表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
江戸に立つ、龍の麺  作者: 八島唯
第六章 江戸湾炎上 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/117

『新た』なる戦い

 『極喰無尽』の船はなんとも異形のものであった。方舟、とでも言うのだろうか。あまり外洋の航海は想定していないようにも見える。海に浮かぶ、倉庫とも見ることができた。

 船の横に鉄の扉が見える。恵美押延がその扉に触れると、重い音とともにその扉が開く。

「私の後について来い」

 暗い通路。狭く天井も広い。階段を登ると――光が満ち溢れる。

 そこは船の中とは思えない大広間がそこに広がっていた。

 木製のよく磨かれた床の上には、いくつもの台が並べられていた。そして竈。鍋や釜、食器なども棚に陳列されていた。日本のものもあれば、中国さらにはヨーロッパ製のものもあるらしい。

「この船は『極喰無尽』の心臓でありかつ、脳とも言える部分だ。珍しい食材を保管する船倉とそれを調理するこの大調理室からなっている」

 恵美押延は敬忠らのほうをむきなおり、じっと見つめる。

「どうやらお互いの因縁は料理に始まったようだな」

 『極喰無尽』の料理。その宴席にでかけたことが敬忠たちが彼らと結びつく結果となった。

「ならば、料理で決着をつけようではないか。ムルソー准将もそれを提案されている。負けた方は――わかるな?」

 殺し合い、よりはまともな方法なのかもしれない。『極喰無尽』を許せないと思ったそもそもの原因は彼らが『食文化の破壊者』であったためだ。

「まあ、なんとも珍妙ではあるが悪くない落とし所だとは思うな。暴れるのはいつでもできるしな」

 対馬守が太刀を手で擦りながらそうつぶやく。

「敬忠様......」

 瞬がじっと敬忠の目を見つめる。

「......私にできることは手伝う、やってくれるかな?」

 はい、と大きな声でうなずく瞬。

 それを見ていた恵美押延はニヤリと笑みを漏らす。

「では、提案させてもらう」

 床に数枚の板を並べる恵美押延。

「これは『極喰無尽』の料理人たちが訓練で用いていたものだ。それぞれの裏には料理の『お題』が記されている。味見役は普段は私がつとめるが、公平を期すためにムルソー准将につとめてもらう。あの方はなかなかの食通でな。我々の国の料理の味にも慣れている」

「それはいいが、おれもその判定に参加させてくれ。結局そちら側の人間にすべての決定権を委ねるのは、なんともな」

 対馬守の申し出に、目を閉じて了承の意を示す恵美押延。

 一体『極喰無尽』の恵美押延が料理人としてどれほどの実力を有しているかはわからないが、このような勝負を挑んくる辺り、自信はあるのだろう。

 しかし、敬忠には瞬がいる。ともに『龍麺』を作り上げた同志の――

 敬忠はじっと前を見つめる。次なる戦いに臨むために――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