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江戸に立つ、龍の麺  作者: 八島唯
第7章 令和への挑戦

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料理による決着

 たすき掛けをする瞬。敬忠も同様に。広い厨房は二つに分けられ、片方には恵美押延とその手下が一人控えていた。

 それを満足そうに後ろ手に眺めるのはムルソー准将である。予期せぬ、そして予想もできなかった料理による対決に興味津々といったところか。対馬守もその後ろに控える。判定役をする見返りとして武器は預けられていたが。

『おもしろい。これこそが文明的な決闘といいうものだ。決闘は神の名のもとに平等で公平でなければいけない。三度対戦してもらう。』

 床の上に置かれた板を指さすムルソー准将。

『ランダムに三枚板を選び、そこに書かれた食材・テーマで料理を作ってもらう。私の判定で最初に二勝したほうが勝ちとする。勝った側は負けた側に無条件の要求を出すことができる。いかがだろうか。』

 無条件の要求。それは多分――

 しかしほかに方法はない。うなずく瞬と敬忠。そして恵美押延。

 それに満足したムルソー准将は手招きをする。

 すっと老人が近寄る。黒い服に身を包んだ老人はムルソー准将の前に聖書を掲げる。船員の一人らしい。どうやら神父なのだろうか。

『神の名のもとに宣誓する。この判定に一切の私利私欲を混ぜないことを』

 フランス語でそう流暢にムルソー准将は宣言する。

 それを小声で瞬は敬忠に翻訳する。

 殺し合いよりはましかもしれない、と思いつつも状況のあまりの展開に戸惑うところも多い。

 そんな二人を見て、にやける恵美押延。まるで勝利を確信しているように――

『それでは、第一の料理のテーマを決定する』

 黒服の老人が木の板をムルソー准将の前に掲げる。すっと一枚を取り出し、それを皆の前に掲げる。その板には筆で『le rizルリ』と書かれていた。

 ふうん、と恵美押延は鼻を鳴らす。『ルリ』とはフランス語で『米』を意味することを瞬は敬忠に告げた。

(米......)

 敬忠は令和の記憶を蘇らせる。フランス料理など対していったこともなかったが、正直そういう店で『米』が食材として出た記憶がない。瞬は目を閉じて何やら考え込む。

『まずは初戦ということで、『米』を使った一品料理を所望しよう。テーマは『前菜』だ。『米』を用いて私に前菜を用意してもらいたい。時間は二時間。よろしいか?』

 懐中時計を持つ船員。ムルソー准将はパーカッション式の拳銃を掲げる。

 少しの間の後に――火花と銃音が響き渡る。

 目の前の棚を開く二人。瞬と恵美押延である。

 まずは『米』を用意しなくてはならない。そして前菜にふさわしい献立を考えなくては――

 戦いが始まる――頭脳と技術とそして、今後をかけた戦いが――

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