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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第十一章 ~新生・魔法教室編~

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344 パーティクエスト

「あ、マスター帰ってきましたー!」

「おー、戻ったかアズリー」


 俺はポチとブルーツに出迎えられ、先程座っていた席に座った。


「それで、薫さんと潤子さんお元気でした?」


 俺の足下で嬉しそうに跳びながら言うポチ。

 そういえば、コイツ薫と潤子に対しては苦手意識なかったな?

 最初だけ怯えてただけか。ついそんな印象があったから置いて向かったが、次は連れてってやるか。


「いや、どうやら手続きをしないと会えないそうだ。念話連絡も繋がらなかったし、きっと忙しいんだろう」

「あれ? そうなんです? それは残念でしたね」

「どうやら冒険者ギルドから申請が出来るみたいだから、後でやっておくよ」

「かしこまりましたー!」


 俺とポチの話が一段落したと察したのか、アドルフが待っていましたと言わんばかりに近付いてきた。


「アズリーさん! 先程言っていたモンスター討伐の件なんですけど! 僕と一緒に是非!」

「ん? あぁさっき言ってたやつか。けどいいのか? パーティクエストってのは?」

「実はその事なんですけど、長と話してランクA組はアズリーさんと組むのがいいというアドバイスを受けたのです!」

「あぁ、銀の中でパーティを分けるのか。確かに俺やポチやリーリアがいると折角の鍛錬が出来ないもんな」

「そうなんです!」


 物凄く顔が近い。

 俺にそういう趣味はないのだが……いや、憧れられるというのも大変なんだな。


「って事は、俺とポチとリーリアは分かれてやるんだな」

「そういうこった。俺とライアン、リードはリーリアと行く」


 ブルーツがそう言うと、次にポチがその隣に座った。


「私は春華さんとマナさん、そしてベティーさんと一緒に女子会です!」


 モンスター討伐を女子会といえるセンスは流石ポチだと思う。


「って事は、俺はアドルフとレイナさん、そしてナツか」

「はい!」


 アドルフの元気な返事に、レイナが微笑む。

 確かにこのメンバーとはあまり討伐に行った記憶がない。親交を深めるにもいいかもしれないな。


「ナツ、アズリーに魔法見せる!」

「おう、楽しみにしてるぞ、ナツ!」

「うん!」


 しかし、ブレイザーは戻って来なかったか。

 まぁアイツは銀のリーダーだし、やる事は多いのだろう。


「そんじゃ、ちょっくら荒稼ぎに行くか!」


 そんなブルーツの掛け声に皆が応じ、俺たちはパーティを分けてエッドの門を出た。

 途中までブルーツたちのパーティと一緒だったが、彼らが横道にそれた時、俺たちは初めてパーティとして動き始めた。


「アズリーさん、パーティリーダーはいかがしましょう?」

「銀の時はいつもどなたがやっているんですか?」


 レイナにそう聞き返すと、レイナは困った顔を浮かべた。


「いつもはリーダーか、長がやっています。私も何度かやった事がありますが、正直得意ではないので、アズリーさんにやって頂ければと」

「わかりました。それなら俺が指揮します」

「ありがとうございます」


 レイナは歩きながら目礼し、そして微笑んだ。

 この人も相変わらずだな。そんな事を思っていると、俺の前に歩いていたナツがハウスを宙図(ちゅうず)した。


「――ほい、ハウス!」

「メェエエエ~」


 うおっ、あの特徴的な黒い角と太陽のような黄金の羊毛。

 もしかしてあれって……!


「ナツ、もしかしてそれってサンシープか?」

「うん、アズリーに見せたくてー! シャイニーっていうんだよ!」


 ナツは友達を紹介出来てとても嬉しそうである。

 そんなナツに、俺はうんうんと頷き、腰を落とす。


「初めまして。アズリーだ。よろしくな、シャイニー」

「メェエエエエ~!」


 獣の尊厳を選択した使い魔契約。確かフユのプラチナもそうだったな。ナツとフユの二人の使い魔がそう選択したのはなんとなくわかってしまう。

 二人共両親に色食街(しきしょくがい)に売られた身の上だ。仲良くなったとしても、せめて使い魔だけは自由に生きて欲しいという願いから。おそらくそういった気持ちが働いたのだろう。

 現時点では使い魔がそう選択するという説が有力だが、そう選択したのは、使い魔自身が主(あるじ)の心の内を知ったからなのではないか?

