291 ポチの疑問
2018/1/31 9話目の投稿です。ご注意ください。
「ふ……」
「何格好つけてるんですか、マスター?」
「ふはははははは! 大賢者アズリー、完全復活! 見ろポチ! あの朝日を!」
「結局夜出ないで朝になっちゃっいましたね、マスターのせいで」
「ぐぅ……! ふふふふ、ポチ君。予定は未定、そして未定とは別に順守しなくてもいいという事なのだよ!」
「では昨夜の件、戻ったらブルーツさんとかに話していいって事ですよね?」
「だぁあああああああああああ、違う違う違う! あれは約束。約束は守るものなんだよポチ君! ね!?」
「まったく、ものは言いようですね……」
そう、俺は昨日ポチに恥ずかしい一面を見られてしまった。
それは、是が非でも自分の墓の中にまで持っていきたい醜態とも言えるだろう。
大丈夫、俺が死ねばポチも長くは生きられない。秘密を知るポチと共に秘密を葬れるなんて一石二鳥じゃないか。
いやいや待てよ? ポチの口って固いは固いけど、ポチの意思とは関係なくポロポロ零れたりすんだよな……――――
「――――こうなったら呪言発破の魔術でポチに制約をかけてしまうか? それとも首をこうキュッと絞めて……あぁいやいや、ポカンと殴って記憶を……あぁそうだ、ちょうどメモリーエディットの魔法を作ったんだった! という訳でポチ――――あ痛っ!? おい! 何するんだよ痛いじゃないか!」
「何でそうなるんですか!? 大体マスターはいつもいつもそうなんです! 秘密にするような事でもマスターの意思とは関係なくポロポロ零れたりするんです! もう少し冷静に自分のあるべき姿を見極めるべきだと思いますよ! というか何なんですか、メモリーエディットって魔法は!?」
「なっ!? ポチ!? いつの間に俺の頭を覗き込んだんだ!?」
「その頭にもう二、三発、肉球スタンプを叩き込まないとわかりませんか!? 自分で言ってましたよ!」
「いつだよ!?」
「今ですー!」
駄目だ。今日は初っ端からポチとかみ合わない。
もしかしてポチも既に神によってメモリーエディットが施されているのか?
「仕方ないです。昨夜のマスターの泣きっ面を物語にしてリナさんに聞かせてあげましょう」
「ちょちょちょちょい! ちょい待ち! わかった! わかったよ! 《借り》でどうだ!?」
「む~……ん~~~~~…………うん、いいでしょう。では一つ貸しておきます。この貸しは大きいと思ってくださいね~?」
何て卑しい目だ。育てた主人の顔が見てみたいもんだ。
俺はポチの小言に小言で返しながら朝食をとった。
ところで昨日ポチに二百ゴルド渡した後、財布を開いていないのに百ゴルド足りない気がするのは気のせいだろうか?
はて? 昨日ポチがお金について何か言ってた記憶はあるが、いかんせん殆ど記憶がない。
ふむ…………きっとどこかで落としたんだろう。拾った人には是非有効活用して欲しいものだ。
「よーし、ほいのほい、オールアップ・カウント2&リモートコントロール!」
「それじゃあ今日の昼過ぎを目処にレガリアを目指しましょー! ぬん!」
ポチが巨大化すると共に、俺はその背に跨った。
「行きますよ!」
「よっしゃ! 飛ばしたまえポチ君!」
「アォオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ねぇ、ねぇマスター! マスターってば!」
「ふぇ? ん? なんだねポチ君?」
俺がそう聞き返すと、ポチは走りながら俺をじとりと見ていた。
むぅ、鳥になったせいか首がやたら柔らかくなってないか? コイツ。
「さっきから背中で何ごそごそやってるんですか? くすぐったいんですけど!」
「あぁ悪い悪い。ちょっと新しい魔法の構想を練ってたんだよ」
「それは一体どんな魔法なんです?」
「時空転移魔法。魔法名だよ。俺が使えないと元時代に戻れないだろう?」
「神様の力が弱まっているからですっ?」
また大声で笑われるのかと思っていたら、ポチはまともに返してきた。
何だよ、ちょっと嬉しいじゃねぇか、犬ッコロ……!
