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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ 作者:壱弐参

第七章 ~聖戦士編・中編~

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211 孤立無援?

「ぬぅん、お腹一杯ですー……」

 幸せそうな声、そして生臭い吐息。
 ポチは今にも眠りそうな顔で俺の背へ登ってきた。

「おい、朝食食ったばっかだぞ」
「食後の睡眠は大事ですよ、マスター?」

 ったく、いつまで育ち盛りをやってるんだか、この犬ッコロは。
 俺はポチをおぶさり、チャッピーは俺の肩に擦り寄り、ブライト少年は苦笑しながら俺の横を歩いた。
 エッドの入口を出ると、ポルコがにこやかな表情で俺たちを迎えた。

「トウエッドの名物、お鮨はどうだったかね、シロ君?」
「もう最っ高でした!」

 ポチは何も気にせず答えたが、ポルコは何故俺たちが鮨を食べた事を知ってるのだろう?

「あの通りで君たちの食事を見かけたのさ」

 見透かしたように俺に言ったポルコは、そのままブライト少年を見る。

「レガリアにも立ち飲みの店がある。普段我々が見ない世界も面白いものだろう、ブライト君?」
「はい、とても勉強になりました。この知識と経験を持ち帰り、今後の役に立てたいと思います」

 当然の事ながらポルコは色んな知識を身体に取り込んでいる。
 だからこそ穏健派の最たるポジションにいられるのだろう。
 その後ポルコは「少し離れよう」と合図を見せ、俺たちは食後の散歩のように二十分程歩いた。

「さて、ここならいいだろう? ポーア君?」
「お気遣いありがとうございます…………ほいのほいのほいっ」

 空間転移魔法陣を設置し、起動を確認したところでポルコがくすりと笑う。

「まったく、惚れ惚れする程の宙図(ちゅうず)速度だね。私は未だかつてこれ程の宙図(ちゅうず)を見た事がないよ?」
「お世辞がうまいですね、ポルコ様」
「謙遜が下手だねポーア君?」

 すぐに入った意外な指摘に、俺は首を傾げた。

「へ?」
「君は上手く隠せてるかもしれないが……ほら、シロ君を見てごらん?」

 ポルコの指差す方には、鼻高々に喜ぶポチの姿があった。
 知ってる知ってる。こういうちょっとした駆け引きの際、アイツは俺の弱点なんだ。
 しかし嬉しそうだなポチのヤツ。

「まぁ、話は屋敷でも出来るだろう。見つかってもまずい。早いところクッグ村へ戻ろうではないか」
「そうですね」

 苦笑しながら答えた俺は、ポルコ、ブライト少年、チャッピーが転移していくのを静かに見守った。
 そして鼻が高いままのポチが魔法陣の中へ入った時、その表情が一変した。

「っ!?」

 ポチが転移を始め、身体が消えていく中、俺に伝えたのは――鋭い視線。
 視線は消えながらも俺に警戒の度合を伝え、ポチが見ていた視線へ俺が振り返った瞬間、頭上から降り注ぐ強力な火の玉。

「うぉっと!?」

 かろうじてかわした俺は杖を構え、魔法の発動位置を探ろうとした。
 しかし探るより早く、俺の正面に小規模編成の戦士たちが現れた。
 正体はわかっている。これはチキアータ率いるダグラス家の人間。
 魔法士(チキアータ)はいない。おそらく後方に隠れているな。
 戦列をかきわけ中央に現れたのはディノ。そして後方の宙に浮かぶコバルトドラゴン。ならあそこら辺にチキアータがいるか。
 くそ、ギリギリまで隠れてたな。せっかく作った空間転移魔法陣が消滅しちまった。
 うーむ……ここは、ディノの性格を有効活用するか。

「どーいう訳か知らんが、あの犬もアダムス家のオヤジも消えちまった。お前ぇ、一体何をしやがった? あぁん?」
「やっ、久しぶりだなディノ」

 既にアダムス家の俺の部屋へ転移したポチたちの救援は期待出来ない。
 この人数を相手に逃げるってのは中々に骨だ。上手い事ディノを誘導してこの場からの脱出をはかる。

「そんなに慣れ親しんだ覚えはねぇっつーのっ」
「チキアータさん、いる?」
「てめぇ! 話聞いてんのかくらぁっ!!」

 いい感じに熱くなってくれている。
 他の戦士たちは俺との実力差からか、緊張が見て取れる。

「ちぃとは強くなったみたいだが、この人数相手に生きていられると思ったら大間違いだぞ、あぁっ!?」

 よし、ここで――――

「落ち着きなディノ」

 …………流石、冷静だな……チキアータ。
 覇気すらも感じるチキアータの強く低い声に、ディノが一気に冷静さを取り戻した。
 巨体とは言えないが人より大きいディノの身体を盾に、閃光魔法を使って逃げようと思ったが、チキアータの言葉でディノが動かなくなったんじゃ、もうこの策は使えない。
 何より、チキアータが前に出てきた事で、強敵コバルトドラゴンの視線がより鋭くなってしまった。

