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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ 作者:壱弐参

第七章 ~聖戦士編・中編~

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203 現れた災厄

「「あ」」

 ポルコとの待ち合わせの場。旅籠屋の東源宿(とうげんしゅく)への帰り道。
 俺たち三人の前に買い物かごを片手に持ち、少女と手を繋ぐ女が目の前に現れた。
 和装だったが故、一瞬誰だかわからなかった。どうやら相手も似たような理由で一拍遅れて気がついたようだ。
 正面で見合い、互いに間抜けな声を出して気付いた時、俺たちも相手も後方へ跳び退いた。

「あ、あらお久しぶりね、ポーア君? それにシロちゃんに……チャッピーちゃんだったかしら?」
「やぁ、チキアータさんじゃないですか。……仲、良さそうですね?」

 跳び退いた後もミャンと手を繋いだままのチキアータは、恥ずかしそうにその手を離した。
 どうやらディノはいないようだ。
 ポチとチャッピーはエッドに入れたが、流石にあのサイズのモンスターを入れられなかったか、もしくは未だ検問で見張っているのか。
 チキアータは背にミャンを隠し、俺たちの出方をうかがっているようだ。
 ふむ、以前のような余裕は感じられない。
 それもそうか。あれから俺たちは強くなったし、相手の戦力はチキアータのみ。
 ミャンもブライト少年程には成長しているようだが、今の俺たちの相手じゃない。
 もし戦闘になったとしても、ポチ一人でお釣りがくるかもしれない。

「和服、似合うじゃないですか。あの大胆な服より、そっちの方がいいと思いますよ」
「それはどうも。まったく、どうやってエッドに入ったのかしら?」

 流石に手の内は見せられないだろう。

「先生、前が見えません」
「あなたはいいから黙ってなさい」

 前を覗き見ようとするミャンを制止するチキアータ。
 その間、ポチが俺に耳打ちをしてきた。

「マスター、何だかバツが悪いというか何と言うか、何だかタイミングが悪いような気がします」
「母上、私もバツがマルだと思います」

 チャッピーは言葉の意味を理解していないようだが、確かに相手の分が悪すぎるから、俺たちもここに居づらい。
 なんだろう。人間相手だというのもあるが、こんな偶発的な出会いだと、戦闘を起こす気にもならないな。
 とりあえず、正面から逃げるか。

「あ、シロ。アレを見てごらん」
「ナンデスカ、マスター」
「ナンデショウ、チチウエ」
「ほら、夕日がしずんでいるよ」
「ホントウデスー」
「ホントウダ」

 俺は空を指差し見えたものを見えたまま語り、ポチとチャッピーは下手糞なアドリブで続いた。
 顔を背けながらチキアータの脇を通り抜けようとしたら、チキアータは不可解そうな顔をこちらに向けた。

「……ねぇ、何のつもり?」

「さすがにこの状況では戦えないでしょう?」とは相手方の弟子の前では言えず、俺はチキアータにそう念話連絡をした。

『覚えておきなさい……』

 と、いつぞやチキアータに言ったセリフが返って来た時は噴きだしそうになったが、『では貸しという事で』と爽やかに返答すると……無反応だった。
 その後、東源宿までの道のり、ポチは鼻息を荒くして喜んでいた。

「いやぁ、なんだかスカっとしましたね! 前に苦戦した相手を見逃してしまいましたよ! マスター!」
「私も、自分より格上の相手を見逃すという行為に少し興奮しております!」

 あの棒読みのセリフをどうにか出来なかったのかというツッコミはやめておこうと思った。
 自分が強くなったという実感はあった方がいい。……ないよりか、はな。
 高度な政治問題に首を突っ込むつもりはないが、戦争でもないのに相手を殺傷するというのは非常に後味が悪い。
 これは戦争だと言われてしまえば何も返せないが、マウスの一団、笑う狐のチームと戦った時、必死だったからあまり考えないようにしていたが、思い出してみればあまりいいものでもなかった。
 モンスター相手なら楽……と言ったら、モンスターの使い魔に怒られてしまいそうだが、同族を守るためとか、生きていくためのお金のためと考えればまだ楽だった。
 だから、甘いと言われようが、今はこれでいいと思った。

