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江戸に立つ、龍の麺  作者: 八島唯
第六章 江戸湾炎上 

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恵美押延との再会

 甲板にたどり着く三人を待ち受けていたのは、たった二人の人影であった。

 一人はいかにも豪華な軍服を崩して着ている人物。頭には何やら三角の帽子をかぶって。どうやら船長らしい。もう一人はその副官らしく、非常に高い背の上から三人を見下ろしていた。

「......」

 船長らしき人物が何やらつぶやく。

「自分はフランス帝国准将オディロン=ムルソーだと名乗っております」

 瞬の通訳。

『その姿を見るに、日本人のようだが。ロプレザンタン恵美の顔見知りか?』

 うなづく敬忠。嘘ではない。ただ、味方ではなく敵ではあるが。

『ロプレザンタン恵美からは仔細有りげな日本人が船に近づいてきたときには、乗船を許可してほしいと言われている。こちらに来るがいい、案内しよう』

 船長自ら誘導する。船員たちは周りにいない。影に隠れているのは間違いないのだろうが――それだけにむしろ不気味でもあった。

 ゆっくりと、船倉への階段を降りる一団。暗く、細い通路を歩く。

 突き当りにある大きな扉を指し示す、船長。軽くノックして、ゆっくりとその扉を開く。

 瞬と対馬守が敬忠を守るように前に立ちはだかりつつ、部屋へと入る。比較的広い部屋――その視界に入るのは船長と同じ軍服をまとう、長髪の青年――脳裏に思い出す。あの夜の宴のことを――

「『極喰無尽』の恵美押延とみゆるが、如何に?」

 敬忠が常にない、強い口調でそう問い詰める。最初は驚いていた顔をしつつも、うなずく――恵美押延。

 ついにここまできた。敬忠は心のなかで叫ぶ。散々、苦汁をなめさせられた『極喰無尽』の恵美押延にようやく――

「これはこれは、まさかここまでいらっしゃるとは。そんなに『極喰無尽』の料理がお気に召していただけたのでしょうか?」

「ああ、かなりな。うますぎて思わずここまできてしまったなぁ」

 腰の太刀の柄をポンポンと叩きながら、そうつぶやく対馬守。それに対しては一瞥もくれずに、すっと恵美押延は立ち上がる。

「すこし、外に出ませんか。ここは狭い」

 船長に目配せして、部屋を出ようとする恵美押延。追い詰められた頭目という雰囲気はない。無言でその後を追う三人。逃げ場はない。とりあえず取り逃がすことがないように足早にあとを付ける。

 甲板の上。いつの間にか霧が出ている。人の気配は――しない。先程とは違い、人払いをしているようであった。もしくは恵美押延自身がこの船ではシークレットな存在なのだろうか。

 くるりと振り向き恵美押延が口を開く。

「せっかくだから、お話でもいかがですか?時間はまだあるはずです――」

 懐に手を入れる恵美押延。一瞬身構えるも、それがタバコであることに気づく瞬。

 恵美押延はタバコに火を付ける。

 彼はゆっくりと語り始める。

 自らの、『極喰無尽』の経緯を――

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