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悠久の愚者アズリーの、賢者のすゝめ  作者: 壱弐参
第五章 ~古の放浪編~

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167 禁忌の修練

 ―― 神聖暦百二十年 七月三十一月 午後九時 ――


 ついに……………………ついに…………!


「ふは! ふはははははははっ! どうだ!? 視たかポチィイイイイイッ!?」

「視ました! この目で確かに視ましたよぉおおおおおおっ!!」

「もっとだ! もっと褒めてくれたまえポチ君んんんんんんっ!!」

「馬鹿もおだてりゃ何とやらですよーっ!!」


 ………………おや?

 しかも前にも聞いた事があるような?


「まさかランクEのラナートレントが経験値10000を超えるとはっ」

「俺だけで一万を超えたって事は、ポチにもそれが渡ってる。ラナートレントは200程の経験値を持っている。つまり約百倍の経験値改竄(かいざん)に成功したって事だ」

「マスターの錬金術だから心配してましたけど……これ、ずっと付けてるだけでいいんです?」


 ポチは首に巻いている橙色のスカーフを前脚で差した。


「そう。魔法陣や魔術陣じゃ無理だったけど、このアーティファクト……【禁忌の修練(エクスペリブースト)】にする事で、経験値の増大を図った訳だ」


 ポチはスカーフ。俺はマントにそれを施した。

 魔法陣や魔術陣で出来ないと判断した俺はアーティファクトの制作へと移った。

 使ったのはブルネアで揃えたモンスターの眼球。

 高位モンスターの眼球は魔眼に近い要素がある。それらを利用し、鑑定眼鏡のような情報開示、解析を特化させたんだ。

 それらを用いて魔法式の頂点に置いた設置型魔法陣。素材の特性を吸い取る式を使い、村で購入したスカーフに反映させる。

 クッグ村を昼間歩いていたらポチが気に入った生地があり、それをスカーフにした。

 まぁ、素材はちょうど二人分しかなかったから、俺とポチで使い切ってしまったけどな。


「これってモンスターが強くなればまた変わるんですよね?」

「そういう事だ。倍率は変わらないけど…………ん、口で説明するよりまた書いた方がいいな」


 種族改変の説明の時のように、ナイフの柄で地面に簡単な説明を書く。


 ~~~~~~~~~~~~~~


【ランク別経験値早見表】


 ランクG:1~10の経験値。

 ランクF:10~200の経験値。

 ランクE:200~400の経験値。

 ランクD:400~1000の経験値。

 ランクC:1000~2500の経験値。

 ランクB:2500~5000の経験値。

 ランクA:5000~10000の経験値。

 ランクS:10000~50000の経験値。

 ランクSS:50000以上の経験値。

 絶望の使徒:わかりません!


 ~~~~~~~~~~~~~~


「とまぁ、簡単に書くとこんな感じだな。勿論本当に適当だ。ランクEのモンスターでも経験値を10程しか持ってない奴もいるしな」

「…………とんでもありませんね」


 珍しくポチが震えた声で言った。

 当然だよな。禁忌の修練(エクスペリブースト)がもたらす恩恵は計り知れない。


「我々が既に楽に戦えるランクAのモンスターなんて、500000~1000000の経験値を持っている事になります」

「やばいだろ?」

「ハッキリ言って、ヤバヤバです!」


 ポチの言葉に調子づいた俺は炎龍の山を指差す。


「よし、そんじゃあポチ君! 一人であの炎龍たちを倒してくるんだ!」

「嫌です!」

「何でだよ! 今のポチなら瀕死になりつつも行けるだろう!?」

「私を勝手に瀕死にさせないでください!」


 ちっ、ダメだったか。

 ホント、性格も一切変わってなかったな。

 このひと月、俺は天獣種の紫死鳥(ししちょう)となったポチを観察し続けた。

 結果から言うと大成功だ。俺がすすめた竜族など気にならない程の急成長を見せた。

 レベルこそ上げてないものの、攻撃力、瞬発力が飛躍的に伸び、普段なら天狗になるポチが驚いて声を失う程だった。

 今のポチならあのディノも圧倒出来るだろう。

 正直ポチの背中に跨った俺が振り落とされないようにするのが精一杯だ。

 どうしよう……使い魔との差が如実に現れてきたな?