「甘い! 甘いですよ師匠!」

 やばい、心折れそう。
 旅籠屋に戻り、ポルコとブライト少年にこの一件を話した時、ブライト少年が厳しい目付きで俺に肉薄した。
 生徒に指導されている気分だ。

「ずーんですぅ……」
「うぅうううっ……!」

 既にポチは項垂れ、チャッピーの興奮も大地に突き刺さっている。
 ポルコはくすくすと笑っているが、やはりブライト少年の考え方はこの時代の貴族特有という事だろうか。
 いや、確かに自分の命が狙われているという厳しい状況にあるのは知っている。
 やはり軽率な行動だったか。いや、しかし、だが、でも――。
 複雑な思考がせめぎ合い、ブライト少年のお説教が落ち着いた頃、ポルコがようやく助け船を出してくれた。

「まぁまぁブライト君。ポーア君も悪気があった訳ではないのだよ」
「しかしポルコ様っ――」
「――それに、冒険者とは自由な生き方、行き方をするものだ。我々の物差しで測ってはいけないというものだ。ん?」
「…………確かにその通りですね」

 おぉ!
 二人の顔がばっと明るくなったぞ。
 流石ポルコだ。いつも元老院のお偉方を諭してるだけはある。凄まじい弁舌力だ。
 素晴らしい助け船に、ポチの顔は笑顔で満ち、チャッピーも嬉しそうだ。

「しかしポーア殿」
「はい?」

 何でしょうか?

「護衛対象であるブライト君の敵であるチキアータ一党を見逃した罪を許せる訳ではない」

 今、許しそうな雰囲気を醸し出していた人物が俺をぶった切ってきた。

「勿論私は別によいと思ったのだが、君の雇い主はそうは思わなかったようだ」

 と、爽やかな笑顔を向けてきたポルコの後ろに、鬼の形相のジュンが見えた。
 この人…………念話連絡でジュンに告げ口したな?

「減給だそうだ」
「ひぃいいいいいいいいいいいっ!?」

 そう叫んだのは我が使い魔。
 どうやら食生活に響くと脳内で直結したんだろう。

「はっはっはっはっは! まぁ私から少し手当てを上乗せしておこう」

 多分わざとなんだろうな。性格が悪いようで良い。
 おそらくその報酬は、懐ですやすやと眠るレオンの無事。という事になるんだろうな。

「マスターッ!」

 そう喜びポルコの足下にすり寄るポチ――って、

「おい、マスターは俺だろう!?」
「大変です! 間違えてしまいました! いえ、もしかしてあってるかもしれませんっ」

 ダメだ。瞳の奥に色んな食べ物が見える気がする。
 ようやく一件に収まりを見ると、ポルコは別の宿をとると言って東源宿を出て行った。
 危険だとは言ったが、言う事を聞くポルコではないので、宿の場所が決まったら教えるという条件をつけた。場所さえわかれば危険が迫っても援護の出しようがある。
 ポルコのトウエッド訪問についてはチキアータたちにバレていないだろうからな。
 そういえば、ポルコたちが聞いた予言って何だったんだろうか?
 俺たちが聞いても教えてくれるのだろうか? いや、今のブライト少年には近寄らない方がいいよな。
 向こうがこちらの事を聞いてこない以上、詮索するのはあまりよくないだろう。
 あぁ、そうだ。
 ポルコが飛んできた空間転移魔法陣、今は消しておくか。
 誤って乗ったりしても面倒だ。ちょっとした細工のおかげで、ようやくこの魔法も完成したと言っていいかもしれないな。そう、俺に害意のある人間が乗っても起動出来なくなっているのだ。
 我ながら素晴らしいと思う。
 俺は水龍の杖を持ち、空間転移魔法陣に近づいた。しかし、俺の魔力と意識が介入しても、その解除は出来なかった。

「どうしたんです? マスター?」
「……アダムス家(向こう)で、誰かがこの魔法陣に乗っている……?」
「って事はマスターの部屋に誰か侵入したという事ですかっ!?」

 その通りだ。
 俺がポチに頷くと、場に緊張が走った。
 一体誰がベッドの下の魔法陣に気付くっていうんだ。
 しかし大丈夫だ。害意のない人間はこれを発動する事は――――あれ? 起動したぞっ?
 空間転移魔法陣が起動を知らせ、俺たちの部屋にも光が走った。

「「へ?」」

 光の中から現れたのは、周囲をきょろきょろと見渡す――アダムス家のお嬢様。

「ふーん、ここがトウエッドね。面白そうじゃない!」

 俺のマントの中に隠れたブライト少年を、誰か助けてあげてください。
七章の幕開けとなります。
※コミカライズ決まりました! 詳しくは↓のCMコーナーにて!!

