表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第七章 ~聖戦士編・中編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

205/497

204 黒帝坊主の行方

「フェリス様!? ダ、ダメですよ。今すぐ戻ってください!」


 俺はフェリスの帰還を強めに言ったが……まぁ聞く訳ないよね。


「ブライト君はどこ?」


 俺のマントの中です。

 ちょっとした成長なのか、俺の背後にブライト少年を見つけたフェリス嬢がコツコツと歩を進める。

 瞬間、マントを引き千切るような速度でブライト少年は部屋を出て行った。

 けたたましく鳴る扉の音に目を瞑り、俺たちは唖然とした様子で固まってい――たらまずい!


「シロ! すぐにブライト様を追ってくれ!」

「お任せを!」

「チャッピー、シロに付いて行って空から探してくれ!」

「かしこまりました!」


 二人は窓から飛び出し、ブライト少年の後を追った。

 流石に護衛対象を一人にするのはまずい。減給だけでは済まない話だ。

 目を丸くしたままのフェリス嬢は、部屋を出ようとする俺のマントをぐいっと引っ張った。


「ぐぇっ!?」


 フェリス嬢の腕力、いつのまにこんなについたんだろう。


「あの、苦しいです、よ?」

「何よ、来ちゃまずかったの?」


 その通りです。と言える訳がないだろう。

 いや……しかし、ポルコがクッグにいない今、フェリス嬢もこちらにいた方がいいのかもしれない。

 クッグ村にいるガイルには連絡しておこう。勿論ポルコにも。

 フェリス嬢を連れ外へ出ると、ポチから念話連絡が入った。

 どうやら俺たちが入ったエッドの入口でブライト少年を見つけたそうだ。

 ここから大して離れていないが、なんて速さだ。

 だけど、今日は変身したり巫女に会ったり、減給されたり……そして、フェリス嬢は何故か俺のマントを掴んで離してくれないし……今日は大変な日だな。

 まぁ、トウエッドでやる事はもうほとんどないし、これを機会に色々なところへ行ってみようかね?

 ポルコの用事ってどれくらいで終わるのだろうか?

 だが、それもこれもブライト少年を回収してからだ。


「大きな街ね、レガリアより大きいかもしれないわ」

「トウエッドの首都ですからね。国として大きいのは神聖国ですが、街だけで見るならばそうかもしれません」

「……隣国だからこそ侮れないわね」

「何故です?」


 俺の問いにフェリス嬢は鼻息を荒くした。


「いつトウエッドと戦争が起きるかもわからないわ。相手の国を調べ、その文化に興味を持ち、畏怖するのは当然の事よ」


 …………誰だこの人?

 いや、驚いたな。フェリス嬢にこんな一面があるとは。

 そう言えば魔法指導以外ではポルコがたまに教えてるとか聞いた事がある。

 貴族ならでは、いや、アダムス家だからこその先見の明か。


「大丈夫、トウエッドと神聖国の間で戦争は起きませんよ」


 きょとんとしたフェリスが小首を傾げる。


「何でアンタにそんな事がわかるのよ?」


 あ、やべ。

 確かに俺がいた時代までトウエッドとの関係は良好だったはずだが、フェリス嬢の言う通りだ。

 何で俺にわかるのかと言われたら、未来から来た……とは言えないよな。


「魔法士だからです」

「ふざけてるの?」


 キツイ視線を向け、フェリス嬢はマントを手綱のように引っ張った。


「すみません、苦しいです」

「なら苦しくない言い訳を言ったらどうっ?」


 おぉ、うまい返しだ。

 これは後程賢者のすゝめに書いておこう。

 さてどうやって言い訳しよう? 苦しくない言い訳か……相手がフェリス嬢だと中々に難しい案件だ。


「さぁ、正直に言いなさいっ」


 ふむ、このままでは窒息するかもしれない。

 レオンのオシメも替えなくちゃいけないし、出来ればそれは避けたい。

 ふむ……ならフェリス嬢のご希望通りに正直に言ってみるか。


「未来から来たからわかるんです」

「……アンタ、本当に魔法以外ダメね」


 まぁ当然信じてもらえないのだけど、褒められたしよしとしよう。

 ………………褒められたよな? 魔法は大丈夫とのお達しだぞ。

 俺が首を捻っているとフェリス嬢は深い溜め息を吐きながら頭を抱えていた。まだマントは離さない。

 お、ポチが見えた。

 ポチは巨大化して、なんか黒帝っぽい人の首根っこを咥えている。

 あれは見つけたというより、捕えたというのではなかろうか?

