168 ライドオン
ギリギリ間に合いました。
「ごめんなさいぃいいいいいいいいいいいいっ!!」
「いつまで謝ってんだ! とりあえずアレだアレ!」
アダムス家の屋敷の中にある「限界突破の魔術陣」。
始めはこれを見た時驚いたものだが、ポルコは自由に使ってくれて構わないと言っていた。
さすが貴族。
持っているものが違うな。
いつもは嬉しいレベルアップのファンファーレも、この急いでる状況下では煩わしいとさえ思ってしまう。
「お、終わりました!」
「よし!」
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アズリー
LV:141
HP:7150
MP:82190
EXP:33194500
特殊:攻撃魔法《特》・補助魔法《特》・回復魔法《特》・精製《特》・剛力・剛体・疾風・軽身・剛心
称号:悠久の愚者・偏りし者・仙人候補・大魔法士・特級錬金術師・杖聖・六法士(仮)・恩師・ランクS・首席・パパ・腑抜け・SS殺し・守護魔法兵(仮)・剛の者・疾き者・使い魔以下・古代種殺し・魔王(仮)・マッド・禁忌を犯せし者
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ポチ
LV:150
HP:24084
MP:9106
EXP:46022409
特殊:ブレス《極》・エアクロウ・巨大化・神速・剛力・浮身・軽身・剛体・攻撃魔法《中》・補助魔法《中》・回復魔法《中》・吸魔・剛心
称号:最上級使い魔・極めし者・番鳥・中級魔法士・要耳栓・名付け親・菓子好き・愚者を育てし者・風神・剛の者・古代種殺し・お菓子(仮)・紫死鳥
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…………………………………………何かよくわからない称号が付いてるが、今気にしてる場合じゃない。
外へ出ると、護衛団の連中が集まってガイルの指示を聞いていた。
「おいポーア、何かわかったのかっ!?」
「えぇ、おそらくフェリス様とブライト様は炎龍の山へ向かったと思います!」
この言葉に、屈強な護衛団が一瞬固まった。
この世界では低いとはいえ、皆レベル百以上の戦士たちだ。
炎龍の怖さを知らない訳がない。
ひとたび空へ飛び上がれば、魔法士の魔法なしでは太刀打ち出来ない。
そして何より恐ろしいのはその凶暴性。
この護衛団が恐れているのはその凶暴性が向く矛先。
上手くブライト少年とフェリス嬢を助けられたとしても、奴らの領域へ侵入していれば、それは攻撃したも同義。
上手くブライト少年とフェリス嬢と逃げられたとしても、奴らは全員で俺たちを追いかけてくるだろう。
上手くブライト少年とフェリス嬢と奴らから隠れ果せたとしても、人間という存在は他にもいる。
そしてその存在は…………この、クッグ村だ。
「村の人間を誘導しろ! 東にある森の中に隠れろと!」
「「はっ!」」
「カダフ、リネッツは屋敷の人間を、その後ここを守れ!」
「「はっ!」」
真っ先に思考を働かせたガイルが仲間に最新の指示を出す。
「ポーア! 行くぞ!」
「えぇっ!? 行くんですかっ? ガイルさん!」
「当然だ!」
「仕方ありません! 乗ってください!」
普段は「二人乗り禁止!」と怒るポチだが、今回ばかりは自分に非があると思ったのか、それを許可した。
ポチに跳び乗ったガイルは叫ぶ。
「野郎ども! 気合い入れろよ!」
「「おぉっ!!」」
「ほほい、オールアップ・カウント3&リモートコントロール!」
足場をならし、ポチが大きな遠吠えをした。
「アォオオオオオンッ!!」
瞬間、ポチは音に迫る速度を見せ、ガイルは失神した。
炎龍の山へ向かう途中、俺はガイルの足を掴み、風にたなびくソラ豆を守った。
頑張れソラ豆君!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……………………どうするんですか、この人?」
「どうするもこうするも、ポチがあんなに速度出さなきゃ――――って、そんな場合じゃなかったな。とりあえず…………置いて行くか。帰りに回収すればいいだろう」
「ですね。それより念話連絡つかなかったんです?」
「やっぱり、こんなモンスターの巣が近いと無理なんだよな」
そう、モンスターの集団がいる近くでは念話連絡は使えない。
かつてのライアンがそうだったように。
でもまぁ、ライアンは瀕死だったってのもあるけどな。
「途中に二人の気配はありませんでしたし、やはりこの先ですか……」
「あぁ、肉眼で炎龍の大きさがわかる。これ以上先に進めば、いつ襲われたって文句言えないぞ……」
生唾をごくりと飲み込んだ俺とポチは互いに見合って頷く。
「ここからは歩きだな。慎重に……けどブライト少年たちより速く、だ」
「えぇ。さ、マスター! 先にどうぞ!」
「いや、ここはお前が先頭だろう!?」
「何でですかっ!?」
「……レ、レディーファーストだよ!」
「んまー! 嬉しい! さ、さっさと前歩いてください!」
くそ、どう考えても俺より強いポチが前だろうに。
何で俺が先頭なんだよ……ん?
