

 せめて紫死鳥(ししちょう)でもいれば、話は変わったかもしれないのに。


「っ! やべぇ、気付かれたぞ! 春華(はるはな)!」

「あい!」


 ブルーツの声と同時に、春華(はるはな)は俺の正面に立った。


「おい! こいつなら大丈夫だって!」

「いいからそこで見てろよ! 少しは俺たちも頼ってもらわねぇとな! ふん!」


 下降してくるヘルエンペラー。

 特殊技能により身体能力が向上したブルーツが、それを正面から受け止める。


「かぁああああああああああああっ!!」


 凄い、幼体とはいえヘルエンペラーの一撃を受け止めた。


「ぬわっしゃあああ!!」

「おぉ! 弾き返した!?」

「ブルーツさん凄いですー!!」


 流石、今や白銀(しろがね)にも劣らない銀の特攻隊長なだけはある。

 あの戦争で一番貢献したのは銀だと言っても過言じゃないからな。

 この成長も考えてみれば納得かもしれない。

 だが、相手も流石はSSランクを超えると言われる獄龍ヘルエンペラーだ。

 かすり傷一つ付いていない。それも魔王が復活しているこの時期のヘルエンペラーだ。

 強度はあの時以上だろう。


「手ぇ出すんじゃねぇぞ、アズリー!」

「あぁ、俺は(、、)出さないよ」


 下手に動けば春華(はるはな)に余計な被害が出るかもしれない。

 という訳で、ポチ……お前の出番だぞ。

 そんな俺のアイコンタクトを拾い、ポチが跳び上がる。


「エアクロウッ!!」

「あ!? ポチ、てめぇ!?」


 ポチの大気を引き裂く風の爪は的確にヘルエンペラーの胴体に向かった。

 ブルーツには悪いが、早めに決着をつけた方がいい。

 あの速度、あの威力であれば、確実にヘルエンペラーにダメージが入る。

 そう思った矢先だった。


「「っ!?」」


 ポチのエアクロウは、急に方向を変え、天を目指し消えて行った。


「うぇ!? 何でですか!? 私何もしてませんよ!?」


 放った張本人がそう言ってるのだ。

 しかし、何故だ。ヘルエンペラーでさえも、何が起きたのか理解していないようだ。

 全員が固まる中、俺たちは更なる硬直を味わう事になる。


「危ない危ない」

「「っ!?」」


 宙に響く聞き覚えのある声。

 言葉ではそう言いつつも落ち着き、余裕のある通る声。

 硬直が解けたポチとブルーツは跳んで後退し、春華(はるはな)と三人で俺を囲うように着地した。

 皆の視線は同じ。ヘルエンペラーの腹部。その前に何かいる。


「空間が……歪んでいきんす……」


 春華(はるはな)の情報から、俺はそいつがインビジブルイリュージョンを使っているとわかった。


「姿を見せやがれっ!」


 ブルーツの剣風が飛ぶ。

 殺傷性がないからか、先程のエアクロウのようにそれが弾かれる事はなかった。


「やれやれ……まさか、こんなところで出会うとはな」


 インビジブルイリュージョンが解け、()の姿が露わになる。


「ガ、ガスパー……!」


 奴は一体何をしにここへ……!?

コミック アース・スター様にて、荒木風羽先生による、『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ‬ と、ポチの大冒険』の第19話が公開されております。

今回はアズリーとアイリーンの「性格が悪い対決」です。

アイリーンがめっちゃ可愛いので是非ご覧になってください。



また、コミックスの三巻も店頭に出回り始めているようです。一応、正式な発売日は2/12です。よろしくお願い致します。


またまた、ノベルの十一巻の発売日も2/15なので、そちらも是非よろしくお願い致します。

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