捜索の果てに
対馬守の私邸。その奥の間に対馬守と敬忠、瞬はいた。
胡座をかきながら、椀を両手で抱えかっこむ対馬守。瞬がその様子をにこにこしながら見つめる。
「うまい!うまいの!」
椀の中は今話題の『龍麺』である。もちろん瞬の手づから調理したものであった。
あっという間に対馬守は完食する。食後、白湯を飲み一息ついてから語り始める。
「あの下総でとっ捕まえた、『極喰無尽』の一味とかいう輩、洗いざらいはいたぞ」
下総での先日の捕物。対馬守が先頭に立ち、『極喰無尽』の集まりを急襲した出来事である。敬忠は対馬守よりの飛脚によりそのことを知らされ、今日、対馬守邸を訪問していた。
「拷問も必要なかった。まあ、その程度の身分だったということだな」
詳細を聞かされる敬忠。感謝の念には耐えないが、八方破れすぎる旧友のことも心配であった。
「主だった幹部連中はすべて姿を消したらしい。大量の武器や食材も一緒に。俺が捕まえたのは、幹部とはいえ下っ端のやつだったらしい。手元に残っていた食材を使って田舎の分限者たちを相手に小銭稼ぎをしていたらしい」
「対馬守さまのご尽力に、感謝の言葉もございません」
頭を深々と下げながら、敬忠が謝意を述べる。
おいおい、と椀を抱えながら対馬守は恐縮する。
「結局、何もわからなかかったぜ。結果としてはな。それなのに瞬ちゃんにこんな美味しい、珍しいものを振る舞ってもらえた。ありがとな」
瞬が嬉しそうにうなずく。
「そういや」
椀をおきながら、対馬守が言葉を切る。
「その集まりに踏み込んだ時、見たことのねぇ料理が並んでいたな。毒味とばかりに少しなめてみたんだがーー今までに味わったことのない種類の味だった。最初は単に面妖な味だと思っていたのだが、時間が立つにつれ、もう一度食べたくなるというか......あれは確かに一度食べたら病みつきになるかもしれん。この江戸では味わえねぇ味だな」
「連中の料理は、南蛮のものでかつ未来のものです。その魅力たるやあらがいがたいものがあるでしょう」
ため息をつきながら敬忠がそう答える。
「引き続き、捜査は続けてみる。まあ一つわかったことは関八州には『極喰無尽』なる幹部の連中はいないということだな。陸奥にでも逃げたか、陸の上から姿を消したのか......」
対馬守がそうつぶやく。それに瞬が反応する。
「......私は以前、『極喰無尽』に誘拐されました。その時目が覚めると船の上に閉じ込められていました。それは『極喰無尽』の保有する船でした。もしかすると」
ふうん、と考え込む対馬守。もし幹部ーー恵美押延らが『極喰無尽』の保有する船に対比しているとするのなら、辻褄は合う。しかし、そんなだいそれたことがこの太平の江戸の世に可能であるのだろうか――
数日後、江戸を混乱が襲う。
それもまた『極喰無尽』の仕組んだ陰謀の一環であったことは言うまでもない――
(第4章完)