何でコイツ俺の背中に跳び乗ったんだ?
おや? 肩に前脚が回って……――――
「――って、先頭なのはいいが、何でここでポチをおぶらなきゃいけないんだよ!?」
「怖いんです! 文句あります!?」
「素直過ぎて何も言えねぇよ、馬鹿!」
「ゴー、ゴー、ゴーですよ!」
「尻を叩くな尻を!」
何故使い魔に使われなきゃいけないのか……まったく、意味がわからん。
ライドオンポチは「炎龍怖い炎龍怖い」と呟きながら俺の尻を叩く。
俺は山の岩陰に隠れつつ進行を続ける。
慎重に……慎重にだ…………。
山の上を飛びかっている炎龍に見つかった途端に探索を打ち切らなくちゃいけない。
見つかったら見つかったで村とは違う方向に逃げる。
それで村への被害はなくなる。
だが、そうなるとブライト少年とフェリス嬢が危険なままだという事に変わりはない。
慎重に……慎重にだ…………。
「あ、明日の朝食は何ですかね?」
「………………」
いつの間にかライドオンポチは「朝食朝食」と呟きながら俺の尻を叩いている。
もう怖くないのかお前は。
山をしばらく進むと、ポチが小さく声を出した。
背中のポチを見ると耳が立っていた。
聴覚はそれ程落ちなかったらしい。もしくは鳥の特性なのか……。
「どうしたポチ?」
「あちらの方で声が……」
ポチの前脚の先、俺はそれを頼りに慎重に歩を進めた。
ポチとの会話は静かに、小声で行う。
そして俺は見つけた。この山には似つかわしくない足跡。
それが何らかの影響で擦れ、やや下方に向かっている。
「ここから……滑り落ちた?」
「みたいですね」
下の足場を確認し、徐々に跳び下りて行く。
するとそこには…………って、いた!
岩陰が足場となり、ブライト少年が立ち、フェリス嬢が横たわっているのが見えた。
静かに着地した俺は、すぐにフェリス嬢を見た。
「ポーア先生っ」
小声で驚くブライト少年に「シッ」と一言伝えると、彼は口を押さえて頷いた。
フェリス嬢の意識がない。
上から落ちた衝撃が原因だろうが、命に別状はないようだ。
……ふむ、回復魔法はブライト少年が掛けたみたいだな。
服は少し破けているのに、どこにも怪我がない。流石、状況判断は出来ているようだ。
フェリス嬢の前だとこれが狂うから、今回はここまで付いて来てしまったんだろうなぁ。
可哀想に。
「よし、まだ気付かれていない。このままガイルさんを回収して帰るぞっ」
「「はいっ」」
俺は左腕にフェリス嬢、右腕にブライト少年、背中にどっかの馬鹿犬を乗せ下山を開始した。
ここは降りるべきだろうがっ!
後でお仕置きだな。勿論、フェリス嬢もブライト少年もだ。
下山は凄く順調だった。
ライドオンポチの呟きが「その前に夜食その前に夜食」に変わった頃、俺たちはガイルの下まで戻る事に成功したんだ。
ガイルはまだ失神していて、最初は野生のソラ豆かと思ったが、人間でガイルだった。
その時俺は気付いたんだ。
背後に揺らめく感じた事のある魔力に。
振り返り、この目が捉えたのは……一匹の水龍に跨る一人の女。
「チキアータ……!」
一瞬こちらを見やり、チキアータは小さく一笑した。
水龍コバルトドラゴンの口元に魔力を感じたのはその時だった。
一瞬何が起こるのかわからなかった。何せチキアータとコバルトドラゴンに敵意がなかったからだ。
大きく口が開かれ、俺たち…………ではなく、山頂に向かって顔が動く。
気付いた時には遅かった。
「待――――!」
「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
炎龍の巣に向かって放たれた極ブレス。
青く巨大な砲撃が着弾した時………………二百に及ぶであろう巨大な咆哮が、俺たちに届いた。




