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江戸に立つ、龍の麺  作者: 八島唯
第4章 捜索の果てに

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瞬の挑戦-3

「さて、最後は味噌味ですね」

 手早く鍋を据える瞬。これは結構、難しいなと瞬は思っていた。

 まずもって、ニンニクの存在。令和の味噌ラーメンには欠かすことの出来ない具材であるが、この江戸においてはまだまだ珍しい種類の薬味である。どちらかといえば薬という認識も強い。まずはニンニク抜きでスープを作ってみようと考えた。

 さらに味噌の存在。身近なだけに、どんな種類の味噌を使って良いのやらーーとりあえず仙台味噌と八丁味噌を用意する。そして、野菜。なるべく香味の強いものを揃えてみた。ごま油でその野菜を炒める。一方で鶏ガラのスープの中に仙台味噌と八丁味噌を交互に少しずつ足していく。

 スープの味見をする瞬。微妙なバランスを取りつつ、味を完成させる。

「このくらいならーー無難かな」

 この味噌のバランスや、種類は後日の宿題とした。いまは味を合わせることで、万人の口にあったスープを作ることーーそれが目的であった。

 そのスープで先ほど炒めた野菜を煮込む。ここまで何ら肉的なものは入っていない。

 そこで瞬は思いつく。海産物などどうであろうか、と。

 塩漬けのわかめを軽く水で洗い、スープに投入する。食べた時に歯ごたえと海の風味がいい感じで加わるであろう。

 麺は太麺、縮れ。海苔を沢山浮かべ、最後に生姜をすりおろしたものをのせる。

 先程の塩味とは違い、具材がすでに完成済みでデコレーションされていた。

 具材あっての味噌味、という瞬の発想である。

 熱々の麺をすする。

 とにかく熱い。さらに胃の中に入ってからも、ポカポカとする感じ。生姜の効果であろう。

 スープに浸した海苔がいい感じでご飯と合いそうである。

「これはーー麺の入った味噌汁かもしれないなーーいや麺自体が味噌汁の具と考えても良いかも」

 味噌汁であれば当然、ご飯との相性は言うまでもない。

 具材も色々と工夫ができそうである。そういった意味でも改良の余地が大きく、発展性のある龍麺かもしれないと瞬は思う。

「ただーー」

 季節にもよるな、と瞬は考え込む。なにせよ熱い。いくらへそ曲がりな江戸っ子とはいえ、夏にこれを食べるのはやや酷に感じられた。

 季節限定。その言葉にあることを思い出す。

 夏に食べるラーメンが令和にはあったなと。

 冷やし中華、そしてつけ麺である。

 保坂恭子のノートをめくる瞬。不思議なことにこの二品に関しての記述がないことに気づく。

 瞬は逆にそのことに魅力を感じる。

 冷えた麺を食べるというのは、蕎麦に通じるところが大きい。ラーメンの麺を蕎麦的に江戸の人々に認識してもらえれば、ファーストフード的な主食としての龍麺を作ることができるかもしれない。そして、敬忠にもあまり好んで食べなかった麺をこの時代で、魅力を感じてもらえるかもとーー


 最後の龍麺づくりに瞬は取り掛かることとなるーー


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