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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第十一章 ~新生・魔法教室編~

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345 賢者のすゝめが書けない

「お? 戻って来たなっ。ハハハハ、皆、良い面になってるじゃねぇか」


 ブルーツはいつもの調子でパーティクエストが終わった俺たちを出迎えた。どうやらブレイザーも戻ってきたようだ。席に着きライアンと話している。

 レイナ、アドルフ、ナツ、そしてシャイニーは苦戦しながらもランクSモンスターを倒した。これは今後冒険する上で、相当な自信になるだろう。そして同時に、上位モンスターと戦う時の警戒にも繋がる。

 こうして考えて見れば、俺の中での過去にもそういった事があったと改めて気付かされる。そして後者は、今後も続くものと自戒(じかい)した方がいいだろう。


「只今戻りました、リーダー、長」

「うむ、アズリー殿の下で、短いながらも良い経験を積んだようだな」

「はい、本当に素晴らしい方です」


 レイナは嬉しそうに微笑み、ライアンもそれに釣られるように続いた。

 しかし、俺が聞こえる場所で、俺を褒めないで頂きたい。嬉しいのは嬉しいのだが、身体全体がむず痒くなる。


「素晴らしいっ!?」


 裏返った声でポチが驚愕した。


「レイナさん!? だだだだだ大丈夫ですかっ!? マスターに変な事されちゃったんじゃないですよねっ!? マスター! レイナさんになんて事をしてくれちゃってるんですか! 早くリカバリーを!」

「自分で出来るだろ」

「はっ! そうでした!」


 そう言ってポチは、寄り目になりながら舌でリカバリーを宙図(ちゅうず)した。が、肝心のレイナは既にいなかった。どうやら、俺の言った通り、ベティーに戦闘法について聞いているようだ。


「ほれ、アドルフも行ってこい」

「は、はい!」


 俺がアドルフの背中を叩くと、アドルフは俺に深く一礼した後、ブルーツの方へ小走りに向かって行った。その後、ブルーツは胸にドンと手を置き、何かを快諾したようだった。その何かが、何なのかは簡単にわかるけどな。

 思わずくすりと笑ってしまった俺の前に、ブレイザーとライアンが歩いて来た。ブレイザーは俺の肩に手を置き、そしてライアンは静かに目礼をした。


「世話をかけたな、アズリー」

「せめて相談してから送り出して欲しかったですね」


 俺は、現場にいなかったブレイザーではなく、ライアンに目を送って言った。するとライアンは困った笑いを浮かべながら答えた。


「いや、ははははは。やはりアズリー殿には土壇場(、、、)の方がいいと思いましてね」


 ライアンがとても懐かしい事を口走った。そうだった。ライアンは俺に魔法大学の入学を勧める時、確かに土壇場で告げたのだ。まぁ、それもあそこで効果の無いリカバリーをレイナに発動している犬ッコロの入れ知恵なんだけどな。


「はぁ、お役に立てたなら何よりです」

「ふっ、今度礼をさせてもらう」

「何言ってるんだ、これくらい、今までポチズリー商店を手伝ってくれた事に比べたら屁でもないよ」

「そうか。では、今後もその返済にあててもらおう」

「うぇっ!?」


 ブレイザーは冗談とも言えないような真顔でそう言った。

 いや、確かに銀には返しきれない恩があるが、まさかこうも目の前で言われるとは思わなかった。ったく、ブレイザーもなんだかんだでリーダーが板に付いているじゃないか。こりゃ軽率に話し過ぎたかもしれないな。


「ブレイザー、ナツも頑張ったよー!」

「そう、ナツもシャイニーも頑張ってた。ちゃんと褒めてやれよ」

「ん」


 ブレイザーはそれだけ言って、ナツの頭にゴツゴツの手をぽんと載せた。ナツは雪でも降って来たかのように首を引っ込ませ、嬉しそうにその手を掴んだ。

 本当にいい関係だよな、この二人って。


「さっ、それではアズリーさんが戻って来んした事ですし、早速向かいんしょう」


 俺の右腕に抱きつきながら言ってきたのは春華。はて、一体どこに向かうというのだろう? もしかしてまた面白いパーティクエストでも見繕ったのだろうか?


