1 夜の河原に現れた星の王子
真夏の夜、天の川が空を分かつように白く輝く河原に、弥生はぽつんと座り込んでいた。
足元を流れる川の音が、今の自分にはひどく冷たく、無機質なものに聞こえる。
「……帰らなきゃいけないのに」
独り言が夜の闇に吸い込まれる。家には父と、新しい母親の由依さんが待っているはずだ。
由依さんはいつも、弥生の顔色を伺うように穏やかに微笑む。彼女が焼くパンの匂いや、丁寧すぎるほどに整えられたリビングは、弥生にとって「よそ様の家」に迷い込んだような居心地の悪さを突きつけてきた。
悪者なら、いっそ楽だった。嫌な人なら、全力で拒絶して家を飛び出せた。けれど由依さんは、弥生が亡き母の面影を大切にしていることを知っていて、無理に「お母さんと呼びなさい」とは言わない。
その配慮が、弥生には「私の居場所を、優しさという膜でじわじわと侵食していくもの」に見えて仕方がなかった。
由依さんが笑うたびに、死んでしまったお母さんが記憶の隅へ追いやられていくような恐怖。
じわじわと滲んできた涙を、膝に顔を埋めて隠した。そのとき、ふいに柔らかな風が頬をかすめた。風など吹いていないはずなのに、河原の木々の葉がざわざわと波打つ。
(こっち、こっち。俯いてちゃ、何も見えないだろう!)
「えっ……?」
頭の中に直接響く声に、弥生はハッとして顔を上げた。周囲を見回したが、やはり誰もいない。
(ああ、とんだ見当違いをしているんだから。空を見ろって言ってるんだ!)
苛立ったような、けれどどこか寂しさを孕んだ少年のような声。それが自分の妄想ではないと確信したのは、夜空を横切る天の川の中に、異質な光の点を見つけた時だった。
それは、お椀のような形をした、小さな小さな飛行船。それが銀河の渦から剥がれ落ちるように、弥生がいる河原へ、音もなく降りてくる。
飛行船のハッチが開き、一人の男の子が降り立った。手のひらにちょこんと乗るくらいの、人差し指ほどの小さな男の子。
ホーシと呼ばれた彼は、弥生を見上げて不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「なんだ、お前。俺の声が聞こえなかったのか? 精神シグナルを受け取れる奴だって聞いたから、わざわざここまで降りてきてやったっていうのに」
「……見えなかったんだもん。それに、あなたの声、頭の中に直接入ってくるから……」
弥生は驚きのあまり、涙が乾くのも忘れて叫び返した。
ホーシはため息をつき、腰を下ろした。彼は、あまりに体が小さく生まれたことで「星の調和を乱す異端」として両親から疎まれ、住んでいた星を追い出されたのだという。
「俺の星は、みんなと違うことを極度に怖れるんだ。少しでも列からはみ出せば、親であっても他人。……お前も、似たようなもんだな」
「私……? 私は、家族に疎まれてるわけじゃ……」
「言葉にする前から、お前の『心の色』が濁ってるのが見えるんだよ。自分を必要としてくれる場所があるのに、そこを自分の居場所だと認められない。……滑稽な話だな」
ホーシの冷めた口調には、どこか鏡を見ているような寂しさが宿っていた。
一方は、身体的特徴を理由に絆を断たれた宇宙人。もう一方は、優しさに包囲されながら自ら孤独の殻に閉じこもる少女。
二つの孤独な魂が、夏の夜の河原で交差した。そして、この出会いが、弥生の心の奥に眠る「呪い」を解くための、長い旅の始まりとなる。
この作品は草稿を箇条書きにしたものをAIに入力して、AIに書いてもらいました。
日本昔話の一寸法師は子ども向けには一寸法師は両親にかわいがられたとありますが、私は大人版の一寸法師は身体が小さいことで両親に疎まれていた。そして、都の姫ーーこの物語の場合は如月弥生ですが、継母との折り合いが悪いという説を取り入れました。