「でも、何らかの考えはあるんでしょう?」

「うわっ!? お前、いつからいたっ!?」

「八百年前からいましたけども?!」

「勝手に俺の思考を読むなよ。まぁ考えがあるってのは嘘じゃないけどな」

「へぇ~。どんなです?」


 興味を持ったポチが聞いてくる。


「ハハハハ、読んでみろよっ」

「むきーっ!」

「ちょ、今のお前が怒ると俺が大惨事になるだろっ! おい、馬鹿っ! やめろってっ!?」

「やめてあげません!」


 その後俺は、ポチに村外引き回しの刑に処され、目に付くモンスターを吹き飛ばしながらアダムス家の屋敷へと戻った。


「す、凄い格好だねポーア君。まるで地中を泳いだ後みたいだ」

「ま、まぁそうですね。二、三度はダイブしましたかね……ケホッ。あれ? こんな時間からお出かけですか? ポルコ様」


 屋敷の前には馬車が一台。

 そして少数の護衛団メンバーが集結していた。


「すまない。急使が来てね。これからレガリアへ向かう事となった。屋敷の中のアレ(、、)は好きに使って構わないからね。それと、何か問題があればガイルに言うといい」


 そう言ってポルコは、衛士小屋の前で門柱に寄り掛かる空マ――ガイルを指差した。

 夜だというのに今日もデコが輝いている。


「フェリスには君の言う事を聞くようにと伝えてある」

「わかりました。お気を付けて!」

「うむ、ではな! 出発!」


 隊列を組んだ護衛団の光が村の外へ遠ざかり消えていく。

 しかしこのタイミングで屋敷が手薄になった事は確かだ。

 これは今まで以上に気を引き締めなきゃダメだろうな。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「なんですってっ!?」

「フェリス様が……」

「「いないっ!?」」

「あぁ! 侵入者の気配はねぇからおそらく自分の足で出てったんだ!」


 翌日の昼食後、フェリス嬢失踪というガイルの話を聞いた俺とポチは、すぐに迎賓館のブライト少年の下へ向かった。

 すると、廊下で出会ったジエッタが慌てた様子で俺たちの下まで走って来た。


「なんですってっ!?」

「ブライト様が……」

「「いないっ!?」」

「えぇ! 先程までお部屋にいらっしゃったのですが、お茶をお持ちしましたらお部屋にいらっしゃらなかったのです。窓が開いていたので、おそらくそこから……!」


「ひぃぁああああ!?」と叫ぶシロは放っておいて、俺は二人の行く先を頭で考えた。

 ポチの鼻はもう使えない。今のポチは狼じゃないのだから。

 あの窓から部屋を出たとしたらおそらく裏門から?

 頭の良いブライト少年がそんな愚を犯すはずがない。

 つまりはフェリス嬢が? 一体何のために?

 あれ? もしかして――――


「ひぃぁああああ!? どうしましょマスター! どうしましょー!?」

「落ち着けシロ。思い出せ、今朝の授業は何だった?」

「えーっと確か……フェリスさんの……中級魔法の修了試験でしたね」


 そう、ブライト少年は早くに修めたが、一つ遅れてフェリス嬢の試験を行ったんだ。


「その時俺は何て言ったっ?」

「『中級魔法は使い道さえ正しければランクAのモンスターすら制します』と」

「その後俺は訂正したよな。『勿論レベルが見合わなければ即死です』とも」


 そう、暴走しがちなフェリス嬢に言うべきではなかった言葉だと思いすぐに訂正したんだ。


「えぇ、言ってました!」

「あの後、シロ! お前フェリス様に何か言ってただろ!? あれ何て言ったんだ!?」

「え、え? 確か『まぁ、ウチのマスターはレベル二十九でランクAのモンスターを倒しましたけどね!』って」


 おのれ、この自慢したがりめ!


「二人のレベルはっ!?」

「……昨日の申告で三十になったとか……」

「ここら辺のランクAのモンスターっていったらっ!?」

「………………………………………………………………………………あ!」

「わかったら行くぞ! 犬ッコロ!」


 目指す先は北西の山…………炎龍の住まう地。


「ごめんなさいぃいいいいいいいいいいいいっ!!」

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