 ふむ、いい感じに項垂れている。いつかナツとフユが作っていた「てるてる坊主」のようだ。

 今日も晴れだが、明日も晴れだろう。


「ブライト君!」


 駆け寄ったフェリス嬢の声で、ブライト少年の肩がびくつく。

 震えながら武器もないのに構え始めた。

 ん~、一緒に魔法指導してた時は結構うまくいってたと思うんだが、やっぱりちょっと離れると元に戻ってしまうようだな。


「シロ、下ろしなさい」


 フェリス嬢の命令だったが、ポチは俺の方を見た。

 まぁ、この状況ならもう逃げないだろう。下ろしてやれ。

 そんなアイコンタクトを送ると、ポチは一度頷いてからブライト少年を下ろした。


「お、おひさしぶりです……フェリスさん」


 凄い。あそこまでひくつく口元は初めて見たかもしれない。


「そうね! さぁ、この街を見学して周りましょうっ!」


 どこにあるかわからない明日を指差しながら、フェリス嬢はブライト少年の肩を叩いた。

 しかし凄いな。ブライト少年の頬や首元に見えるあれは蕁麻疹(じんましん)じゃないだろうか?

 うーむ、どうやら目が「助けてくれ」と訴えている。

 フェリス嬢という敵を前に、護衛対象が助けを求めている……のであれば、ここは助けない訳にはいかない。

 何故なら、減給は怖いからだ。


「フェリス様、よろしいでしょうか?」

「ダメよ」


 ダメらしい。

 いやいやいやいや。こんなところで引き下がってはそれこそダメだ。

 ここは現状と事実を突きつけ、一時撤退という法をとるか。


「今、このエッドにブライト様を誘拐しようとした犯人が潜伏中です」


 するとフェリス嬢は、すぐにピタリと止まり、俺に向き直った。


「前に聞いたダグラス家の連中かしら?」

「そうです。もう日も暮れます。今から街の散策……となると、私もお二人を護衛出来るかわかりません」

「……いつならいいの?」


 こういう時のフェリス嬢は非常に物分かりがいい。

 状況判断が出来るお転婆姫というのも中々珍しい気もするが、過去のあの炎龍事件であれだけ怒られれば成長もするというものか。


「明日、日が高い内……そして人通りの多い場所ならば」

「……わかったわ」


 フェリス嬢がようやく折れ、俺たちは東源宿まで戻った。

 その帰路、ポルコとガイルに報告を済ませ、フェリス嬢はポルコの言い付けで一度屋敷に戻る事となった。

 夜、明日の天気が悪くなれと窓の外に向かって祈っているブライト少年の背中に、ポチもチャッピーも爆笑である。


「あはははは! ブライトさん、もう諦めた方がいいですよ!」

「くくくくく! ブライト! もう観念するんだ!」

「……他人事だと思って……」


 俯きながら呟くブライト少年の言葉には、少しの苛立ちと少しの怒りが混ざっていた。

 まぁ、明日の天気は晴れだと思う。てるてる坊主ならぬ黒帝坊主の効果が存分に発揮されるだろう。


「それで、ポルコ様に許可もらったからいいけど、明日どこか行きたいところはありますか?」

「「ご飯!」」


 お前たちに聞いてねーよ。

 そもそも護衛の仕事に就いてる人間の我儘がまかり通ると何故思う?


「フェリスさんのいないところへ――」

「却下です」

「ご飯!」

「ご飯!」

「「ご飯!!」」


 ん~、まぁそうだな。

 結局は明日フェリス嬢に振り回されるんだ。

 今から行く場所決めても結局変わっちゃうんだから、ここで話してもあまり意味ないか。


「ご飯!」

「ご飯!」

「「ご飯!!」」


 あ、そう言えばアダムス家の間者の件ってどうなったんだろうか?

 ポルコに会った時、こっそり聞けばよかったな。

 夜も遅いし、明日タイミングをみて念話連絡で聞いてみるか。


「ご飯!」

「ご飯!」

「「ご飯!!」」


 うるせーな。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 翌日。


「え、何ですって?」

「今、どこに行きたいと?」


 ポチと俺がフェリス嬢に聞き返す。


「賭場よ賭場」


いよいよ本日「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」第五巻が発売致します!

是非、書店さんなどで手に取っていただければ幸いです!

※発売初週故、宣伝ご容赦ください!


【CM】

①遂に発売!!

