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銀河の彼方から一寸法師  作者: 村松希美


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3 透明な壁と打ち出の小槌




 翌朝、ホーシの定位置は弥生の制服の胸ポケットになった。


 小さな身体の彼は、そこから弥生の心臓の鼓動を直接聴きながら、彼女の日常を観察することにした。


 朝食のテーブルには、湯気を立てる味噌汁と、ふっくらと焼き上がった出し巻き卵が並んでいた。


 「弥生ちゃん、口に合うかわからないけれど、今日は少し甘めにしてみたの」

 由依さんは、弥生が亡くなったお母さんの「甘い卵焼き」が好きだったことを風の噂で聞いたのか、控えめに、けれど期待を込めて微笑んだ。


 (……あ、だめだ。心臓がうるさくなってるぞ)


 ポケットの中でホーシが(ささや)く。弥生の手が、箸を持ったまま止まった。

 

「ありがとうございます、由依さん」

 弥生は、精一杯の愛想笑いを浮かべて口に運ぶ。美味しい。本当に美味しいはずなのに、飲み込もうとすると喉の奥がキュッと締まる。


 この味を「美味しい」と認めてしまったら、お母さんの味を上書きしてしまうような、そんな言いようのない裏切りに似た感情が胸を塞ぐ。


 「ひどいな……。悪意がないからこそ、逃げ場がないのか」

 ホーシは弥生の胸の鼓動が、悲鳴のように速くなるのを感じていた。


 彼の星では、拒絶はもっと分かりやすい形で行われた。けれど、この地球という場所、特に弥生の家にあるのは、優しさという名の「透明な壁」だった。


 「私は……最低だね」

 登校中、弥生は誰にも聞こえない声で溢した。


 「由依さんは、お父さんを支えてくれてる。私のことも大事にしようとしてくれてる。それなのに、私は彼女が笑うたびに、心のどこかで『お母さんの場所を盗らないで』って叫んでるの。家族になろうとしてくれている人を、一番遠ざけているのは私なんだ」


 「お前の言う『鬼』の正体が見えてきたな」

 ホーシはポケットから身を乗り出し、弥生の顎をくいっと持ち上げるようにして視線を合わせようとした。


 「お前にとっての鬼は、意地悪ないじめっ子でも、継母でもない。過去にしがみついて、今の幸せを『毒』だと思い込んでいるお前自身の頑固な心だ」


 弥生は言葉を詰まらせた。図星だった。


 「打ち出の小槌とは、鬼が落としたもの。つまり、お前の中のその意固地な心が折れたとき、初めて手に入る。お前が天敵……いや、お前が勝手に敵だと思い込んでいる由依と、本当の意味で向き合わなければ現れないんだ」


 「向き合うって……どうすればいいの?」

 「小槌は、振れば何でも願いを叶えてくれる魔法の道具じゃない。お前がこの悲劇的な思い込みから立ち直り、自分自身を受け入れた時、それはお前を強くする意志として現れる。そして、それが俺の魔法を解く鍵にもなるんだ。……いいか、弥生。俺とお前は、この家という迷宮から抜け出すための相棒なんだからな」


 ホーシの言葉は、冷たい北風のようだったけれど、その芯には弥生を独りにさせないという確かな温もりがあった。


 弥生は自分の胸に手を当て、そこにある「透明な壁」に、ほんの少しだけ指先で触れてみるような気持ちになった。







草稿を入力しAIが書きました。


私は両親が離婚しないで80歳前後まで生きたので、弥生のような経験はないですが、本では読んだことがあります。親の再婚相手は決して悪い人ではないのに受け入れられないというような。


そしてその本ではお母さんの再婚相手なら、息子はお母さんは自分と再婚相手、どちらに気持ちが向いているかを気にしていましたね。


すべてが別のように(1985年刊 金の星社)ですが。

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