「うん、行こう行こう!」


 そして左手をとってきたのはマナだった。ふむ、という事は俺と春華、そしてマナでパーティを組むのか。しかし、そうなると三人は少ないんじゃないか?

 とかそんな事を考えていると、俺の背中を風が歩いた。首を横に捻って背後を見ると、そこではリーリアが俺のマントの端を掴んでいたのだ。


「この四人で?」


 目の端でケタケタと笑い、腹を抱えながら俺を指差すブルーツだったが、俺は何故笑われているのか皆目(かいもく)見当がつかなかった。

 しかしリーリアは何故マントを掴んだのだろう。これではまるで手綱を握られたペットのような扱いである。

 引っ張らないでくれるのは有難いのだが、引っ張らないのであれば別に掴む必要はないだろう? あの、すみません、リーリアさん? 目が怖いんですけど? どっかりと据わってらっしゃいますよ、その綺麗な瞳。


「うふふふ、こっちでありんすっ」

「そうそう、ちゃっちゃと向かっちゃおう!」


 嬉しそうな両脇の二人にぐいと引っ張られ、俺は冒険者ギルドを連れ出される。後ろから付いて来ているリーリアの圧力は、とんでもないものだ。この二人はこの圧力を受けて平気なのだろうか。

 すると、俺の右前方を歩き始めたポチがクスクスと笑い、口をパクパクとさせた。何でこんな時に読唇術なんだ? えーっと、何々?


 《お、ん、な、は、つ、よ、し、で、す、ね》


 ふむ、確かに俺の周りの女性は強い人間が多いな。(むし)ろ、後ろで俺の手綱(、、)を握っているリーリアなんて最強の部類だろう。ポチだってそうだ。

 しかし、何故今ポチがそんな事を? 念話連絡で済む話をわざわざ読唇術で?

 むぅ、わからん。

 それから俺は、エッドの出口ではなく、中央区の方に連れられて行った。

 やがて、屋敷囲(やしきかこ)いばかりがある通りに出た。十字路だというのにこの圧迫感は凄いな。これもトウエッド文化の特徴という訳か。


「こっちでありんすっ」


 春華がこちらを向く度に、鼻腔をくすぐる匂いが俺を脱力させる。女の子のこういった匂いに弱いのは俺だけなのだろうか。もしかして俺が免疫あるのって、ポチの獣臭さだけなんじゃないだろうか。

 いや、俺だけが弱い訳じゃない。きっと全ての男共通のはずだ。むぅ、賢者のすゝめにこの項目を書きたいのだが、両手が塞がっている。右手に持つドリニウム・ロッドをポチに持ってもらえれば、何とかなるかもしれないが、そうしたら春華は腕じゃなくて手をとってきそうだ。


「ん、どうしたのアズリー?」

「どうしんした、アズリーさん?」


 俺の難しい顔に気付いたのか、マナと春華が身を低くして俺を覗き込み、


「どうどう」


 リーリアはついに俺を家畜とした。

 ポチは目の端で転げまわりながら爆笑している。ぬぅ、何故か腹が立つ。しかし、こう女性に囲まれては何も言えないのは何故だろう。いつものようなギルド内なら言えるのに……!