 なんにしても、ナツもシャイニーも、フユもプラチナも、優しい心を持った素晴らしい存在という事に変わりはない。


「メェエエ?」

「ははは、可愛いなシャイニーは」


 俺はシャイニーの頬を撫でながら自然と笑みが零れた。

 あぁ、本当に戻って来た実感がする。

 まだどこか過去に行ってた時の感覚が残っているのだろう。

 そんな感覚を振り払うように頭を振ると、アドルフが腰元の剣に手を当てた。


「何かいますね」

「ふむ、どれ? ほいのほい、鏡望遠視! ……ふんふん、ランクAのケルベロスが二匹。距離二百ってところかな?」

「おー、これすごーい!」

「後でナツにも教えてやるよ。アドルフ、レイナさん、ナツ、シャイニー。戦闘準備だ」

「「はい!」」

「うん!」

「メェエー!」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「はぁ!」


 なるほど、レイナの動きは悪くない。悪くないが、どうにもぎこちなさを感じる。この繊細で静かな剣の動きはまるでライアンのようだ。

 あぁ、そうか。だからぎこちないのか。


「くっ! せぃあ!」


 アドルフはやんちゃな剣だが、無理やり型にはめたような動きをしている。あの動きや顔から察するに、自分でも気付いてるのか? うーむ、違和感のある動きだ。


「そこ、シャイニー、ぱこーん!」

「メェエエエ!」


 凄い。サンシープってあんなに強いのか。後ろ脚でケルベロスの顎を砕いたぞ……。


「わっわっ? っ! あれ?」


 こてんと倒れたナツ。危うくケルベロスの頭の一つに噛まれそうになったところを俺が止める。


「こら、ナツ。散漫になってるぞ」

「あ、はは。ごめんなさい」


 俺はケルベロスの尻尾をぶんと振って遠方に投げる。

 ふむ。ざっとこんなところか。

 さて、少しはリーダーらしくしないとだな。アドルフの期待の目もあるしな。


「レイナさん。もっと動きを静かに。しなやかに動くより静かに動く事を意識してください!」

「は、はい!」

「アドル――」

「――はい!」


 うーむ、嬉しそうだ。


「今だけ教わった事より自分がやりたいようにやってみな!」

「あ……っ! わかりました!」


 やっぱり自分の戦い方に違和感を覚えていたようだな。銀の中で教わった事がごっちゃになって戦闘に集中出来ていなかったのかもしれないな。


「ナツ、シャイニーとの連携が甘い。互いに頼る戦いより互いを信頼する戦い方を意識しろ!」

「わかった!」

「メェエエエ!」


 そう指示すると、アドルフとナツ、そしてシャイニーは上手く動く事が出来た。

 しかし、レイナの動きはあまり変わらなかったのだ。

 ケルベロス二匹を倒した後、レイナに小声で話してみた。


「レイナさん」

「あ、あの……すみませんでしたっ」


 小声にしたのに完全に意味がなくなってしまった。


「あぁ、謝らないでください。そういう事じゃないんです」

「へ?」

「目標とする人が物理的に大き過ぎます」

「と、いいますと?」

「動きが完全にライアンさんです」


 俺がそう言うと、ナツとアドルフがくすりと笑い、レイナが耳まで真っ赤にした。


「あのあのあのあの、えっとですね。や、やっぱり目標は大きくないといけないと思って。その頑張ってはいるんですが、どうしても長のようには出来ず。えっと、本当にすみません!」


 言い訳が浮かばず、なんとか文字数と雰囲気で誤魔化された感じだ。

 面白い面もあるよな、この人。


「まぁライアンさんを目標にするにはいいんですが、動きまでは真似ない方がいいです」

「そ、そうなんですかっ?」

「そもそも体格が違いますからね。ライアンさんが大きな身体で動いた時、どうしても出来てしまう隙はどうしていると思います?」

「えっと、力……ですか?」


 何だ、わかってるのか。なら説明は簡単だな。


「そういう事です。レイナさんにはライアンさん程の力はない。だから同じ動きをすると、どうしても隙が大きいものになってしまうんです」

「そうでしたか……」

「そうなのです。レイナさんの身体に合った動きが理想的ですよ。ベティ―とか器用だし聞いてみるのもありかもです」

「はい。帰ったら早速聞いてみます!」


 おー、よかった。通じた通じた。


「そんでアドルフ」

「はい!」

「型の練習より実践的な練習をした方がいいな。ブルーツがそういうの得意だから教わるといい」

「あ、えっと、そういうのって聞いていいんですか……?」


 強くなっているとはいえ、あの動きはおそらく我流だ。チームといえど冒険者は見えない技術を重んじる。そんな固定観念が、アドルフの好奇心に制御をかけてしまったのだろう。


「大丈夫大丈夫。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥だ」

「はい!」


 しかし、魔法士である俺が気付くくらいだ。銀の古参連中が気付いてない訳ないんだが?

 いや、待て。もしかして外部の俺だから言えば伝わると思ったのか? うーむ、だからこのパーティ分けなのかもしれない。

 そんな事を考えていたら、マントをぐいぐいと引っ張られた。


「ねぇねぇナツはー?」

「メッ、メッ」


 気付けばシャイニーまで俺のマントを口で引っ張っていた。

 やっぱり、この二人も強くなりたいんだな。


「うーん、シャイニーの後ろ蹴りは強力なんだが、どうしても隙が大きい。だからナツがシャイニーの目になってやればいいんじゃないか?」

「おー」

「メー」

「あと小技だな。魔法も上手く使えば牽制が出来るから、それで相手の注意を引く。魔法を発動しなくても集中する魔力に、相手は意識を向けざるを得ないからな」

「そっか。発動しなくてもいいのか」

「そうそう。そういう事。そうすればシャイニーも動きやすくなる」


 俺はナツの頭とシャイニーの頭を撫でながらそう言った。

 直後、先程より濃い魔力が風で流れてきた。


「……いたな。今回の討伐目標、ランクSのスキュラクイーンだ」


 上体が女のスキュラ。その女王。

 ランクSの俺がパーティに入る事により、ランクAの三人でも上位ランクのモンスターと戦う事が出来る。

 皆は緊張しているが、悪い緊張感ではなさそうだ。


「さぁ、皆。おさらいも含めてやるぞ!」


 皆の瞳にやる気と気合いが満ちた瞬間だった。

新作始めました。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』

ファンタジー界での獣のポジションにかねてから疑問をもっていたので書いてみました。

ゴブリンとヒグマ。オークとヒグマ。

魔王とヒグマ。勇者とヒグマ。

獣の強さとファンタジー。そして色んなフィクションをまじえつつ、のらりくらりと書いていきます。

もちろん他の獣も出ますよ。

時間があれば、是非読んでみてください。先程8話までアップしました。

後書き下のリンクよりとべると思うので、是非ー!

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『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

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