「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」が第五巻が全国書店にて発売中です。

買っていただくと作者のモチベーションがあがると共に続刊に繋がります。購入報告には土下座します。

※既に発売開始している書店もありますが、正式には1月16日発売です。早売りってやつですね。


②特典情報

巻末特典⇒「女の子成分」というタイトルのちょっとしたお話。

ポチがフェリス嬢と共に、こそこそしている話です。


初回特典⇒「ファーストコンタクト」というアズリー&ポチの出会いに触れています。

第一巻はポチの命名に触れましたが、今回はそれよりも前のお話です。


!店舗特典!


○「TSUTAYA」様フェアデジタル特典

⇒タイトルは「女の子成分の中身」です。

もう少し詳しく書いてあります。巻末特典を読んだあと、楽しんで頂けたらと思います。


○「とらのあな」様特典

⇒タイトルは「大食い女王杯」です。

マサキやランドルフ、ジャンボとの大食い勝負に制したポチ。

ブルネアで出会うは最強の敵リーリア。……そんなお話です。


○「アニメイト」様特典

⇒タイトルは「ぶらいとしょうねんのせいちょう」です

ブライト少年とアズリーが、一緒にお風呂に入ります。それだけです。たぶん。


○「くまざわ書店」様特典

⇒タイトルは「俺が魔王でお前が聖戦士!」です。

地の文が一切ない会話SSです。「145 聖戦士の顔」のストーリー冒頭の「魔王ごっこ」をもう一度。

最後に壱弐参から(正確にはアズリーたちから)皆様へのメッセージを入れております。


○「Wonder Goo」様特典

⇒タイトルは「スーハ―エッグ」です。

ほんと、タイトル通りのお話です。場はリナが親善試合にのぞむシーンです。

すー! はー!


○「啓文堂」様特典

⇒タイトルは「観察対象、聖戦士ジョルノ」です。

ブルネアにいたジョルノを、アズリー探偵が尾行するお話です。



どれも気合い入れて書いたので、是非宜しくお願い致します!


③サイン本情報

東京、秋葉原の「書泉ブックタワー」様、神奈川県藤沢市の「Bookプラザ文華堂」様にて壱弐参のサイン本(五巻)を置かせて頂いております。

是非宜しくお願いいたします。

※数に限りがあります。


④ニコ生視聴ありがとうございました!

ご覧になった方、「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」のラジオドラマ、いかがだったでしょうか?

壱弐参のアズリーとガストン

中島さんのアイリーン

吉田さんのポチとトレース

筒井さんのナレーション

まだタイムシフトで閲覧が可能だと思いますので、プレミアム会員の方は是非観てやってください。


⑤YoutubeCMのナレーション

作者:壱弐参の声:壱弐参による宣伝でした。

CMナレーションの現場はあまりありませんでしたが、楽しく声を入れさせて頂きました。

声のお仕事! いつでも待ってます!(真顔

あの最後の「ほいのほいのほい」というセリフ、かっこよく入れるつもりでしたが、「ふざけろ」という指示に屈しました(ぁ


⑥コミカライズ決定!!

なんと、「悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ」のコミカライズが決まりました!

漫画の担当は「荒木あらき 風羽ふう」先生です。

素敵で可愛らしいイラストを描いて頂ける先生です! アズリーがかっこよく、ポチが可愛い……( ゜д゜)スゲェ

という訳で、アズリーとポチが絵になって動きます。

連載開始は2017年の4月からという事です! 是非、宜しくお願い致します!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓連載中です↓

『天才派遣所の秀才異端児 ~天才の能力を全て取り込む、秀才の成り上がり~』
【天才×秀才】全ての天才を呑み込む、秀才の歩み。

『善良なる隣人 ~魔王よ、勇者よ、これが獣だ~』
獣の本当の強さを、我々はまだ知らない。

『半端でハンパないおっさんの吸血鬼生 ~最強を目指す吸血鬼の第三勢力~』
おっさんは、魔王と同じ能力【血鎖の転換】を得て吸血鬼に転生した!
ねじ曲がって一周しちゃうくらい性格が歪んだおっさんの成り上がり!

『使い魔は使い魔使い(完結済)』
召喚士の主人公が召喚した使い魔は召喚士だった!? 熱い現代ファンタジーならこれ!

↓第1~2巻が発売中です↓
『がけっぷち冒険者の魔王体験』
冴えない冒険者と、マントの姿となってしまった魔王の、地獄のブートキャンプ。
がけっぷち冒険者が半ば強制的に強くなっていくさまを是非見てください。

↓原作小説第1~3巻が発売中です↓
『転生したら孤児になった!魔物に育てられた魔物使い(剣士)』
壱弐参の処女作! 書籍化不可能と言われた問題作が、書籍化しちゃったコメディ冒険譚!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