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江戸に立つ、龍の麺  作者: 八島唯
第4章 捜索の果てに

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蔦屋、遭難す

 街中を走る籠が二つ。敬忠と瞬の籠である。時刻はまだ明けの五ツ。空いている店もほとんどない。行き先は浅草寺界隈では有名な医者の佐久間瑞案が診療所であった。

 籠から飛び降りるように出て、玄関を引き開ける敬忠。挨拶もそこそこに、右手に刀を携え廊下を行く。瞬がけがをした時もお世話になっていたので、勝手は知ったものである。

 奥の部屋――それは、施術室となっていた。

 構わず障子を開く。

 中には医者の瑞案の姿と、同心佐之丞そして布団に横たわりながら目を閉じて仰向けになっている『蔦屋』の姿があった。

 敬忠はすっと刀を畳の上に置き、佐之丞を見つめる。

「今日の朝、連絡がありましてね。番屋の方に、立派な身なりの男性が血を流して道の上に倒れていると岡っ引きが私の方に。体が濡れていましたから、堀に飛び込んだのでしょう。かなり脈は弱くなっていましたが、瑞案先生に気つけをしてもらいやして......小康状態とはいえ、正直どうなるかはわからねぇって......」

 その言葉に瑞案がうなずく。布団の端をつかむ敬忠。

「よろしいか?」

 許可を瑞案にとってから、そっと布団を上げる。右足の腿に包帯がぐるぐる巻きにされていた。やや血もにじんでいる。

「江戸域内で飛び道具を使うたぁ、許せない話です。今聞き込みをしていますが......音を聞いたという報告がいまだなくて.....」

 困惑する佐之丞。それに対して、敬忠は瞬にアイコンタクトを送る。

「瑞案先生。もう手は尽くされたかと思います。できれば、この場で蔦屋殿をお見送りしたいと思うのだが。この部屋をしばしお貸しいただけないだろうか」

 意外な申し出に驚く瑞案だったが、何しろ敬忠の申し出である。佐之丞に後を任せると、瑞案はそそくさと部屋を後にした。

「左之丞殿。部屋を――」

 うなずき、刀を手に障子の外で見張る佐之丞。

 部屋には敬忠と瞬の二人だけである。

 瞬はそっと布団をめくり、隠していた『さゔぁいばる』で包帯を丁寧にほぐし、傷口を見る。

「いかがなものか......」

 不安そうな敬忠をしり目に、傷口をじっと見る瞬。

「盲管射創......貫通はしていません。そして、この時代の火縄にしてはいやに傷口がねじれて、大きいですね。原始的なライフルなのかもしれません。発射音がしないということであれば、なにか古典的なサイレンサーを使った可能性も......出血はさしてしていないようなので動脈は傷ついていないかと。ただ、体内に残った弾丸が問題ですね。多分この時代の弾丸は鉛。鉛の発する毒で体が弱り中毒死してしまう可能性も」

 敬忠は腕を組んで考える。

「――我が家に運ぶ」

 大八車と籠が用意され、蔦屋は敬忠の邸宅へ運ばれることとなった――

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