「あぁ、いや、何でもないよ」

「何でもない訳ありんせんっ」

「そうそう。アンタのそういう顔、困った時にしか出ないわよ」

「ぐっ、そういう事よ。ふん!」


 リーリアは、二人に全部言われてしまって何も言える事がなくなったのかもしれない。いや、そういう顔をしている。

 しかし、あのリーリアが「ふん!」か。魔王ルシファーを倒した時なら絶対に言わなかっただろうな。その数十年後に結晶化したと聞いたし、本当に丸くなったな。


「あ、ありがとう……ございます。で、でも本当に大丈夫だから。自分で何とか出来る事だし」

「そお? でも困ったらちゃんと言うのよ」

「はい。いつでもお手伝いしんす」

「ど、どうどう……」


 口を尖らせるリーリアは本当に何がしたいのだろうか。いや、しかし、心配してくれる仲間がいるのは本当に素晴らしい事だ。あそこで転げ回っているどこかのなんちゃって天獣とは訳が違う。

 それから俺はそのまま歩き、ついに中央区の端にある大きな屋敷に着いた。見上げる程という事でもない。しかし、見渡す程とにかく広い屋敷に、文化の違いを思い知らされる。


「お、来たなアズリー」


 すると、リードが俺たちを迎えた。


「あれ? 何でリードがこんなところに?」


 そういえば、冒険者ギルドにはリードの姿はなかったな。


「何言ってんだ、もう皆来てるぜ。さぁ、入れよ!」


 俺はブーツを脱ぎ、リードに案内されるままに屋敷の奥に入っていった。しばらく歩くと大きい広間に出た。そしてリードの言葉の意味がようやくわかったのだ。

 なんと、冒険者ギルドにいた銀のメンバーは、既にそこに腰を下ろしていたのだ。


「……あれ?」

「何だよ、気付かなかったのか? 春華とマナに頼んでわざわざ遠回りしてもらったんだよ。お前を驚かせたくてな」


 人差し指で鼻をこするリード。驚かせたい、とはどういう事だろう。

 すると、ブレイザーが立って俺を見据えた。


「ようこそアズリー。ここが俺たちの新しい家だ」

この度、『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』の第九巻を発売する事が決定しました。

そして同月発売という事で、『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ と、ポチの大冒険』の第二巻も発売致します。


前回のように同日発売ではないので注意してください。


漫画が、2018年6月12日火曜日に発売

原作が、2018年6月15日金曜日に発売です。


皆様、お間違えのないように、宜しくお願い致します。


漫画二巻、原作九巻の表紙を下の方に貼っておきますので、是非見てください!





















挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


漫画家の荒木先生曰く三大ヒロイン!

表紙見た瞬間に、私の携帯の待ち受け画面が決まりました。

ポチ、リナ、アイリーンの良さがたっぷり詰まった表紙だと思います。






次に原作九巻の表紙です!


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


武藤先生に私から表紙イメージを伝えさせて頂いたのですが、それ以上の仕上がりを見せてくれました。

銀のキーペンダントとリナの決意の瞬間ですね。

この一枚絵も素晴らしい!


待ち受け画面? いえいえ、今回の口絵(表紙の次のページにくるカラーイラスト)もやばいんす。まだ公開出来ないのですが、その口絵を待ち受け画面にしました。


因みに荒木先生の表紙はロック画面の待ち受けにして、武藤先生の口絵をホーム画面の待ち受けにしました。

へへへへ、私ゃ幸せもんやで。


そんな訳で!


コミカライズ版『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ と、ポチの大冒険』第二巻が、2018年6月12日火曜日に発売!!

原作小説『悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ』第九巻が、2018年6月15日金曜日に発売です!!


是非! 是非ご購入を宜しくお願い致します!






ありがたい事に、新作の『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』が、転生転移の日間ジャンル別ランキングの第三位になりました。既に1000件以上のお気に入り登録を頂き、嬉しい限りでございます。

後書き下のリンクから読めますので、是非読んでみてください。

また、感想やコメント、メッセージ等、お返事が出来ていませんが、ちゃんと読んでおります。時間を見つけて返信していく次第なので、今しばらくお待ちくださいませ。


アズリーも新作も、応援宜しくお願い致します!


ではでは!!!

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↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

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壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
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