2 見えないシグナルと第六感
翌朝、ホーシは弥生の通学カバンのマスコットに紛れるようにして、彼女の肩にひょいと飛び乗った。
「なあ、お前。今朝も家を出る時、俺が『そっちじゃない』って言ったのに、わざわざあの由依とかいう女と目が合う方へ向かっていっただろう?」
ホーシの言葉に、弥生は登校路の途中で足を止めた。確かに今朝、キッチンから漂う朝食の匂いと、由依さんの「おはよう、弥生ちゃん」という穏やかな声から逃げるように、いつもとは違うリビングの動線を通ろうとした。
その時、頭の中で「こっちじゃない」という警告のような感覚が走ったが、弥生はそれを無視して進み、結局、由依さんと正面から向き合う形になってしまったのだ。
「聞こえていたのか、私に? でも、あれはただの……」
「『気のせい』だと言いたいのか? なら、俺が送るシグナルに、お前の魂は気づいてはいたんだな」
ホーシは得意げに、けれどどこか呆れたように鼻を鳴らした。
「俺の星では、言葉よりも精神の波長を読み取る力が発達している。目には見えない周囲の淀みも、俺にはわかるんだ。今朝、お前が感じた居心地の悪さは、お前自身の拒絶反応が作り出した渦だよ。俺はそれを感知して、回避しろとシグナルを送っていた」
「そんなこと言われても……。私、どうすればいいか分からないの」
弥生は道端に咲く名もなき花を見つめ、俯いた。
「由依さんは何も悪くない。私を傷つけようともしてない。それが一番、苦しいんだよ。悪意がないものに怯えて、避けようとする自分が、すごく身勝手で冷酷な人間に思えてくるから」
「ああ、だから見ていられなくなったんだ。お前のその、自分を責めることでしか均衡を保てない不器用さがな」
ホーシは苛立ったように続けた。
「俺があんなに回避ルートを示してやっているのに、お前は律儀に一番痛いところへ突っ込んでいく。見ていてムカつくんだよ、そのドジっぷりが。だから、こうして堂々と姿を現して、お前の『勘』の代わりになってやることにしたんだ」
弥生は過去を思い返した。父が再婚してからの数ヶ月、直感的に「今はリビングに行かないほうがいい」「この話題には触れないほうがいい」という予感がすることがあった。それを無視するたびに、由依さんの優しさに触れては自己嫌悪に陥るというループを繰り返してきた。
「……どうして、ホーシは私の味方をしてくれるの?」
「勘違いするな。お前が俺の魔法を解く『鍵』を握っているからだ」
ホーシは一瞬、言葉を詰まらせた。
「最初は、なんて冴えない姫さまだと思ってあきれてた。でも、お前が自分の心と必死に戦っているのを見ていたら、……なんだか、放っておけなくなったんだ。ドキッとするというか、なんというか。素直になれない自分に腹が立つが、お前のその『透明な孤独』を、俺がなんとかしてやりたいと思ったんだよ」
弥生は目を丸くした。この小さな、星を追われた少年が、自分の中に自分と同じ「孤独」を見つけ、寄り添おうとしてくれている。
その時、ホーシが小さな手をそっと弥生の鎖骨あたり、胸の奥に触れるように置いた。
「この中に、お前を強くしてくれる力が眠っている。伝説の『打ち出の小槌』は、外から降ってくるもんじゃない。お前自身が、自分の心の中にある『壁』という名の鬼を退治したとき、初めてその力は開花するんだ。俺の魔法を解く鍵も、そこにある」
弥生は自分の胸に手を当てた。ホーシの手が触れた場所から、微かな、けれど確かな熱がじんわりと広がっていくのを感じていた。
草稿を入力し、AIが書きました。
この物語は弥生は継母との折り合いで悩みますが、最近のニュースでは再婚相手や親の恋人と子どものことで悲劇がありましたよね。
まあ、本能的には子どもは親の恋人や再婚相手を良く思わないですよね。
でも、血のつながりがなくても相手を大切に思っていたら血縁親子よりも仲良しの関係は築けると思います。相手を大切に思う心だと思います。