いよいよ明日「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」第五巻が発売致します!
是非、書店さんなどで手に取っていただければ幸いです!
Twitterをご覧になった方はご存知かもしれませんが、イラスト担当の「武藤むとう 此史くりひと」先生が発売の応援イラストを描いてくれました!
掲載許可も頂けたのでぺたっ!






挿絵(By みてみん)

※ええ感じのフェリス嬢。
ちょうど今話の最後で登場したのでナイスタイミングでした!
武藤先生、ありがとうございます!


さぁ、発売が明日という事で!
いつものCMコーナーです! ごめんなさい! コミカライズの発表もあるので、是非最後まで読んでやってください!

【CM】
①明日はつばい!
2017年1月16日月曜日「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」が第五巻が全国書店にて発売致します。
買っていただくと作者のモチベーションがあがると共に続刊に繋がります。購入報告には土下座します。
※既に発売開始している書店もありますが、正式には1月16日発売です。早売りってやつですね。

②特典情報
巻末特典⇒「女の子成分」というタイトルのちょっとしたお話。
ポチがフェリス嬢と共に、こそこそしている話です。

初回特典⇒「ファーストコンタクト」というアズリー&ポチの出会いに触れています。
第一巻はポチの命名に触れましたが、今回はそれよりも前のお話です。

!店舗特典!

○「TSUTAYA」様フェアデジタル特典
⇒タイトルは「女の子成分の中身」です。
もう少し詳しく書いてあります。巻末特典を読んだあと、楽しんで頂けたらと思います。

○「とらのあな」様特典
⇒タイトルは「大食い女王杯」です。
マサキやランドルフ、ジャンボとの大食い勝負に制したポチ。
ブルネアで出会うは最強の敵リーリア。……そんなお話です。

○「アニメイト」様特典
⇒タイトルは「ぶらいとしょうねんのせいちょう」です
ブライト少年とアズリーが、一緒にお風呂に入ります。それだけです。たぶん。

○「くまざわ書店」様特典
⇒タイトルは「俺が魔王でお前が聖戦士!」です。
地の文が一切ない会話SSです。「145 聖戦士の顔」のストーリー冒頭の「魔王ごっこ」をもう一度。
最後に壱弐参から(正確にはアズリーたちから)皆様へのメッセージを入れております。

○「Wonder Goo」様特典
⇒タイトルは「スーハ―エッグ」です。
ほんと、タイトル通りのお話です。場はリナが親善試合にのぞむシーンです。
すー! はー!

○「啓文堂」様特典
⇒タイトルは「観察対象、聖戦士ジョルノ」です。
ブルネアにいたジョルノを、アズリー探偵が尾行するお話です。


どれも気合い入れて書いたので、是非宜しくお願い致します!

③サイン本情報
東京、秋葉原の「書泉ブックタワー」様、神奈川県藤沢市の「Bookプラザ文華堂」様にて壱弐参のサイン本(五巻)を置かせて頂いております。
是非宜しくお願いいたします。
※数に限りがあります。

④ニコ生視聴ありがとうございました!
ご覧になった方、「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」のラジオドラマ、いかがだったでしょうか?
壱弐参のアズリーとガストン
中島さんのアイリーン
吉田さんのポチとトレース
筒井さんのナレーション
まだタイムシフトで閲覧が可能だと思いますので、プレミアム会員の方は是非観てやってください。

⑤YoutubeCMのナレーション
作者:壱弐参の声:壱弐参による宣伝でした。
CMナレーションの現場はあまりありませんでしたが、楽しく声を入れさせて頂きました。
声のお仕事! いつでも待ってます!(真顔
あの最後の「ほいのほいのほい」というセリフ、かっこよく入れるつもりでしたが、「ふざけろ」という指示に屈しました(ぁ

⑥コミカライズ決定!!
なんと、「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」のコミカライズが決まりました!
漫画の担当は「荒木あらき 風羽ふうう」先生です。
素敵で可愛らしいイラストを描いて頂ける先生です! アズリーがかっこよく、ポチが可愛い……( ゜д゜)スゲェ
という訳で、アズリーとポチが絵になって動きます。
連載開始は2017年の4月からという事です! 是非、宜しくお願い致します!!


いつも読んでいただき本当にありがとうございます。
こうして壱弐参が一文字一文字書けるのは皆様のおかげです。
これからもアズリーとポチ、願わくば作者(Twitterアカウント=@hihumi_monokaki)も! 是非、宜しくお願い致します!!

ではでは!!
+注意+
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