「お望み通り出てきてあげたわよ、ポーア君?」
「今日はミャンさんはご一緒じゃないんです?」
「いつも一緒って訳じゃないのよ」
「へぇ……それは知りませんでした」

 この前仲良さそうに腕組んで歩いていたのを忘れてないぞ、という視線を向けると、チキアータは少し顔を赤らめて俺を睨んだ。

「それで、何の御用でしょうか?」
「わかってるくせに。ブライト君はどこかしら?」
「いませんよ。少なくともココ(、、)には」
「回りくどい答えは嫌いなの。吐かなきゃ痛い目みてもらう事になるけど、それでいいの? すっごく、痛いわよ?」

 自らの唇を舐めながらチキアータは杖を構える。同時に周りの戦士たちも剣を構えた。
 そしてディノが姿勢を低くし、今にも跳びかかろうとした時、俺は地を蹴って後方へ跳び退いた。

「逃がす訳ねぇだろっ! しゃああああああああっ!!」

 逃げるしかねぇんだよ!

「ほい、オールアップ!」

 ディノを筆頭に、戦士が声を上げて迫る中、チキアータは悠々と宙図(ちゅうず)を始めた。
 幸いな事にコバルトドラゴンは動かずに俺の動きを追っているだけだ。
 おそらくあのコバルトドラゴンの中で、チキアータの護衛が最優先なのだろう。

「ふんぬっ!」

 即座に剛力、剛体、剛心、そして疾風と軽身を発動した俺は、迫るディノの鋭い牙を見て恐怖を覚える。
 あー怖い。あんなのに跳び込みたくないものだ。
 足場を確保し、ディノの両脇にいる戦士へ向かって杖を向ける。

「ポチ・パッド・ボム!」
「「なっ!?」」

 スウィフトマジックによって不意をつかれた戦士たちは減速、停止、後退。
 よし、予想通りの動きを見せてくれた。
 弾け飛ぶ大地の間を縫うようにディノが前進を続ける。

「ちっ、やはり宙図(ちゅうず)してる気配がねぇ。一体どんなカラクリだってんだっ!」
「つべこべ言わずにしっかり合わせなさい!」
「わーってるよ!」
「はっ! フルスパークレイン&リモートコントロール!」

 雷系の大魔法……を、俺の背後に向けてっ?
 なるほど。直接当てるより、ディノのぶちかましで俺を後方へ飛ばし、当てさせるつもりか。
 つまり俺は正面に迫るディノと……――やるしかないっ!

「だぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!! ほいぃいいいいいいいっ!!」

 ぐぉおおおおおおっ! 何て重い体当たりだ、こんちくしょうめっ!

「ば、馬鹿なっ!? 俺様の体当たりを…………耐えやがったっ!?」
「耐えるばかりじゃないんだよっ! フルパワーだ、おらぁあああああああっ!!」
「何ぃっ!?」
「世界に名を轟かせろ、広背筋(こうはいきん)っ! 大地を統べろ、三角筋(さんかくきん)っ! (こら)えるんだ、腹直筋(ふくちょっきん)っ!! 押し返せ、大臀筋(だいでんきん)っ!! 進め、進め、大内転筋(だいないてんきん)っ!! 揺るがせ、下腿三頭筋(かたいさんとうきん)っ!!」
「馬鹿な……馬鹿な馬鹿な馬鹿なっ!?!?」
「ぶ…………ぶっ潰せっ!! 上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)っ!!!!!! おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぬっしゃあああああああああああああああああああああっっっ!!!!」

 俺は賢者の全筋肉たちを総動員させ、ディノをチキアータ目がけて投げ飛ばした。

「嘘でしょっ!?」

 チキアータが驚きながら後方へ跳び、コバルトドラゴンが身体を使って優しくディノを受け止める。

「愛してるぜぇ……上腕三頭筋じょうわんさんとうきん……! み、見たか! 賢者の賢者による最強魔法を!」
「どこが魔法よ!? フレアシュート!」

 知らない魔法だ。……これはおそらく超濃縮された火魔法。威力は大魔法級……ならば――、

「ほほい! 八角結界!」
「この速度を結界魔術で捉えるですってっ!?」

 何だろう。身体が物凄く軽い。もしかして称号消しのおかげ?
 いや、それだけでこれほど実力が変わるものか?
 おそらくそれ以外の何かが俺を助けている。
 これ程の戦力、これ程の数を目の前にして余裕さえ感じられる。
 一体何が? 薫さんと潤子さんと話した事がきっかけで一体何が起きた? あれ……――――――もしかしてっ!
 咄嗟に鑑定眼鏡を反射発動し、自分の情報を見た時、それは確信へと変わった。

 …………聖戦士(仮)が、【聖戦士候補】へと進化している。
ちょっと強くなりました。
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