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江戸に立つ、龍の麺  作者: 八島唯
第六章 江戸湾炎上 

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江戸湾の捜索、そして

 ゆっくりと江戸湾の中を東西に往復する一行の船。

 甲板の上では何度も測距儀で、北極星の高さを計測する高田屋の姿があった。

 フェドセーエフによって記された江戸湾におけるフランス船の停留場所。大体の緯度も経度も書かれていたが、この時代まだ日本の航海術では経度を完全に測定することは困難であった。機械時計を使う方法がベターであり、高田屋もそれを当然有していた。しかし、帆の少ない和船では緯線に沿った直線航法が困難であり、結果経度計算も難しいものがあったのである。

 緯度は北極星の角度でかなり正確に算出できる。何度も同緯度を東西に航行することにより、フランス船を探そうという計画であった。

 しかしこれもまた、難しいものである。

 大海原に浮かぶフランス船。高田屋の和船に比して強大なものであったとしても、大海原の上では木の葉に等しい。レーダーもないこの時代肉眼だけが頼りであった。

 手の空いた人夫たちが目を凝らし、海面を見つめる。

 対馬守も、そして瞬も。敬忠も。

 ただ目的の船を探して――もう一週間が経とうとしていた。

 水や食料などもそろそろ尽きようとしている。

 高田屋は一旦、いずれかの港に寄港を考え始めていた。船底にしまわれた武器が役人にばれたら、元も子もないがそうも言っておられない。場合によっては積荷を海に――

 そんなことすら考え始めていた頃合いであった。

 最初に気づいたのは瞬であった。目を細めて、敬忠の袖を引く。小さな指ではるか遠くを指差す。

 望遠鏡、というのにはあまりに原始的な遠眼鏡でその方向を見つめる敬忠。はじめは何も見えなかったが、ぼんやりと――ぼんやりと何かが見える。

「高田屋殿!」

 その呼び声に高田屋は即に反応する。船の穂先をその方向に向け、位置を固定させた。人足たちの複数の目もそちらを凝視する。

「船だなありゃあ」

 対馬守の声。片眼鏡を遠くにかざしながらそう告げる。

 視界に少しずつ入ってくる小さな点。それがゆっくりと大きさを増す。

 すっと、高田屋が左手を上げる。それは合図。人夫たちが忙しそうに動き始める。手には弓や火縄銃をもち準備を開始する。西洋船にこのような武器がどこまで通用するかはわからない。とはいえ、何かしらの備えをしないことには気がすまなかった。

 対馬守も大型の火縄銃を構える。砲弾をいくつも甲板に積み上げて。

 ゆっくりと相手の船の輪郭が見え始める。帆の上を敬忠に借りた遠眼鏡でじっと見つめる瞬。

 ――青白赤の三色の旗――

 瞬はうなずく。

 それが『フランス船』であることを確信して――

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