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江戸に立つ、龍の麺  作者: 八島唯
第4章 捜索の果てに

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蔦屋の証言

 眼を開き、片言の言葉を発することができるようになった蔦屋。意識ははっきりしているらしく、敬忠が側によると、眼で深く礼をする。瞬のかいがいしい看護もあってか、数日後には上半身を起こして軽い食事もできるようになった。

「誠に......年甲斐もなく、面目次第もございません」

 元気なく敬忠にそう告げる、蔦屋。

「なにを、こちらこそ面倒なことに巻き込んでしまいまして」

 蔦屋は首を横に振る。

「もう少しやり方もあったかと――免吉はまだ行方は――」

 側にいた佐之丞が首を振る。免吉、蔦屋の奉公人である。夜道提灯を持ち、蔦屋の先を歩いていた。

「先月ですかな。口入れ屋の坂下屋さんの推薦で入れた奉公人だったのですが。無口で真面目な奉公人と感心しておりましたがーー今にしてみれば、私の動向が『極喰無尽』とやらに漏れていたのもそのせいかもしれませんな。それで殺されたということであれば、恨む気にもなりませんな」

 蔦屋はそっと手を合わせる。

 あの夜のことを語り始める蔦屋。

「全く、音がありませんでした。いつの間にか免吉が提灯を持ちながら地面に倒れていて。それは真っ暗な夜でしたが、ぼんやりと、そう十間くらいでしょうか。暗闇に人影が見えました。私の住所から名前まで誰何して、『版元元締蔦屋重三郎か』と問うんですよ。あれは男の声でしたね。一人だけではなく、少なくとも四人はいたと思います。私も怖くて、逆に強がって啖呵を切ってやりました。そうしたら――次の瞬間、足に熱い感覚が。飛び道具か?とも思ったのですが、何しろ何の音もない。頬を数発かすめていった気がします。ええい、ままよと観念しましてな。堀の中へざぶんと。季節的に正直、覚悟は決めましたが厚着していたのが幸いでした。暗い堀の中をほうほうの体で身をかがめて歩き――何刻水の中にいたでしょうか。ちょうど船岸になっている階段を登って路傍に。あとは覚えておりません」

 佐之丞が筆で蔦屋の供述を記録する。

「音がなかったと」

 敬忠の問いかけに蔦屋はうなずく。

「ライフルだけではなく、サイレンサー――サプレッサーも持っているようですね。機構としては難しくはないです。ただ、発明されたのは一九〇〇年頃のはず。それを『知っている』ということ自体が――」

 瞬が上目遣いに敬忠を見つめる。腕を組む敬忠。

 未知の武器に、四人という集団。『入鉄砲に出女』という有名な言葉があるように、そんな鉄砲をどうやってこの江戸の外郭内に持ち込めたのか。集団的なテロを行えるだけの力を『極喰無尽』持っているのか。

 その夜、敬忠は一睡もしなかった。

 次の日の朝、敬忠は久しぶりに裃に袖を通し、高級な籠を呼ぶ。

 行き先は――時の勘定奉行水野対馬守清忠、旗本五千石の私邸へと――

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