「あぁ、この時代での用事が済めばきっと俺の魔力も戻るだろう。戻った魔力量さえあれば、理論上時空転移は可能なんだよ」
「前覗いた時はちんぷんかんぷんでしたけど、一体どんな公式をっ?」
「基本的には空間転移魔法と一緒なんだけどな? そこに爆発的な速度強化魔法と、それに耐えうる防御魔法を同時展開して時間を超越するんだ」
その説明を終えると、ポチは急激に速度を緩め、遂には止まってしまった。
「おいおい、急がなくてもいいが日が暮れるまでには着きたいぞ?」
「それ、本当に大丈夫なんですか……?」
物凄いじとっとした目でポチが見てくる。
何だよ、全然嬉しくねぇぞ、犬ッコロ……!
「大丈夫大丈夫。……うん、多分これでいけるだろう」
「もう出来たんですか!?」
「だってある程度はこれまでにやってきたしな? それにまだやりたい事はあるんだよ」
「まぁた瞬間転移魔法とかいうんじゃないでしょうねぇ?」
言ったら何かまずいのか、犬ッコロ。
「ま、まぁそれもあるんだが、ちょっと特殊過ぎてな? これがまた難しいんだよ」
「何か、凄く輝いてますね……目が」
「だろう? 久々に燃えてきてな。もっともっとやれる事を増やしておかないと、白黒の連鎖の連中や、新しい魔王にも後れをとっちまうからな。ふふふふ、
夢は広がる! 果てしなく!」
「あ、そうでした! ちょっと気になる事があったんです!」
話題を逸らすように別の話題を持ちかけたのは何故だろう?
「気になる事?」
俺はポチの背中から一旦下り、近くの岩場に腰掛けた。
「ビリーさんの事です」
「ビリーさんが?」
「ビリーさんの使い魔ですよ。アイ・ドール! あれって確か『魔王の僕』って呼ばれてて魔王の近くに生息しているって話だったじゃないですか!」
「………………そういえば、ルシファーと戦った時、全然見かけなかったな? もしかしてポチ・パッド・ブレスの爆撃で吹き飛んでたとか?」
「流石にそれは無理があると思いますよ?」
ぬぅ、ポチにしては至極尤もな意見だ。
「あくまで言い伝えだからルシファーの魔王復活の時じゃなかったとか?」
「ん~、確かにその可能性もなくはないですが、だとしたら何でビリーさんがアイ・ドールを使役出来ているのかが……わからないんですよねぇ」
確かにこれは気になるところだ。
ビリーが悪魔に操られているとしたら、その時期に使い魔にしたって事か?
だとすれば元の時代にアイ・ドールがいた事が疑問だ。
書物で調べただけだが、アイ・ドールは魔王の体内から生まれるって話だったぞ?
一体何がどうなってるんだ? くそ、課題も謎も山積みだな……!
「もう一つあるんです!」
「まだあるのか!?」
「思い立ったが何とやらです!」
ったく、誰に似たのやら……。
「それで、何だよもう一つって?」
「現代で誕生するっていう新しい魔王って…………ルシファーじゃないんですよね?」
「あぁ、そういう事か。ん~、誕生っていうくらいだからそうだと思うけど、ルシファーがまた復活する可能性もなくは……ない……と、思う」
「何だか曖昧な返答ですねぇ~」
「しょうがないだろ。俺だってそんなに長く生きてる訳じゃないしな。俺もそれは神に聞きたかったんだけど、教えてもらう前に消えちゃったんだよ」
「五千年も生きて何が『長く生きてる訳じゃない』ですかっ。他の人に怒られちゃいますよ!」
むぅ、そうだよな。特にアイリーンとかに怒られそうだ。
そういえば、現代でのアイリーンの動向はどうなっているんだ?
その話は神との会話の中で出てこなかったな? 聞いておけばよかったか。
まぁアイリーンの事だ。どうせ学生たちを扱いているに違いない。
「さ、もう大丈夫だろ? そろそろ行くぞ!」
「はーい!」
そんなポチの適当な返事から数時間。
俺たちはこの時代で初めて王都レガリアを目視した。




